TOP > イククルコラム > ★電脳歌人ミコトの恋の覚書 その29★想いは自由…小野小町A

★電脳歌人ミコトの恋の覚書 その29★想いは自由…小野小町A

  • 2014年06月12日  菱月 美琴  



    恋の妄想を膨らませた所で、それは罪にはなりません。平安の恋する女、小野小町もあふれる切ない想いから、現実逃避気味の歌を数々詠んでいます。
    でも、その想い、ひょっとして恋に恋しているだけかも? 
    夢の中の恋とは裏腹の、現実の恋に背を向けてはいけません。小野小町の儚げな作品から、理想と現実の恋について考えたいと思います。
     
     
    「かぎりなき思ひのままに夜も来む夢路をさへに人はとがめじ」
    (引用:『古今集・657番』より)
     
     
    @この短歌、こう読みます。
     
    読み方は、「かぎりなき おもいのままに よるもこん ゆめじをさえに ひとはとがめじ」です。
    「限りなく湧き出て来る貴方への恋情。その燃える想いのまま夜が来ました。夢の中で貴方に逢うのであれば、誰も咎める事は出来ませんよね」。
     
    情熱的だけど、どこか儚げ。『古今和歌集』の序文で、紀貫之は小野小町の作風を、「哀れなるようにて、強からず。言わば、良き女の悩める所あるに似たり。」と好意的に評しました。
     
    架空の人物説もある小野小町ですが、在原業平や文屋康秀、良岑宗貞と和歌の贈答をしている為、「居たであろう美女」として、数々の伝説が生まれています。
     
    A小野小町と文屋康秀(ぶんやのやすひで)。
     
    謎に満ちた小野小町を知る上で、残された和歌は大きなヒントになっています。
    下級官吏の文屋康秀は、三河国に赴任する際「一緒に来ないか」と、小野小町を誘ったそうです。それに対して小町は、「わびぬれば身をうき草の根を絶えて誘ふ水あらばいなむとぞ思ふ」(意味:ひとり寂しい日々を送る我が身。根なし草のように、誘いの水さえあればどこにでも流れて行こうと思います)と返歌したそうです。(本当について行ったのかは不明ですが)。
     
    Bひとりが好きな理由。
     
    証券会社窓口のA子さん。美人で仕事が出来、優しい人柄で、お客様にも人気がありました。
    時間内にテキパキと仕事をこなし、定時でいつも帰っていました。
     
    「A子さん、たまには飲みに行こうよ」。そんな、男性社員の誘いもやんわり断り、「お疲れ様でした」と、控えめな笑顔を残して去って行きました。
     
    「A子さんって、確か、10年以上居るよね。でも、全く私生活が見えて来ないよね〜」。
    「彼氏とか居なさそうだし…っていうか、友達や家族の影も見えないよね〜」。
    女子社員は時々コソコソと噂話のネタにしていました。
     
    ある日、A子さんの顧客のB氏(地元企業の社長)が窓口に現れました。
    「いらっしゃいませ」。
    「あ、今日は仕事の話じゃないんだよ」。
    「これ、仕事終わったら見てね。君にいいかなと思うんだよ」。
    B氏はA4サイズの紙袋をA子さんに手渡し、ニヤリと笑顔を残して去りました。
     
    新築のマンション。新しいベッド。A子さんは秘密の「我が家」で寛いでいました。ごろりと横になり、Bさんから手渡された書類の中身を確認しました。お見合い写真でした。
    「またか〜」。A子さんは声に出して言いました。
    仕事をはじめて18年、年齢不詳の美貌の持ち主は、実年齢40歳。各方面からの見合い写真には少々うんざりしていました。ピーク時よりかなり減りましたが、今でも周りが心配して、ポツポツ縁談を持って来るのでした。そして、年をと取った分だけ「写真の君」は、増々理想の男性像とかけ離れて行くのでした。
     
    「彼氏とか要らない。家も車も自分で買えるし」。
    A子さんは引出しから通帳を取り出し眺めました。かなりの額の預金額です。
    「マンション買って減ったけど、まだ余裕があるわ。独り身だと貯まる」。財テクもゲーム感覚で一通り経験していました。
     
    A子さんは花柄の手帳を開きました。少々色褪せた、若かりし日のキアヌ・リーブスの写真。
    「私…歯並び直そうかな」。
    「将来、彼の奥さんになる訳だし」。
     
    大学時代からキアヌ一筋。いつかめぐり逢い、恋に落ちるその日向けて、完璧な私を目指したい。A子さんの瞳は少女漫画のようにキラキラでした。もちろん、これからもキレイな体のままでいようと心に誓うのでした。
     
    Cマチ針の君。
     
    言い寄る男達をことごとく振って、結局は寂しい晩年を送ったとされる小野小町。
    男性経験が無かったのではないかと言われ、「穴の無い女性」と揶揄されたそうです。
    マチ針の語源は「小町針」で、「穴が無い」為そう付いたとか。
    絶世の美女なのに身持ちが固いという事から、やっかみ半分、好き勝手に言われていたのですね。
    小野小町自身は、それを知っても気にもしないでしょうが。
     
    D年々理想は高くなり、年々現実は厳しくなる。
     
    悲しいかな、恋愛に於いても需要と供給のバランスは大事。全てそうとは言い切れませんが、若くて可愛い女の子には恋のチャンスも多いですよね。
    「花のいろはうつりにけりないたづらに」、一刻一刻と時は過ぎ、モテ期だったあの頃は遥か彼方の昔へ。
    でも、諦めてはいけません。大事なのは、客観的に自分を見る事です。お料理が上手とか、英語が得意とか、年を重ねた分、自分に付加価値は付いているのでしょうか? 人と違うアピールポイントを作って、容姿だけではない個性に磨きをかけましょう。
     
    「紫陽花と二十歳の君が夢の中」