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★電脳歌人ミコトの恋の覚書 その42★蠅女の魅力…津沢マサ子

  • 2014年07月28日  菱月 美琴  



    自分を卑下し過ぎたり、自虐的だったり、そんな異性がいたら、ちょっとひきますよね。
    恋人の対象からは無意識に外してしまっているかも。
    でも、そういう人達を深堀りしてみると、隠れている別の一面が見えて来る事も。純粋な傷付き易い人だったり、過去に辛い経験をした善良な人だったり。
    「恋人候補リスト」から漏れてしまっているかもしれない、「原石」な人達について、考えてみたいと思います。
     
     
    「恋人よ広野のわれは黒き蠅」
    (引用:津沢マサ子著『楕円の昼』より)
     
     
    @この俳句、こう読みます。
     
    読み方は「こいびとよ こうやのわれは くろきはえ」です。
    季語は「蠅」で夏。
     
    上の句で恋人に呼びかけ、中の句で広々と殺風景な広野が現れ、下の句で黒づくめの小柄な女性が浮かんできます。自分を「黒き蠅」と言い切っているあたり、随分自虐的だな、と思うのと同時に、きっぱりとした潔さも感じ取れ、大好きな俳句です。
    黒蠅は汚物に集まり、卵を産み付け蛆として暮らし、やがて成虫になります。病気を媒介したり、うるさく纏わりつく様子から、嫌われる生き物の一つです。それなのに敢えて自分を蠅に喩えているのが、「私は蠅のような存在かもしれないけれど、好きでいてくれるの?」という、切実なメッセージとも受け取れます。
     
    A津沢 マサ子さんの事。
     
    昭和2年生まれの女流俳人です。平家の落人の末裔だそうです。西東三鬼等に俳句を学びました。40歳の時『俳句評論』へ入り、高柳重信に師事しました。幻想的で前衛的な俳句にファンも多く、様々な賞を受賞しています。
     
    B媚びない女。
     
    セキュリティ会社の営業事務、二階堂ふみ似のA子さん(23)。小柄で可愛い顔立ちでしたが、男っ気はまるでなし。私服はモノトーンを好み、お化粧は寒色系、愛想笑いをする事もなく、いつも必要最小限の会話しかしない、若い女子社員の中では何となく浮いた存在でした。
     
    そんなA子さんの事が気になる、営業のBさん(25)。職場の飲み会の時に、思い切ってA子さんの隣に座ってみました。…が、お酒が進んでも、会話は弾まず。周りを気にする風でもなく、黙々とお酒を飲むA子さん。長めの黒髪が横顔にかかり、頬は少し紅潮し、より可愛らしく見えました。
    Bさんはお酒の力を借りて、思い切ってA子さんにこう切り出しました。
    「A子さんって、休みの日、何してるの?」
    「ほとんど家にいて、本読んだり、テレビ見たり、DVD観たりしています」
    「DVDって、何観たりしてるの?」
    「フランス映画が好きなんですよー、そういうのとか」
    「そうなんだ、じゃあ、今度、映画観に行こうよ」
    「…そうですねぇ〜」イエスとも、ただの受け流しとも取れる口調で、A子さんはこたえました。
    イマイチ、二人の会話はかみ合いませんでしたが、Bさんは一応、自分は好意がある、という事を伝えたつもりでした。
     
    数日後、Bさんはミニシアター系の映画館で、古いフランス映画が上映されると聞き、チケットを手に入れました。そして速攻A子さんに渡しました。
    「あ、これ、観たかったんです」
    週末、二人はデートする事になりました。
     
    待ち合わせ場所に、案の定、A子さんは黒づくめでやってきました。
    大きな目で、じっとこちらを見るので、Bさんは一瞬たじろぎましたが、ひと呼吸おいてA子さんと並んで歩きました。
     
    映画を観て、お茶して、街を二人でブラブラして、食事をして、夜、A子さんを自宅に送り届けました。長い時間一緒に居てみると、ごくごく普通の女の子だという事が解りました。
    …というより、傷付き易い臆病な子で、黒づくめの服やメイクで無意識に武装していたという事が解りました。
     
    Bさんは別れ際に思い切って言いました。「よかったら、正式に付き合って下さい」
    すると、A子さんはやや驚いた顔で、
    「私、こんなんですけど、それでもいいんですか?」
    「うん、そのままでいいよ。…って、そのままでいて下さい」
    A子さんの顔は緊張が解け、普通の女の子らしい笑顔になりました。
     
    C外見だけに惑わされない。
     
    自分に自信が持てず、殻に閉じこもっている人って意外と沢山居ますよね。何となく話しかけ辛い雰囲気を醸し出したりしていますが、お互い心を開いてじっくり話を聞いてみると、不器用で傷付き易いピュアな人だったりします。信頼関係を築けたなら、純粋な愛情で尽してくれるでしょう。
     
    D本当の姿を見てみよう。
     
    何となく地味で見過ごしてしまっている異性の中に、宝石の原石が隠れているかもしれません。目を凝らして周りをよく見て、気になる人が居たら、一対一でじっくり話し合ってみましょう。
    ごく身近な所に運命の人が、ひょっこり隠れているかもしれません。
     
    「風景の一つ花には花の蠅」