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★電脳歌人ミコトの恋の覚書 その31★泣く男…紀貫之@

  • 2014年06月19日  菱月 美琴  



    男の人の涙にドキッとした経験、ありませんか? 普段はなかなか見せない姿に、母性本能をくすぐられたり。でも、時と場合によっては、救いようの無い位にマイナスイメージなってしまう危険性も。
    恋の媚薬として効果的に使いたい「男の涙」。どんなシチュエーションならオッケーなのでしょうか。平安の技巧派、紀貫之の歌から考えてみたいと思います。
     
     
    「君恋ふる涙しなくは唐衣胸のあたりは色もえなまし」
    (引用:『古今集・572番』より)
     
     
    @この短歌、こう読みます。
     
    読み方は、「きみこふる なみだしなくは からごろも むねのあたりは いろもえなまし」です。
    「貴女を恋しく想って泣いていますが、その涙がなければ胸のあたり(心)は、恋の炎で燃えているように赤いでしょう」。
     
    涙で恋の炎を鎮火している感じの歌です。彼女を想って赤く燃えているハートに、とめどない涙が降り注ぎ、その涙はじゅわっじゅわっと蒸発しているような情景が浮かびます。よくよく考えてみると、ちょっと、漫画的でコミカルな感じもしてきたり。
    「君を想って泣いている」なんて言ってしまうあたり、女性の母性本能を上手く計算した、恋の上級者の歌と言えるかもしれませんね。
     
    A紀貫之のこと。
     
    平安前期の歌人で『古今和歌集』の選者の内の一人です。(三十六歌仙)。和歌の名手として知られており、理知的で情感に富んだ作品を数多く残しました。文学的な新しい試みにも挑戦しており、『古今和歌集』の仮名序や、女性の身になって書き綴った『土佐日記』の作者としても有名です。
     
    B男の涙。
     
    某ハウスメーカー。普段はクールな設計のAさんは、いつも深夜まで黙々を図面を描いていました。
    インテリアコーディネーターのB子さんは、時々残業で一緒になっていました。
     
    「…おっと、はじまるわ」。Aさんはボソッと呟いて、休憩室に入っていきました。暗い部屋にテレビが点いたのが解りました。ワーワーという歓声。グリーンの芝の画面。
    Aさんが見ていたのはサッカーのワールドカップブラジル大会でした。
     
    テレビの音を小さく聞きながら、B子さんは自分のデスクで仕事を続けていました。
    90分後、休憩室から出てきたAさんは目を真っ赤にして泣いていました。
     
    「えっ、どうしたんですか?」。
    「いや、良かったんだよ」。
    「誰かのプレーが?」。
    「まあ、全体的に、試合後の雰囲気とか」。
     
    Aさんは特別にどこかのチームを応援しているでもなく、サッカーの試合後にチーム一丸となって、泣いたり喜んだりしている姿を見て泣いていた事が解りました。
    Aさん自身、小・中・高校とサッカーをして来て、当時の想いと重ね合わせ、込み上げて来るものがあったのだそうです。
     
    「Aさん、いい人ですね」。
    「いやいや、お恥ずかしい…。皆に内緒ね」。
    「今度、時間が合ったら一緒に見ようかな」。
    「うん、見ようよ。今だけだよ。マジで感動するよー」。
     
    Aさんのキラキラした瞳がとても素敵に見えました。
    (普段の無口なAさんも格好いいけど、感動で泣いている純粋なAさんに、何かぐっと来たな〜…)。
     
    次の日もいつもと変わらずクールなAさん。でも時々B子さんと目が合うと、軽く微笑み合う仲になりました。
    「泣き」の秘密を共有する事で、AさんとB子さんの距離はぐっと縮まったのでした。
     
    Cここぞの武器。
     
    普段はクールな人の泣き顔なんて見たら、それだけでクラッと来てしまいそうです。これは、「ギャップ」の効果ですよね。「涙は女の武器」って言いますが、むしろ、男性の方が効果的に使えるかもしれません。ここで大事なのが、「何に泣いているのか」という理由。上司に怒られて泣く…とか、フラれてその場で泣く…とかだと、相手に引かれてしまう確率がかなり高いです。「子供じゃないんだから…」と、ツッコミも入れられそうです。
    マイナス要素の高いシチュエーションでは、ポロッと涙を見せるより、「ぐっと我慢」している姿の方が、圧倒的に格好いいんですよね。
     
    D安売りは禁物。
     
    「涙は武器」と言っても、普段からメソメソしている湿っぽい人は、男も女もNGですよね。
    涙はやはり、安売りするべきものではないのです。泣きで相手の心を掴もうとするより、まず、真心で接する事が大事です。相手を思いやり、喜怒哀楽、自分の感情をコントロール出来る人はやはり、素敵ですよね。
    涙には種類があります。恋に効果的なのは純粋な涙です。恨み辛みから流れる涙より、感動や優しい気持ちから流れる涙の方が、ずっと心に沁みて来ますよね。
     
    「青すすき 男の涙見て居たり」