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★電脳歌人ミコトの恋の覚書 その37★枯れ果てる恋…凡河内躬恒

  • 2014年07月10日  菱月 美琴  



    先の事を気にし過ぎて、なかなか前に進めない時って有りますよね。恋愛に於いても、付き合うよりも先に、別れの悲しみ・辛さばかりに気を取られてしまう事も。
    つくづくマイナス思考で嫌になる…って思う人も多いのでは。でも、平安の昔から、そんな心配性の人は沢山居たのです。古今集の撰者の一人でもある、凡河内躬恒(おおしこうちの みつね)の歌を見ていきましょう。
     
     
    「枯れはてむのちをば知らで夏草の深くも人の思ほゆるかな」
    (引用:『古今集・686 番』より)
     
     
    @この短歌、こう読みます。
     
    読み方は、「かれはてん のちをば しらで なつくさの ふかくも ひとの おもほゆるかな」です。
    「やがて枯れ果ててしまう後の事は知らずに、夏草は青々と深く生い茂ってゆく。私があの人を想う気持ちも、生い茂る夏草のように、段々強くなっている。いつか別れ・離れてしまうかもしれないのに」。
     
    夏、雨上がりの後、庭の雑草が一気に生い茂っていた…なんて事、よく有りますね。夏草の生命力ってすごいです。
    男が日に日に生い茂る夏草と、自分の恋心を重ねて詠んだ歌です。生命力あふれる夏草を前に、その先の枯れ果てた姿(不吉な別れ)を、感じ取っているイメージでしょうか。
     
    A凡河内躬恒(おおしこうちの みつね)のこと。
     
    平安前期の歌人です。(三十六歌仙)。官位には恵まれませんでしたが、一流の歌人として紀貫之と共に並び称され、歌合や賀歌、屏風歌等で活躍しました。貫之とはライバルというより、深い絆で結ばれた親友であったようです。『古今和歌集』の撰者の一人です。
     
    B終わりが怖くて踏み出せない。
     
    某銀行窓口のA子さん。小柄で笑うと笑窪が出来、明るい人柄で人気者でした。某文具メーカー事務のBさんは、A子さんに密かに想いを寄せていて、仕事で週に何度か銀行に行くのを楽しみにしていました。
    実はA子さんも、おしゃれで知的な雰囲気のBさんの事が気になっていました。
     
    「お疲れ様です。今日も暑いですね〜、回収金、お願いします」
    「お疲れ様です。かしこまりました。本当に暑いですね。そろそろ梅雨明けでしょうか」
     
    仕事の会話にちょっとした挨拶を入れるだけで、お互いとても嬉しく、そのほんの些細なやりとりを大切にしていました。
     
    Bさんの同僚は「窓口のA子さん、可愛いよね。いい雰囲気じゃん。誘っちゃいなよ」
    「いやいや〜、あんなに可愛いんだもの、彼氏とか居るかもしれないし」
    「でも、Bと話してる時、恋する女の子の目だったよ。連絡先とか渡してみなよ」
    「いいんだ、今はこのままで」
    「そうなんだ」と、同僚はつまらなそうでした。
     
    A子さんの職場でも、Bさんの事はちょっとした話題になっていました。
    「某文具のBさんって、絶対、A子に気が有るよね。順番でA子の時はすごく嬉しそうだけど、他の子だと本当、残念そうな顔するんだよね。本人気付いて無いかもだけど」
    「そんな事ないよ〜、仕事の事位しか、話して無いし」
    笑って誤魔化しましたが、何となくBさんの好意は伝わっていました。
     
    (でも)。
    と、A子さんは思いました。
    もし、個人的なお付き合いが進んで、万が一、別れる事にでもなったら、今みたいに楽しく話す事も、姿を見掛ける事も無くなってしまうかもしれない。
    (それは嫌だな…)。ならば、ずっとこのままでいい…と思うのでした。
     
    Bさんも実は同じ思いでした。A子さんの事は、少しずつ会話を重ねるにつれ、人柄にも魅かれていきましたが、過去に手痛い失恋をしており、同じ思いをするのは嫌だとつくづく感じていました。
     
    A子さんとBさんは、お互い好意を持っているのに、それ以上の関係になる事は有りませんでした。
     
    C先の事は解らない。
     
    別れる事ばかり気にしていたら、恋愛のそれぞれの段階の楽しみも、味わう事は出来ません。先の事は解らないのです。みすみす目の前の恋を逃がしてしまっては勿体ないですよね。
    マイナス思考全開で、殻に閉じこもって自分を守るより、少々傷ついたとしても、自分をオーブンにして、気持ちに正直になって、恋愛を楽しみたいですよね。
     
    D後悔しない為にも全力で。
     
    もしかしたら、この恋はやがて終わってしまうかもしれません。でも、恋愛期間中は「終わるかも」なんていう、マイナス思考病は封印して、現在進行形の恋を楽しみたいですよね。思いっきり相手の事を想い、自分も想われたいですよね。
     
    感情の出し惜しみをせず、素直に気持ちをぶつけてみましょう。終わる事の無い、情熱的で素敵な夏の恋が始まるかもしれません。
     
    「夏草の向こうで恋が待っている」