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≪人妻ユイの不倫文化論≫ゴールのない不倫のゴール

  • 2014年10月29日  仮屋園 ユイ   



    不倫にはゴールが無いとよく聞きます。まさに、その通りだと思います。ごく普通のお付き合いの先にある結婚という目標は、不倫関係の2人には絶対にありません。でも、お互いに何かを得て不倫を終えることもあるんです。今回は、わたしが“ゴールのない”と言われる不倫に、綺麗な形で“ゴールした”お話しをしたいと思います。

     

    【自分の存在を否定していた彼…】

    彼と出会ったのは2年前。わたしがライターというお仕事をさせていただいている上で肝心になる取材の席に、彼はいました。取材に訪れた時、彼は大学を卒業したてホヤホヤの新入社員。スーツの着こなしも、言葉遣いもまだまだといった印象でした。名刺を交換し、取材をさせていただいたのですが、彼はボーっとし黙って担当者とわたしの会話を聞いているだけでした。話をわかっているのかと思って、話をふってみたらチンプンカンプンなことを話始めたのでもうビックリ。イマドキの若い子は、自分のわからないことを学ぼうとする姿勢もないのか!と唖然としました。そしてその記事が仕上がって掲載された後に、仕事スイッチはお互いオフにして個人的に食事に行きましょうと担当者から連絡をいただいたので行ってみると、例の彼が同席していたのです。

    担当者がいい感じに酔っぱらってきて、行きつけのお店に行ってしまったので、彼と2人で飲んで話をしました。すると彼はこんなことを言い放ったのです。

    「僕、こんな仕事するためにこの会社入ったワケじゃないんですよね…。」

    彼には、希望する部署があったそうです。採用通知を受け取って、いざ出社してみたところ希望部署ではないところに配属されて意気消沈していたらしく、ひどく自分に自信を失っていました。こんな仕事誰だって出来る、自分は必要のない人間だと話していました。そこで、わたしは黙っていられなくなりました。彼を放っておけなくなったんです。

     

    【輝いてほしいと願い会うようになって…】

    不倫というのは、許されないとしても深い愛で結ばれた2人のことをいいます。わたしと彼を結ぶ愛は、ただの愛情では無くて友愛だったかもしれません。ただ、とにかく社会に対して幻想を抱きすぎていて、良く言えば真っ白な、悪く言えば甘ったれな彼が気になって仕方ありませんでした。当時わたしは結婚していましたが、それでも打ち合わせと称して頻繁に彼と食事をし、色々な話をしました。したい仕事が出来ないと嘆く前に、したい仕事をさせてもらえるような働きぶりを今の部署でしっかりするべきだとか…そんな当たり前のことを言ってくれる人が彼にはいなかったので、わたしを心の支えとして慕ってくれました。

    体の関係は一切なく、会って食事をしながらとにかく話すだけ…でも、2人で周りに隠れて会って食事をして仲良くしているのですから、社会的には十分すぎるくらいの不倫だったでしょう。わたしの数ある不倫の中でも、彼との付き合いは本当に心に残っています。そのくらい、一生懸命彼に話して社会に対する甘い考えを改めてもらおうと尽くしました。もっと素敵な男性になってほしいと切に願いましたし、そのために彼のスーツの買い物にも付き合ったほどです。不倫と一言で表現してしまえば、なんとなく薄汚い情事ばかりを想像しがちですが、こんな不倫もあるんです。そして、経験して思うことはこういう不倫こそ本当に人生を狂わしかねないということ。彼に対しては本当に心奪われました。わたしを必要としてくれて、真剣に話を聞いてくれる…結婚生活を続けていくうちに自然と夫婦が必要以上に話をしなくなるものですが、そういった部分の不満を彼は見事に晴らしてくれましたんです。

     

    【友達に戻れなくても良いと思える程、大切な人】

    ある日、彼に告白した女性がいるということを聞きました。彼はわたしと真剣に関わってくれましたが、わたしが結婚生活を破綻させることは絶対に無いということも知って付き合いを続けていました。彼に告白をしたという女性は、聞けば聞くほど“良い子”でした。わたしのような、不倫人妻には間違ってもならないような、そんな純粋で心の優しい、思いやりのある子だと知ってしまったんです。

    それからというものの、その女性の存在が気になって仕方なくなってしまいました。彼はこの先、わたしと一緒に過ごしても幸せにはなれないだろうということだけはわかっていましたから、彼を一人の男性として自由にしてあげたほうが良いのか、これからもわたしに繋ぎ止めておこうか迷いました。そして、本当に悩んで悩んで出した答えが“不倫関係の解消”でした。

    一生懸命育てた子を嫁にやる父親の心境でしょうか、はたまたおもちゃを独り占めしたいだけの子供じみた感覚でしょうか…とにかく切なくって苦しくて、こんなに彼のことが大切なんだなぁと再確認しました。でも、彼に切り出したんです。「あの子と付き合ってみなよ。きっと、あの子は幸せにしてくれるよ。」と。

    不倫関係を解消するということは、もう会えないということ。また会うかもしれない間柄なら、わざわざ解消する必要もありませんから。彼とは、そんな曖昧ではいけないと思いました。素敵に成長した彼が他の女性と幸せになっていく姿を、所詮不倫相手のわたしがまっすぐに見ることはできません。でも、今でも彼の幸せと成功を祈っています。不倫の終わり、それは切なく儚い…でもお互いに成長を感じられ、今よりもっと良く生きるための第一歩にもなるのです。