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★電脳歌人ミコトの恋の覚書 その1★話題のアノ短歌、どう使う?

  • 2014年01月09日  菱月 美琴  



    2014年も始まりました。今年こそ恋人を! と思っているシングルの方々。世の中には、ぱっと目をひく美人なのに男っ気無し…とか、容姿は普通だけど妙に異性にモテる…なんて人、居ますよね。モテる・モテない2つのタイプ、一体どこが違うのでしょうか? CMで話題の短歌を元に、ひも解いてみたいと思います。

     

    「やは肌のあつき血汐にふれも見でさびしからずや道を説く君」(与謝野晶子)

     

    某車メーカーのCMで、一躍脚光を浴びたこの短歌。後に続く、真木よう子のセリフと仕草が、可愛らしくて印象的です。

    あれ?どこかで聞いたような・・と、思う人も多かったのではないでしょうか。

    そう、国語の教科書に載っていましたよね。明治時代の歌人与謝野晶子の代表的な歌で、1901年出版の『みだれ髪』という歌集に掲載されています。

     

    @この短歌、こう読みます。

    「貴方への恋心で高揚する身体。触れたら柔らかいのに、熱いのに。さびしくはないのかしら? 知らんふりで、難しい話ばかりし続けて・・」。

    文語で格調高く歌い上げる事で、オブラートに包まれていた感情が、口語に訳すと随分官能的です。

    私が訳した「難しい話」の部分、歌人の俵万智さんは、チョコレート語訳で「人生」と訳しています。

    「道」なので、「道理」とも取れるし、哲学や文学その他諸々ひっくるめて「人生」と読んでもいいし、ここは読み手の好みで解釈していい部分なのかな?と思います。

     

    A与謝野晶子ってどんな人?

    今から100年以上も前、明治時代に活躍した女流歌人です。

    なので当時は、その短歌に書かれている言葉自体、特別ではありませんでした。

    女性が詠む官能で彩られた『みだれ髪』の出版は、時代が時代なだけに、かなりショッキングな“事件”だったと思います。

    21歳の時、歌の師匠の与謝野鉄幹に大恋愛をして、妻から奪い、友人とも恋敵として戦って、大阪の実家を捨てて上京、妻の座を勝ち得ます。

    12人の子供を産んで育て、夫がフランスに旅行中、子供を置いて追いかけて行くといった、時代にとらわれない、バイタリティーのある女性でした。

    こう書くと、大変な悪女みたいですが、生涯夫を愛し続け、苦しい家計を切り盛りする為に一生懸命働き、夫の死後も夫への恋歌を沢山残しました。弟が戦地に行く時には「君死にたまふことなかれ」(弟よ、死なないで帰って来て)と、気持ちのまま真っ直ぐに歌いました。

    「自分の感情に正直に生きた、とてもピュアな女性」だったのです。

     

    Bこのシチュエーション、どう切りひらく?

    私の職場に2人の独身女性が居ました。

    美人だけど、自分に自信が無く、かなり奥手のA子さん(24歳)。

    容姿は普通だけど、自分を持っていて、快活なB子さん(28歳)。

    新しく配属になった、理知的な独身男性のCさん(27歳)に密かに思いを寄せています。

    そんな二人にビッグチャンス到来、同じようなシチュエーションを経験します。

     

    仕事が深夜に及んだそれぞれ別の日に、Cさんが車で送ってくれる事になりました。

    Cさんは同僚として、淡々と仕事の話などしながら、車の運転をしています。

     

    A子さん(Cさんはさっきから仕事の話ばかり。私なんて魅力がないから、きっと次に誘って貰えないんだわ…)そんな風に悪い方へ考え、黙ったまま適宜頷くだけ。

    CさんはそのままA子さんを家まで送り届けます。

    「では、また、明日」。

    2人は同僚のまま、普段通りの日常がはじまります。

     

    そして、B子さんにも同様のチャンスが。Cさんの車で家まで送ってもらいます。

    B子さんは心の中で(Cさんはさっきから仕事の話ばかり。ちょっと私の方を向いてくれないかな?)と思います。

    仕事の話が一段落ついて沈黙が少し続いた時に、

    B子さん「Cさんの話を聞くの好きだわ。仕事の話もいいけれど、もっと別の話も聞いてみたいな・・」。

    はっと我に返るCさん。

    “車中二人きり”という状況に、実はCさんも緊張していたのでした。そこから私的な会話が生まれ、共通の趣味の話で盛り上がり、やがて二人は付き合う事に。

    CM程、直接的な方法ではありませんが、「自分の方に向いてもらう工夫」としての会話が、とても有効的だったのですね。

     

    C気の持ちようが顔にあらわれる。

    20代の頃、とてもキレイな人が40代になって暗い雰囲気になっている・・とか、

    若い頃はぱっとしない容姿だったのに、年を重ねてすごく魅力的になった・・なんて事はよくありますね。これは、「気の持ちよう」が大きく作用していると思われます。

    内面の良さは、顔に刻まれていくんですね。

    「40過ぎたら、男は顔に責任を持て」という言葉も、そこから来ていると思います。

     

    「私なんてどうせダメ・・」とマイナス思考でいるより、

    「私はこんなに魅力的なのに、何で次に誘わないの!」位の自信は、持っていた方がいいのかもしれません。もちろん、”自分押し”の匙加減は、とても大事なのですが。

     

    D歌は詠み手を離れ、独り歩きする。

    この短歌は与謝野晶子がまだ夫と巡り合う前に、ひそかに片思いしていた人にあてた短歌だとも言われています。なので、もう少し、控えめな

    「貴方への想いで熱くなっている私に、気付きもしないの?」位の、独り言のような感情だったのかもしれません。少女が詠んだ短歌だとしたら、印象は少し変わってきます。

    けれども、作品として世に出れば、読み手は自分の解釈で好きなように味わえばいいと思うので、CMのようなシチュエーションもピタリとはまりますよね。

     

    E理知的な男は時代を超えてモテる。

    与謝野晶子の夫、鉄幹は、若い頃からモテて、晶子と結婚後もちらほら女性の影があったとか。晶子は常にハラハラし、嫉妬の炎を燃やしていた事でしょう。だから、情熱的で素晴らしい短歌が沢山生まれたのです。

    けれども、女性にだらしない、ただのダメ男ではモテません。

    若い頃は国語教師として女学生を教え、上京して東京新詩社を創立、自ら短歌を発表するとともに、晶子など若い才能を見出しプロデュースしていく…といった、理知的でデキる男でした。

    なので、多くの女性が憧れ、恋い焦がれたんですね。

     

    「理知的な男三割増し睦月」