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★電脳歌人ミコトの恋の覚書 その23★絶頂で死にたい…儀同三司母

  • 2014年05月22日  菱月 美琴  



    相思相愛、幸せの絶頂期に「死んでもいい」なんて思った事、ありませんか? 実際、なくても、そんな恋愛、憧れますよね。
    結婚の誓いの言葉の最後に、「その命ある限り、真心を尽くす事を誓いますか?」「ハイ、誓います」って、言っているけれど、それって本当に揺るぎないのでしょうか。
    平安の昔、幸せ過ぎて不幸せだったのかもしれない、儀同三司母(ぎどうさんしのはは)の歌について、考えてみましょう。
     
     
    「わすれじの行末迄はかたければけふをかぎりの命ともがな」
    (引用:『小倉百人一首・54番』より)
     
     
    @この短歌、こう読みます。
     
    読み方は「わすれじの ゆくすえまでは かたければ きょうをかぎりの いのちともがな」です。
    意味としては「あなたを永遠に忘れない(愛する)という言葉をいただきましたが、(長い人生の間)それはとても難しい事でしょう。だから、その言葉を聞いた幸せの絶頂の今日、死んでしまいたいものです」という感じでしょうか。
    夫の藤原道隆が彼女の元へ、通い始めた頃に詠んだ歌だそうです。新婚の今が幸せ過ぎる為に、返って遠い将来の不幸せを予感するという、複雑な女心を表現しています。
    平安時代の不安定な結婚制度を考えると、切実な心の叫びなのかなと思いますが、現代に置き換えてみても、女性ならば何となく、その想い、解りますよね。
     
    A儀同三司母のこと。
     
     平安中期の歌人。(女房三十六歌仙)。本名は高階貴子(たかしなの・きし/たかこ)。藤原道隆の妻となり、3男4女に恵まれました。一条天皇の后・定子の母。
    学者の血をひく才媛で、漢字の素養があり、詩作も素晴らしかったそうです。夫の死後尼になりますが、自身も間もなく病没。晩年は息子達の失脚など、辛い事が重なり不遇でした。四十代での死だったと伝わっています。
     
    B死んでもいい位に幸せ。
     
    学生時代から片想いだったAさんと、念願叶ってカップルになれたB子さん。毎日がバラ色で、「Aさんの彼女」というだけで、自分自身が数段素敵になった気がしていました。週末はいつも彼と一緒。(外見も超好みだったけれど、中身も本当に優しくて頼もしいな…)。そんな彼の事が、増々好きになっていきました。
     
    「私、本当に幸せ。このまま死んでもいいなーって思える」。
    あるデートの時、彼の腕の中でB子さんは言いました。「今が一番いい時なんじゃないかな」。
    Aさんは笑っていましたが、数日後、それが現実になります。
     
    B子さんの死因は「心不全」でした。職場で倒れ、帰らぬ人に。
    B子さんはふわふわ漂っていました。
    泣いている両親やAさんを見下ろし、自分自身が死んでしまった事を、ぼんやり理解しました。けれども、心残りがある為、天国へは行けなかったのでした。
     
    数年後、Aさんに新しい彼女が出来ました。映画を観に行ったり、食事をしたり。手をつないで買い物に行ったり。上空からB子さんはその様子を見ていました。
    さらに数年後、Aさんは彼女と結婚し、新しい命を授かっていました。幸せな家族の風景。子供はどんどん大きくなり、兄弟も増え、怒ったり笑ったりしながら、Aさんと彼女は年を取っていきました。
    夕日の河原で、老人になったAさんと彼女が腰を下ろしていました。
    穏やかに笑いながら、いたわり合いながら、何かを話し込んでいました。
     
    「若い頃、付き合っていた女の子がね、『死んでもいい位幸せ』って、言ったんだ。数日後、本当に死んでしまってね。…死んだら、それで終わりなのにね…」。
    「でも、今も大事に思っているじゃない。若くて綺麗な女の子のまま、あなたの中に居るんでしょうねぇ」。年老いた彼女は微笑んで言いました。
     
    B子さんはふわふわ漂いながら、その一部始終を聞いていました。
    「あの日、『死んでもいい位幸せ』だったけれど、そこから先の人生にも大きな幸せがある事、長い長い間、見せて貰って解ったわ」。
    B子さんの身体の輪郭はだんだん曖昧になり、キラキラの粒子になって消えました。心残りはもうありませんでした。
     
    C欲張りになろう。
     
    死んでしまっては、そこから先の幸せを手に入れる事は出来ません。もっともっと好きになって、好きにさせなければ。
    儀同三司母は愛する人の子をたくさん産んで、それぞれが出世して行く様を見守りました。やがて夫に先立たれ、子供達も失脚する等の不幸にも見舞われ、晩年は辛い境遇だったようですが、それ以上に幸せの日々があった事は確かでしょう。
     
    D純粋な想いは持ち続けたい。
     
    付き合い始めたばかりの頃や、新婚当初等の、相手を想う純粋な気持ち、持ち続けていますか? 時が過ぎると、恋心もマンネリ化しがちですよね。
    当時の熱い想いを思い出して、相手には愛情と感謝を伝えましょう。
     
    「薔薇ひらく死んでもいいと言う女」