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★電脳歌人ミコトの恋の覚書 その19★セクハラ対処法…周防内侍

  • 2014年05月08日  菱月 美琴  



    職場恋愛の成就に立ちはだかるものの一つとして、意外と厄介なのは「セクハラ上司」。

    対処の仕方や対応の良し悪しは、周囲に見られています。

    その行為、「セクハラ!」と、声高々に言う前に、ちょっと待って。

    上手にかわして自分の評判までアゲている、 “平安の働くイイ女”、百戦錬磨の周防内侍(すおうのないし)からヒントを得てみましょう。

     

    「春のよの夢ばかりなる手枕にかひなくたゝむ名こそ惜しけれ」
    (引用:『小倉百人一首・67番』より)

     

    @この短歌、こう読みます。

    「春の夜の夢のように、はかない戯れの腕枕のせいで、つまらない恋の噂話を立てられて、私の名前を貶めるのは口惜しく思われます。」

    三月のある夜更けに、二条院に人々が集まり楽しく語らっていた時、眠くなった周防内侍が「枕が欲しいわ」と呟きました。それを聞いた、大納言の藤原忠家が「これをどうぞ」と御簾の下から自分の腕を差し入れました。

    「手枕(たまくら)」は一夜を共にする男女がするものとされていたので、からかい半分、男性側の下心が丸見えですね。その誘いをやんわりお断りしたという形です。

    「春」「夜」「夢」「手枕」と、妖艶な言葉を並べ、「甲斐なく」と「腕(かいな)」を掛けている巧みな和歌です。

    誘いはかわしつつ、身分の高い男のプライドを傷つけないよう、その夜の情緒は壊さないよう機転を利かせた、周防内侍はなかなかの才媛です。

    この歌に対して藤原忠家は、「契りありて春の夜深き手枕をいかがかひなき夢になすべき」(意味:前世からの契りで、この春の夜更けに差し出した手枕を、なぜ甲斐もない夢になさるのですか。)と詠んでいます。こちらは何か本気っぽいですね。フラれて軽く逆切れ…という風(ポーズ?)にもとれます。

    実は周りの人にも配慮しているこのやりとりには、感嘆と朗らかな笑いがおこった事でしょう。周防内侍の働く女性としての、巧みな処世の術が見えますね。

     

    A周防内侍のこと。

    平安後期の歌人。(女房三十六歌仙)。周防守・平棟仲の娘。本名は仲子(ちゅうし)。後冷泉天皇、後三条、白河、堀河天皇と、4朝・約40年程女官として仕えました。プライベートな資料はあまり残っていませんが、父親は和歌六人党のひとり、兄は比叡山の僧侶で金葉集に和歌が残っているそうです。歌が得意な血筋だったのですね。また、当時では長命な70数歳で病のため亡くなったとされています。

     

    Bオトナの対応。

    新入社員のA子さんは、ゴールデンウイーク明けに会社に行くのがとても億劫でした。原因は職場の部長。会話に下ネタがちょいちょい入り、かなり不快でした。精いっぱいの愛想笑いで何とか凌いでいましたが、そろそろ限界…。

    A子さんは女子高、女子大出身。内向的で男性にあまり免疫が無かった事も、より事態を深刻にしていました。

    休み明け、やはりその部長はニヤニヤ笑いながらA子さんの近くに来て、またもや下ネタ三昧。何だか愛想笑いにも疲れてしまいました。思わず抗議の言葉が口から出そうになった時、

    「部長! ほらほら油売らずに仕事仕事〜! 対応に困るような無駄口は叩かない事〜!」

    バンバンっと部長の背中を叩いて、笑いながら先輩のB子さんは去っていきました。

    「やれやれ、ごめんごめん。つい癖で。冗談言って、職場の雰囲気に慣れてもらおうと思ってさ」と、部長は意味不明な釈明をしつつ、頭を掻きながら自分の席に戻っていきました。

    (私が真顔で抗議したら、職場の雰囲気、悪くしただろうな…B子さんが助けてくれたんだ。)A子さんは内心ほっとしていました。

    サバサバしていて、仕事も出来るB子さん。男性社員からの下ネタも上手くかわし、後輩が軽いセクハラに困っている時には、さり気なく助けてくれました。

    ロッカーで一緒になった時にお礼を言うと、「私も新入社員の時、辛かったから。長く勤めて行くためには、そういうのも上手くかわして行かないといけないんだよね〜…。でも、どうしても我慢できない時は、びしっと言っていいと思うよ」。

    A子さんには、Bさんが頼もしく、とても素敵に見えました。

     

    C同じ行動でも「好き」と「セクハラ」二つに分かれる。

    ベタな下ネタではなく、職場での軽い誘いも「好き」と「セクハラ」に分かれる時がありますよね。

    何となくいいなと思っていた人からだったら、「好き」になっていくだろうし、全く眼中に無かった人からなら、不快に感じて「セクハラ!」という風になってしまうかもしれません。

    平安の恋の駆け引きが、上手くいってもいかなくても、何となく朗らかに終われたのは、相手の気持ちを推し量った上での、繊細で知的なやりとりだったからでしょう。即興でも一瞬一瞬が真剣勝負の恋歌の応酬は、とても粋ですよね。

     

    D許容範囲か見極める。

    自分の評判や体裁を気にするあまり、職場などでの限度を超えたセクハラを、我慢している人も多いのでは。

    笑い飛ばせる位のものなら、上手くかわしてデキる女をアピールしましょう。笑えないレベルなら、なるべく初期段階で信頼できる人に相談しましょう。

    セクハラが広く認知された平成の今日、過度なストレスを抱えるほどに、我慢をしなくてもいいのです。(女性も男性も。)

     

    「ふれた手は嫌じゃなかった風薫る」