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★電脳歌人ミコトの恋の覚書 その47★やさしい別れ…俵万智A

  • 2014年08月14日  菱月 美琴  



    出会って、恋に落ち、やがて来るかもしれない「別れ」。
    心が離れてしまったから…だけとは限りませんよね。愛するがゆえに別れを選ぶ…等々も、ままある事です。
    辛い「別れ」をどの様に捉え、乗り越えて行ったらよいのか、大好きな俵万智さんの歌を見て行きつつ、考えてみたいと思います。
     
     
    「寄せ返す波のしぐさの優しさにいつ言われてもいいさようなら」
    (引用:俵 万智著『サラダ記念日』より)
     
     
    @この短歌、こう読みます。
     
    読み方は、「よせかえす なみのしぐさの やさしさに いついわれても いいさようなら」です。
     
    様々なシチュエーションが浮かぶ歌です。たとえば、道ならぬ恋をしている若い女性が、ひとり海を眺めています。静かに穏やかに波が寄せ返す様を見ていて、恋人の事を思います。もし、彼が別れたいと言ったのなら、いつでも身を引こうと考えます。何故なら彼の事がとても好きで、自分よりも彼に幸せでいて欲しいから…という感じでしょうか。
    でも、ここで「波のしぐさ」と言う、言葉が引っ掛かります。想像力を逞しくすると、これは「性愛」の歌なのでは? とも思えて来ます。
    どちらにしろ、作者は恋人をこの上なく愛していて、ゆえに「いつ言われてもいいさようなら」なのだと理解できます。
    イメージに奥行きがあって、流れるようなリズムが綺麗な、大好きな歌です。
     
    A書き続ける強さ。
     
    俵万智さんの『サラダ記念日』を手に取ったのは高校生の時でした。
    読みやすくハッとさせられる表現の数々に、とても共感した事を覚えています。
    その後も折にふれて短歌雑誌や書籍等で俵万智さんの書いたものは読んで来ました。不倫の短歌も数多く発表、綺麗事だけでは済まされない、実感の籠った恋愛短歌は凄味がありました。
    俵万智さんは、実生活ではシングルマザーとして男の子を出産、東日本大震災の時、仙台から石垣島へ引っ越しを決意します。「子を連れて西へ西へと逃げてゆく愚かな母と言うならば言え」この短歌は賛否両論、議論を呼びました。
    短歌として発表すると(小説やその他文芸より)、イコール実生活と見られてしまいがちです。非難を受ける事も覚悟して書き続けている潔さと、強さが際立っていますね。
     
    B好きだから別れる。
     
    広告代理店勤務のA子さん(35)は、アルバイトの大学生、Bさん(21)とこの夏、一線を越えてしまいました。
    小学校の教師をしている夫との間に子供はありませんでしたが、学生時代からの付き合いで、恋愛感情と言うより肉親に近い感情で、離婚する事は考えられませんでした。
    また、Bさんはまだ若く将来も有る為、自分との関係で縛っておく事は望みませんでした。
     
    それでも気持ちは、日に日にBさんへのめり込んで行きました。
    Bさんもそれは同じで、二人でいる時間が少しでも長くなればいいと考える様になりました。
    「俺、大学辞めて働くから、ダンナさんと別れてくれないかな」
    「だめだよ。ちゃんと勉強しておかなきゃ。…それに、B君にはもっといい人が現れるよ」
    「いや、俺はA子さんがいいんだよ」
    「困らせないでよ」
    そう言いながら、A子さんは内心嬉しくて泣きそうでした。反面、Bさんを好きになればなる程、どこかで終わらせなければならない、と思うようになりました。
     
    夏も終わり、涼しさも感じられるようになった頃、A子さんはBさんにこう切り出しました。「私ね、転勤受ける事にしたんだ」
    「えっ、どこへ?」
    「新潟」
    「えっ、遠いよ」
    「だから、もう、終わりね。この先、逢わない」
    「本気なの?」
    「うん」
    A子さんはBさんの顔を直視出来ませんでした。感情が顔に出ないように必死で堪えて、その場を立ち去りました。
    何も知らないアルバイトの女の子達が、にこやかに通り過ぎました。
    (若くて綺麗な子が世の中には沢山いる。彼が26の時、私は40歳…。年齢差は永遠に縮まらない。いつか、彼の気持ちが離れて行ってしまったら、私は耐えられないだろう)。
     
    Bさんは、そんなA子さんの気持ちを知る由もなく、ただ茫然と後ろ姿を見送りました。
     
    C別れの理由は様々。
     
    嫌いになったり、他に好きな人が出来て恋人と別れる…というのが一般的かもしれませんが、中には心の底から好きでも、相手の事を考えたり、将来を考えたりして、その時点でのベストな選択として、別れを選ぶ人も居ます。別れの理由は多種多様です。
     
    D後悔しない恋。
     
    その時やむなく別れを選んだとしても、その恋によって大きく成長出来たり、大切な思い出として刻まれる経験だったならば、とても素敵ですよね。
    全身全霊で恋をしたなら、別れを一区切りとして、さらに素晴らしい恋が出来るかもしれません。
    「さようなら」がいつ来てもいいように、全力で後悔しない恋をしたいですよね。
     
    「夏の海やさしい君へさようなら」