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★電脳歌人ミコトの恋の覚書 その7★死ぬ前にもう一度逢いたい…和泉式部

  • 2014年02月20日  菱月 美琴  



    『百人一首』、子供の頃に学校や地区の行事でよくしましたね。ただ上の句と下の句をつなぎ合わせる、記憶力ゲームのような遊び方でしたが。

    この『百人一首』、実は素敵な恋歌の宝庫。大人になって読み返してみると、時代を超えて共感できる、想いの詰まった歌が沢山あります。その中でもおススメの一首をみていきたいと思います。

     

    「あらざらむ此よの外の思出に今ひとたびのあふ事もがな」
    (引用:『小倉百人一首・56番』より)

     

    @この短歌、こう読みます。

    「私は死の床についており、もうじきあの世へ旅立つでしょう。だから現世の想い出として最後にもう一度だけ、あなたにお逢いしたいのです。」

     

    切実で純粋な恋心の伝わる歌です。和歌に添えられた詞書には「人の元につかわした」とあるので、死ぬ間際、床に伏せながら恋する人に贈った、手紙としての和歌であると思われます。

    和泉式部の晩年は、不遇であったという説もあるので、心変わりして遠のいていった恋人に宛てた、和歌だったのではないでしょうか。

    しかし、その時実在する恋人へ贈ったとは読まず、亡くなった夫に宛てたものという解釈もあり詳細は不明です。既にあの世の人に宛てたとするなら、少し幻想的な感じがしますね。

     

    A和泉式部のこと。

    今から千年以上昔にいた、女流歌人です。(中古三十六歌仙の一人)。あまり身分の高い家柄ではなかったようです。夫の官名によって「和泉式部」と呼ばれています。最初の夫と疎遠になりつつあった時、冷泉天皇の第三皇子で、若く美形の為尊親王と恋に落ちます。夫には離縁され、身分違いの恋に激怒した父には勘当されます。親王はほどなく病死。

    その後弟の敦道親王とも恋に落ちます。和泉式部を自宅に招き同居。それに怒った本妻は家を出て行きます。この恋も長くは続かず、弟の親王も若くして他界。別の男性と再婚します。

    和泉式部が産んだ子供については「誰の子だか解らない」などと陰口をたたかれ、「浮かれ女」と好き勝手に言われています。

    「だったら閻魔様に聞いてみたらどう?」等と、気丈に和歌で言い返していたり、

    また、藤原道長が和泉式部の扇に「うかれ女の扇」と落書きする意地悪にも、

    「逢瀬の関守でもないあなたに、咎められる筋合いはないわ」と和歌で返しているあたり、度胸のある、凛々しい女性だったんだなと思います。紫式部や清少納言とも接点があり、十歳程年上かと思われる清少納言とは、男の事などあれこれ言い合う“ガールズトーク”のような記録も残っていて、興味深いです。

    大切にしていた娘を若くして亡くしており、子を想って詠んだ歌はとても感動的です。

    和歌の外にも恋物語『和泉式部日記』は有名です。

     

    B意地っ張り、届かない想い。

    デートの帰り道、些細な事で喧嘩になったA子さんとBさん。いつもの事でしたが、A子さんは「もう終わりにする。」と言い放ち、茫然としているBさんを残して足早に去りました。

    BさんはA子さんに振り回され、少し疲れていました。

    A子さんは「いつものように、Bさんから連絡が来るはず」そう思って密かに待ちましたが、時間だけが流れて行きました。

    意地っ張りなA子さんは、なかなか自分からBさんに連絡出来ずにいました。好きな気持ちに変わりはありませんでしたが、仕事が忙しいのにかまけて半年の間、音信不通に。

    ある日、A子さんは職場のプロジェクトリーダーとして、海外赴任が決まりました。ずっと希望していた夢が叶ったのです。

    嬉しい気持ちの反面、切なさが込み上げて来ました。

    日本を離れると思った瞬間、Bさんの顔が浮かんだのです。海外赴任は数年に及ぶ予定。

    今、ちゃんと向き合わなければ、二度と会う機会は来ないでしょう。

    A子さんは勇気を振り絞り、メールしてみました。

    「もう一度、会って話がしたい」。

    しかし、メールが届く事はありませんでした。

    半年の間にBさんはA子さんを諦め、携帯のアドレスを変えてしまっていたのでした。

    A子さんは「アドレスを変えたという事は、終わりなんだ」と実感します。

    「もし、私がすぐに謝っていたら」、「意地を張らず、素直な気持ちをぶつけていたら」。

    そんな事を考えくよくよしましたが、時間を巻き戻すことは出来ません。

    半年の空白を経て、やっと一つの恋が終わったのでした。

     

    C気持ちに素直になる。

    和泉式部は才色兼備の女性で、多くの男性を虜にしました。和歌を巧みに恋の道具として使い、大胆で情熱的、また、洒落た恋の歌を沢山詠みました。しかし、病床で詠んだのは技巧に頼る事無く、素直な感情のままの恋の歌でした。

    死ぬ間際に「逢いたい」という、切実でシンプルな願いには、心を動かされますね。

     

    D直球勝負で想いを伝える。

    「好きです」とか「逢いたい」って、なかなか口に出したりメールしたり出来ませんよね。ハートやニッコリ・キラキラの顔文字多用で、気持ちは伝わっているハズ…と思っている人も多いのでは。

    けれども、自分に置き換えてみて、シンプルに「好きです」って言われたら、すごく嬉しいですよね。やっぱり、最後は直球勝負だと思うのです。

    修飾文字をそぎ落とし、純粋な想いをぶつけてみませんか?

     

    「逢いたいと伝えたいだけ雪の朝」