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★電脳歌人ミコトの恋の覚書 その25★抗議の仕方…赤染衛門

  • 2014年05月29日  菱月 美琴  



    人への抗議の仕方って、一歩間違えると致命的。恋愛に於いても同じです。一方的に自分の主張を言った所で、逆効果。言いたい気持ちをぐっと押さえて、より効果的に自分の想いを相手に伝える事は出来るのでしょうか。
    人付き合いが上手で、紫式部も一目置いた、良妻賢母の人格者、赤染衛門(あかぞめえもん)の歌から見ていきましょう。
     
     
    「やすらはでねなまし物をさよ更てかたぶくまでの月を見しかな」
    (引用:『小倉百人一首・59番』より)
     
     
    @この短歌、こう読みます。
     
    読み方は「やすらわで ねなましものを さよふけて かたぶくまでの つきをみしかな」です。
    意味としては「(今夜)あなたがいらっしゃらないと分かっていたならば、ためらわずに寝てしまいましたものを。いらっしゃるかもしれないと心待ちにしているうちに夜も更けて、とうとう西の山に傾く月を見てしまいました。」という感じでしょうか。
    来るか来ないか分からない恋人を待つ、切ない女心がストレートに伝わってくる歌ですね。相手を追いつめない程度の抗議が効いています。
    この歌は赤染衛門本人の心情ではなく、自分の姉か妹の為に代筆したものとも言われています。短歌コラム23で儀同三司母の夫として登場した、藤原道隆へ宛てて詠みました。
    この方、度々歌に詠まれている所を見ると、中々のモテ男だったのですね。(結婚後は落着き、とても良い夫だったようですが)。
     
    A赤染衛門のこと。
     
     平安中期の歌人。(中古三十六歌仙・女房三十六歌仙)。本名は不明です。
    父は赤染時用(ときもち)、実父は平兼盛のようです(短歌コラム8参照)。大江匡衡(まさひら)と結婚、藤原道長の妻倫子(りんし)に仕え、娘、彰子(しょうし)の女房となりました。風格のある優美な和歌を詠み、和泉式部と並び称されました。
    また、『栄華物語』の作者ではないかと言われています。家集に『赤染衛門集』があります。良妻賢母としても知られており、毒舌家の紫式部も一目置いていたようです。当時としては大変珍しく80歳以上の長生きでした。
     
    B「ある事」がキメテに。
     
    A子さんには付き合って2年の彼がいます。ここの所、仕事が忙しいらしく、中々会えない上、デートの約束をしてもドタキャン…なんて事が続いていました。
    前の彼女と別れる原因にもなったらしい、多忙な仕事。でも、A子さんは彼を失いたくありませんでした。
    彼の仕事が何時になるのか分からない為、最近の週末は彼のアパートで待ち、12時を過ぎたら一人で帰るという日々。
    会えない時、A子さんは決まって「ある事」をして帰りました。
    彼氏は深夜疲れて帰って来ても、A子さんの「ある事」を見て、いつもほんわり温かくなるのでした。
     
    ある時、彼はA子さんに言いました。
    「あのさ、忙しくて中々会えなくて、ゴメン。もし、良かったら、このアパートで毎日待っていて欲しい。…あの、俺と結婚して下さい。」
    「…うれしい。宜しくお願いします」。A子さんの願いは、意外にあっさり叶えられました。
     
    結婚への決め手となった「ある事」とは、「一筆箋に数行のメッセージ」でした。
    彼氏は手書きのメッセージが嬉しかったのです。そこには会えずに残念だった事と、必ず、彼の身体を気遣う言葉が添えられていました。余白に描かれたニコニコマークやハートは、彼の中にどんどん溜まり、A子さんはかけがえのない存在になっていったのでした。
     
    後日、A子さんは携帯で何やら話していました。
    「メールだとイライラする気持ちを衝動的に打ってしまったりするから、ひと呼吸おいてからの手書きのメッセージ、良かったよ〜。効果あったわ〜〜。ありがと!」。
    一筆箋のアイディアを貰った既婚の友人に、よい報告が出来たのでした。
     
    C重過ぎず、軽過ぎず。
     
    彼のアパートで、毎回、食事を作って待っている…というのでは重過ぎるし、それですっぽかされたら、それこそこちらの鬱憤が溜まってしまいます。
    メールやSNSは便利だけれど、何となく画一的。また、手軽さゆえに気持ちを整理しないまま送ってしまう…なんて事も。
    手書きはその点、ある程度考えてから書くだろうし、文字に個性が出て温かみもあります。
    古くからある手ではありますが、一筆箋、結構、使えますよ。お試しあれ。
    (綺麗な文字だとさらに効果がアップしますよ!)
     
    D作戦通りにはいかない事も。
     
    赤染衛門は、恋人が来ずただ嘆き悲しむ姉妹を気遣う気持ちから、アドバイスのつもりで、和歌の代筆をしたのかもしれません。人との付き合い方を熟知した、人格者だった事が窺えますね。
     
    自分のみの、辛かった悲しかったを訴えるのではなく、相手の気持ちを推し量った上での、やんわりとした抗議はとても効果的だと思います。
     
    最終的には、赤染衛門の姉妹は藤原道隆と結ばれませんでした。(「恋の絶頂で死にたい…」と詠んだ儀同三司母と、仲睦まじい夫婦になります)。
    恋愛は、なかなか思うようにはいかないものですね。
     
    「やわらかな文字を梅雨に忍ばせる」