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★電脳歌人ミコトの恋の覚書 その48★手花火と口づけ…黛まどか

  • 2014年08月18日  菱月 美琴  



    初恋をずるずる引き摺って、なかなか大人の恋に踏み出せないって事、有りますよね。十代のキラキラした思い出は、時に眩し過ぎて、次に来るべき恋の妨げになる事も。思い出は思い出として線引きをして、今現在の等身大の恋を手に入れたいですよね。
    今回は、心のどこかで未だくすぶっているかもしれない、「初恋」の終わらせ方について、考えてみたいと思います。
     
     
    「手花火をして口づけをまだ知らず」
    (引用:黛まどか著『B面の夏』より)
     
    @この俳句、こう読みます。
     
    読み方は「てはなびを して くちづけを まだしらず」です。
     
    季語は「花火」です。登場人物が一人なのか二人なのかで解釈が違って来そうですが、私は「十代の男女二人」でイメージしてみました。
    恋人か恋人未満の二人が、夏休みの夜に花火をしています。「手花火」と言うと、ぐっと二人の距離は縮まりますが、まだくちづけをしていません。パチパチと燃える七色の花火がお互いの顔を照らして、とても綺麗に見えます…と、そんな感じでしょうか。
    初恋のドキドキと、きらきらした感じが詰まっている作品ですね。
     
    A黛 まどか(まゆずみ まどか)さんの事。
     
    昭和37年、神奈川県出身の女流俳人です。フェリス女学院短期大学を卒業後、銀行員として働く傍ら、杉田久女(すぎたひさじょ)を知り、俳句の道へ。平成2年、俳句結社の『河』に入会、吉田鴻司氏に師事します。平成6年「B面の夏」が、第40回角川俳句賞の奨励賞受賞。
    現在は京都橘大学の客員教授であり、俳句のみならず「国立新美術館」の評議員や「日本再発見塾」の呼びかけ人代表等、数々の文化的活動にも力を注いでいらっしゃいます。
     
    B夏休みの想い出。
     
    A子さん(24)は、お盆休みに実家の長野へ帰省していました。10年ぶりに中学時代の同級会が開かれるという事で、とても楽しみにしていました。
    A子さんは中学二年の夏、初めてBさんという同級生の彼氏が出来ました。一緒にプールへ行ったり、映画を観たり、内緒で夜祭りに行ったりと、全てが初めてでドキドキの連続だった事を覚えています。結局、長くは続かず、些細な事で喧嘩別れして、プラトニックな関係のまま、夏休みが終わる頃には自然消滅してしまったのですが。
    会話を交わすことなく三年生になり、高校は別々、それっきりBさんとは会わずじまいでした。
    (彼、どんな風になっているかな)
    思い出が綺麗過ぎる為、会いたいような、会いたくないような複雑な気持ちもありました。
     
    当日夜。イタリアンのお店を貸切にして、同級会は始まりました。仲良しだった友達とはすぐに打ち解け、当時の話で盛り上がりました。
    入口あたりをちらちら気にしていると、Bさんが現れました。
    体つきはがっしりしていて、当時の華奢なイメージとは随分違っていましたが、端正な顔立ちと短髪がとても素敵で、面影はそのままでした。
     
    お酒が進み、Bさんと話す機会が出来ました。
    「変わらないね〜、でももっと綺麗になったかな」
    「そんな、B君だって素敵になっちゃって」
    「俺さ、去年結婚したんだ。冬には父親になるんだ」
    「そうなの。おめでとう」
    「で、あの時言えなかった事が気になっていて」
    「え、何?」
    「“ありがとう”って」
    「こっちこそ。そんな、ありがとう」
     
    中二の夏、さよならが言えずに終わった恋でしたが、思い出すのは二人で過ごした夏の日々の事、キラキラした思い出ばかり。Bさんも同じく初恋の思い出として、大切にしてくれていたんだと思いました。
    A子さんはやっとひとつ恋を終えて、次に踏み出せる気がしていました。
     
    Cプラトニックな恋こそ怖い。
     
    プラトニックな関係のまま終わった恋って、実は一番後を引き摺るのです。特に初恋や十代の恋は要注意。無意識に当時の高揚感や、彼の面影を追い求めてしまいがち。幻想や妄想も加味されて、実際の生身の彼ではなく、数段理想の王子様になってしまっている為、次の恋が色褪せて見えてしまう事も。意識的に区切りを付けないと、なかなか前へは進めません。
     
    D「初恋ごっこ」を楽しもう。
     
    そんな感情を逆手に取り、初恋のシチュエーションを楽しむという方法もあります。
    二人で浴衣を着て夜祭に行きそのまま帰るとか、プールに行き夕方にはさよならするとか…プラスお泊りをあえて避けて、プラトニックな関係を楽しんでみては。初恋のドキドキ感やきらきらした感覚を想い出し、二人の関係を大切にするきっかけになるかもしれません。
    現在進行形の恋を、楽しみたいですよね。
     
    「初恋のひとと歩けば遠花火」