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★電脳歌人ミコトの恋の覚書 その6★隈なく奪はれて…勝気な恋A

  • 2014年02月13日  菱月 美琴  



    主人公は完璧な好人物なのに、何人もの異性と短い恋を繰り返す…そんな映画を観ました。そういう人、身近にもポツポツいたりします。仕事も出来、性格も良い、ルックスも素敵、なのに、恋愛が長続きせず本当の恋が見つからないのはなぜでしょう。その人自身の心の中に秘密があるのかも。

    そもそも「本当の恋って何?」…一緒に考えてみませんか?

     

    「音高く夜空に花火うち開きわれは隈なく奪はれてゐる」
    (引用:中城ふみ子著『乳房喪失』より)

     

    @この短歌、こう読みます。

    「澄んだ夜空へ花火がいっぱいにうち開く。大きな音が身体じゅうに響き渡る。私の身体は最早からっぽではない。恋人にすきまなく奪われ、愛され満たされている。」

    中城ふみ子の代表的な一首。幸せな情景です。花火は一瞬のきらめきで、ひとつひとつの恋に似ています。たとえ一瞬でも「愛されている」「満たされている」と感じる事は、素敵な事ですね。「奪われている」と受け身なのも、女性としての幸福感に満ちています。

    中城ふみ子が『短歌研究』へ送った一連の短歌の題は最初「冬の花火」でした。美しくはかない恋の想い出と重なります。また、夭折の歌人の生き様がよく表れていると思います。 しかし、敏腕編集者の中井英夫が推す「乳房喪失」へ変えられました。(渡辺淳一さんの中城ふみ子伝は『冬の花火』というタイトルです。)

     

    A中城ふみ子の恋の遍歴

    学生時代は慶応大生と恋に落ち、地元に帰って最初の見合いはふみ子から破談、再び見合いし結婚。その後、夫との関係が悪化し、短歌仲間と不倫。大学生とも関係を持ちます。やがて離婚。乳がんを発病後、5つ年下のダンス教師と恋愛関係になります。処女歌集『乳房喪失』を刊行。死期も迫る頃、若い新聞記者と病室のベッドで愛し合う事に。20日程の恋。(この件は、のちに本としてまとめられ、映画化もします)。

    同時期に、『短歌研究』の編集者、中井英夫とも手紙のやりとりをしていて、往復書簡として残っています。また、死のごく間際にいたのは彼でした。

    「女性嫌い」だった中井英夫がふみ子に宛てた手紙は、編集者としての連絡文書から始まり、やがて甘やかな恋文になっていき、やりとりの最後の方では「小さな花嫁さんに」と呼びかけていて心を動かされます。(のちに中井英夫は「当時は中城ふみ子という小説の中に入り込んでいた」と言っていますが、それだけでは括れないものを感じます)。

    編集者としてだけではなく、ひとりの人間として「中城ふみ子」という才能を見出し、作品をとても大切にしていた事が窺えます。一日でも長く生かそうと、ふみ子が渇望した「愛」を、創作であったとしても根気よく与え続けました。男とか女とかを越えた、もしかしたらここに、“本当の愛”があったのかもしれません。中井英夫は札幌までふみ子に会い行き、帰京した翌日、彼女は天に召されました。

     

    B自分を愛せないA子さんは他人に興味が無い。

    自分から告白した事が無いというA子さんは、美人で性格も良く、誰からも好かれるタイプ。学生時代から彼氏が途絶えた事がありません。でも、なぜか短期間で恋が終わってしまうのでした。

    激しい喧嘩別れをしたというのではなくほぼ自然消滅で、男の方から知らないうちに離れていきました。恋愛期間は短いもので数日、長くても半年持ちませんでした。

    不思議に思った友達のB子さんは、A子さんに聞いてみました。

    「あなたはどういう人が好きなの?」
    「そうね、私を好きでいてくれる人なら」。
    「それだけ?」
    「そうよ。でもなかなかそういう人って見つからない」。

    A子さんは自分を必要としてくれる人なら誰でも良かったのです。自分の生きている価値が見いだせず、自分自身を愛せていなかったので…。そんなA子さんが他人を愛せる訳もなく、男達は「A子は自分以外の誰でもいいんだな…」。そう考えて次々と去って行ったのでした。

    そして、男達に去られてもA子さんは傷つく事もなく、流れ作業のように次の恋に走りました。「本当の恋」を探して。

     

    C真摯に向き合う。

    中城ふみ子にとって、「性=生」であり、生きていたい、現世とつながっていたいという気持ちが、刹那の恋愛に向かわせた気がします。しかし、死の間際に、心で固く結ばれていたのは、体の関係の無かった中井英夫だけだったのかもしれません。鮮烈で血のにじむような美しい官能の短歌を後世に残す事が出来たのも、信頼し精神的な強いつながりを持つ事の出来る人と巡り合い、人として尊重し合う事が出来たからでした。

     

    D一つ一つの恋を大切にする。

    まず、自分自身を受け入れて、愛してあげる事が必要だと思います。そうすれば、きちんと個としての他人と向き合う事が出来るはず。一つ一つの恋を大切にするという事は、相手と自分を大切にするという事ですよね。ダメな自分も認めて愛してあげよう、私もそう思う事にしました。

    この春は、“自分”を愛する事から始めませんか。

     

    「本当の恋…つぶやけば春の雪」