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★電脳歌人ミコトの恋の覚書 その34★蛍の夜…桂信子

  • 2014年06月30日  菱月 美琴  



    各地で蛍祭りが開催されているこの時季。浴衣でお出掛けする人も多いのでは。
    浴衣も最近は上下で分かれていたり、生地もポリエステルだったりと多様化していますが、昔ながらのシンプルな木綿の浴衣も、しっとりしていていいものです。
    アップにした髪、そこからのぞくうなじって、色っぽいですよね。浴衣の効果的な見せ方について、あれこれ考えてみたいと思います。
     
     
    「ゆるやかに着てひとと逢ふ蛍の夜」
    (引用:桂 信子著『月光抄』より)
     
    @この俳句、こう読みます。
     
    読み方は「ゆるやかに きてひととあう ほたるのよ」です。
    季語は「蛍」。
     
    和服(浴衣)を、あえてきっちり着付けせずに、ゆるやかに着て好きな人に逢いにゆく。二人の周りには蛍がちらほら舞っている…というイメージでしょうか。
    「ゆるやかに着る」というのは、うなじや胸のラインが強調されるんですよね。気を許した相手でないとそんな着こなしは出来ません。静かでしっとりとした情感のある句であるとともに、やや女性の魔性も感じ取れる作品ですね。
     
    A桂信子さんの事。
     
    大正3年生まれ、大阪出身の女流俳人です。24歳の時、日野草城の俳句誌に初投稿します。25歳に結婚しますが、その2年後に夫に先立たれ、以降、定年退職するまで会社勤めをしました。定年退職後に、俳句雑誌『草苑』を創刊し主宰。たくさんの句集を世に遺し、数々の賞を受賞しました。俳壇にも貢献し、現代俳句協会副会長を長い間つとめました。
    女性的で解りやすく、情感あふれる作品が親しまれています。90歳で永眠します。
     
    B姉のアドバイス。
     
    男運が無いと嘆きっぱなしのA子さん。何と、前々から気になっていた、関連会社の彼からお誘いが。
    久々のデート、何を着て行こうかあれこれ悩んでいると、姉が部屋に入ってきました。姉はこの春結婚したばかり。新居に荷物を運ぶため、実家に帰って来ていたのです。
     
    「何、どこ行くの?」
    「蛍祭り。短大の近くの川の事、覚えている?」
    「ああ、学生が蛍増やそうとかやっていたよね」
    「そう、もう何年も行ってないけど、その事話したら彼が連れて行ってくれるって」
    「ふうん。何か蛍、随分増えたみたいだね」
    「何着て行けばいいかなー」
    「浴衣着て行けばいいじゃん」
    「えー、早くない?」
    「何でー、ここで着て行かなくてどこに着て行くのー?」
    「だって、私、子供っぽいのしか持ってないし」
    「私の貸すからさ」
     
    姉はロフトに上がると、自分の浴衣を持って降りて来ました。黒地にグレーの薔薇模様、モノトーンの素敵な浴衣でした。
    「おばあちゃんが手縫いしてくれたやつじゃん。大切にしていたのに、いいの?」
    「いいよー、仕舞っておいたらもったいないから着て」
    姉はあれこれ浴衣に必要な小物を用意し、巻き髪をアップにして可愛くまとめてくれました。
    「浴衣が地味だから、口紅は赤がいいと思うよー…。…いいじゃん、完璧」
    「ありがとうね。頑張ってくるわ〜!」
    「うん、楽しんで来てね」
     
    デートの待ち合わせは夕方。少し早めに到着して待っていると、前方から彼が。
    「おっ、浴衣。きれいだねー」。少し照れくさそうにしていました。
    (何か、いい感じの出だし)。A子さんは、内心、ホッとしていました。
     
    何年かぶりの蛍祭り。久しぶりに来た町は、懐かしい景色も残っていて、彼と一緒に夜店などを楽しみながら、ぶらぶらしました。段々あたりは暗くなり、蛍があちこちに舞い始めました。
    川沿いを歩く時、彼は手を貸してくれました。
    (浴衣の初デートは大成功だわ)。心の中で姉に感謝しました。
     
    姉は家で古いアルバムを引っ張り出して見ていました。
    (私の初デートにもあの浴衣着て行ったんだ。浴衣効果って凄いんだから。いつかまた妹に話そう)。
    アルバムには彼氏だった頃の夫と、あの浴衣の自分。
    幸せジンクスのある浴衣を妹にこっそり着せて、今度こそ、妹が幸せになれますようにと願うのでした。
     
    C浴衣効果。
     
    普段は和服(浴衣)を着る機会って、殆どないですよね。なので、ギャップ効果は絶大。色気に自信がない女の子も、ここはまず、浴衣に挑戦してみましょう。
    和装は色合わせも楽しみの一つ。帯や髪留め、バッグなどで、さりげない自分だけのこだわりを表現出来ますよ。
     
    D粋な着こなしで大人の女性に。
     
    はじめからゆるゆるに着付けては、色気というよりだらしなく見えてしまいます。折角のこの機会に、浴衣の着付けも学んで、ひとりで着れるようになったら素敵ですよね。きちんと着こなせるようになってから、少し崩して着るというのが上級者で、粋です。
    浴衣美人になって、夏を楽しみたいですよね。
     
    「夕暮れに浴衣の君と手をつなぐ」