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★電脳歌人ミコトの恋の覚書 その40★逢瀬の過失…大高 翔

  • 2014年07月21日  菱月 美琴  



    この恋は間違っている…って頭で解っていても、止められなかったり溺れてしまったりって、よくある事です。特に夏場は魅力的でスリリングな恋があちこちに。危険な香りのする人には、昔も今も異性が引き寄せられてゆきます。そんな恋をどうすれば自分にとってプラスに出来るのでしょうか。大高翔(おおたか しょう)さんの俳句にヒントがあるかもしれません。
     
     
    「逢ふことも過失のひとつ薄暑光」
    (引用:大高翔著『キリトリセン』より)
     
     
    @この俳句、こう読みます。
     
    読み方は「あうことも かしつのひとつ はくしょこう」です。
    季語は「薄暑」。
     
    様々なシチュエーションが有りそうな俳句です。
    例えば、初夏の昼下がり、喫茶店で冷たいものを飲みながら、女が男を待っています。窓の外は汗ばむほどの陽気。木々の葉や噴水の水しぶきがキラキラ光っています。
    女は徒然に、思いを巡らします。今まで生きて来た中での過ちや罪について。そしてこの逢引は、数々の過失のうちの一つであるとぼんやり思います。解っていながらも、逢わずにはいられない、どうしようもなさ。何となく危険な恋の香りがしますね。
     
    A大高 翔(おおたか しょう)さんの事。
     
    昭和52年生まれの女流俳人です。「藍花俳句会」主宰の母親の勧めで作句を始めます。十代で第一句集『ひとりの聖域』を上梓。平成12年から4年間「俳句王国」(NHK)の司会を務めたり、俳句の選者としても活躍、子供達への俳句指導にも力を注いでいます。
     
    B結婚しない男。
     
    薬品会社OLのA子さん(23歳)は、仕事帰りに油絵を習っていました。先生は地元では有名な画家で、A子さんよりふたまわり上の年齢、白髪混じりの髪が素敵な大人の男性でした。
    A子さんは先生の絵のファンでしたが、段々と人柄にも魅かれていきました。
     
    ある日、先生はA子さんの絵に筆を入れつつ、耳元で、
    「君、横顔がきれいだね。今度、私のモデルをしてくれないかな」と言いました。
    A子さんは有頂天になりました。
    週末、A子さんは先生のアトリエにいました。椅子に座りモデルを務めました。
    先生の眼差しを一身に感じ、心臓はドキドキ高鳴りました。
    「…さあ、出来た」
    先生が描いた絵は、とても素敵な女性でした。
    「ほら、君だよ。君は佇まいにとても雰囲気がある」
    A子さんはうっとりと絵を見つめました。そして、あっけなく恋に落ちてしまったのです。
    その夜はそのまま、先生のアトリエに泊まりました。
     
    翌朝、携帯の鳴る音で目が覚めました。
    婚約者のBからでした。A子さんは慌てましたが、隣にいた先生は動じる事もなく、煙草をふかしていました。
    「私、婚約しているんです」
    「そうなの。いいじゃない」
    「え…、先生が別れろというなら、私、彼と別れます」
    「何で、別れなくてもいいじゃない。こうしてこれからも逢えるなら」
    A子さんは驚いて先生を見つめましたが、先生は淡々と変わらず煙草を吸っていました。
     
    それから、A子さんの秘密の恋が始まりました。
    先生の「恋人」は、何人もいました。
    アトリエには若い女の絵が段々と増えていきました。隣の倉庫には女の絵ばかり溢れていました。
    「皆、こういう関係なんですか」
    「まあ、そうかな」
    「結婚、しないんですか? 私、彼と結婚してもいいんですか?」
    「私は、結婚、しない」
    先生はきっぱりと言いました。
     
    先生が描いてくれたA子さんの絵は、あまりにも綺麗で何だか泣けてきました。
    窓の外は初夏の木漏れ日がさらさらと美しく、しばらくはここから離れられないだろう…と、A子さんは思うのでした。
     
    C悪いと解っていても止められない。
     
    人間生きて行くうちには、いくつもの過ちや罪を背負ってしまうものです。特に恋愛に於いて、背徳は蜜の味。イケナイ恋には溺れやすく、頭では悪いと解っていても、止められない中毒性があります。「ひと夏の恋」という、刹那な関係も同じ。ゆらゆらと妖しく、私達を誘います。
     
    Dちょっと待って! 自分を大切に。
     
    でも、その恋で自分自身を犠牲にしていませんか? 割り切って過去にしてしまえるような関係なら良いのですが、そこから何年も報われない恋に身を置くリスクは計り知れません。「花の色はうつりにけりな」、です。
     
    その恋が「過ち」であるなら、遊びと割り切り、綺麗な思い出になる位の深度と距離感で、さっさと過去ボックスに格納してしまいましょう。想い出として眺めるだけなら、色とりどりの恋は、人生のよい経験値になりますよね。
     
    「絵の中の恋人たちへ薄暑光」