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★電脳歌人ミコトの恋の覚書 その35★危険な恋…紀友則

  • 2014年07月03日  菱月 美琴  



    七月に入り、もう気分は夏。何となく開放的になり、危険な恋に引っ張られそうな人も、ちらほら。
    「一夜限り」「アバンチュール」「大人の遊び」等々、…普段は敬遠してきた言葉に、強く惹かれてしまう事も。
    そんな、魅惑的で危険な夏の恋について、考えてみたいと思います。
     
     
    「宵の間もはかなく見ゆる夏虫に惑ひまされる恋もするかな」
    (引用:『古今集・561番』より)
     
     
    @この短歌、こう読みます。
     
    読み方は、「よいのまも はかなくみゆる なつむしに まどいまされる こいもするかな」です。
    「夕暮れの明るさが残る宵の口、あかりに誘われ惑わされて乱れ飛ぶ夏虫は、やがて炎に焼かれてはかなく死んでしまうだろう。私も夏虫のように又はそれ以上に危険で、身を滅ぼすかもしれない、そんな激しい恋愛をしてみようか」。
     
    夏の夜の浅い時間、灯したあかりに夏虫が近寄って来ます。美しく燃える炎に近付き過ぎて、夏虫はジュッ、ジュッっと音を立てて一瞬のうちに消えてしまいます。その様子を見ている男が、はかなく身を滅ぼす夏虫に想いを馳せて、自分自身、危険な恋に身を投じるのも悪くない…等と、徒然に思っている様子が浮かびます。
     
    A紀友則(きの とものり)のこと。
     
    平安前期の歌人で、紀貫之のいとこです。(三十六歌仙)。四十代半ばまで無官という、出世とは縁遠い人でしたが、歌の才能には恵まれ、数多くの優れた歌を遺しました。紀貫之らと共に『古今和歌集』の選者となりましたが、完成を待たずに病死しました。
    「久方のひかりのどけき春の日にしづ心なく花のちるらむ」という和歌は有名ですね。
     
    B一夜の恋。
     
    A子さんは27歳。地方の住宅設備メーカーの営業です。新商品の見学会で東京へ出張に来ていました。
    今回は一人出張という事もあり、都心のダーツバーに行こうと決めていました。
    事前に同僚にその事を言うと、
    「えー、東京で一人飲みって、危険じゃない?」
    「ちょっと勇気いるけど、ダーツ、どの位通用するか試してみたいんだ」
    「…そうなんだ…。くれぐれも気をつけてね」
     
    A子さんの趣味は数年前から始めたダーツ。地元のダーツバーでは知られた存在でした。スポーツとしても最近は浸透して来ていて、仕事の合間に大会などにも参加していました。
     
    出張先の夜。
    仕事を終えてホテルに戻り、この日の為に用意した服に着替えました。やや露出の多いワンピース。メイクもいつもと違う色にしてみました。
    「ダーツが一番の目的だけど…。この街で私を知っている人はいないんだから、思いっきり楽しもう」
    幸い明日は休み。わくわくしながらホテルの部屋を出ました。
    地下鉄を乗り継ぎ、事前に調べておいた、女性ひとりでも気軽に入れそうなダーツバーへ向かいました。
     
    到着すると、そこはなかなかおしゃれなお店。飲み物を頼んでダーツに興じました。何人かの男の人に声を掛けられましたが、適当に話を合わせて夜を楽しむ事にしました。
    「こんばんは。どこから来たの?」
    何人目かに声を掛けて来た男は、とてもタイプでした。
    話してみるとすぐに意気投合。名前も年も知らないまま、彼の部屋について行きました。
    (この場限りで終わっちゃうのかな)。そんな事も頭を掠めましたが、男の腕に抱かれる感覚がとても懐かしく離れがたかく、段々意識は遠のいて行きました。
     
    朝、起きるとそこはワンルームのアパートでした。
    「あ、起きたの?」
    「うん。昨晩酔っていてあまり記憶がないんだけど…」
    「そうなんだ」
    「俺、大学生、名前はB。これからバイトだから、もし良かったら電話して」
    「あ、私…」
    「知っているよ。A子さん」
    朝の光の中、男の顔はまだとても若く、A子さんはまぶしく感じました。名前も年も知らない男の部屋に来るなんて、初めての事でした。浅はかで危険な自分の行動に驚きましたが、昨晩は酔っていながらも、きれいな彼の目を信じていました。
     
    机の上に置かれたメモ用紙に携帯の番号。
    一夜限りの遊びから始まる恋も、あっていいかも…と、A子さんは思いました。
     
    C危険な恋は魅惑的。
     
    一夜のアバンチュールって、昔も今も変わらず魅惑的。
    ただ、犯罪に巻き込まれてしまっては元も子もありません。中々難しいかと思いますが、短い時間の中で、相手が善良な人物か見極めが必要でしょう。
    そして、リスクを承知の上で、大人の関係を楽しみましょう。そこから運命の人に出会えるかもしれません。
     
    D最低限のマナーを守ろう。
     
    一夜限りと言っても、お互い嫌な思い出にならないような、最低限の気遣いは必要です。
    遊びと割り切るなら、さらりとさり気ない別れを。
    次につなげたいと思うのなら、きちんと向き合って誠実な対応を。始まりは危険な遊びであっても、掛け替えのない恋に発展する可能性は、少なからず秘めているものですよ。
     
    「約束をしない恋有り夏の虫」