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《おばあちゃんの恋袋 第一話》イイ男・今昔物語 Part T

  • 2013年10月29日  吉井 綾乃  



    今は昔、今は昔と言うけれど、

    神代の昔から色恋だけは人間様の性。

    今も昔も恋心に大差はない、らしい...

     

    今朝のテレビの情報番組を見ていたら“可愛らしいと感じる女の子のしぐさ”のアンケートの第一位は男性の洋服の裾をちょんちょんと引く。

    第二位が猫手で眼をこする。第三位が寒い時にセーターの袖口で手を半分ぐらい覆う。

    だって。あほかいな。

    チャンチャラ可笑しいわいと思いながら聞いていたけど、フムフム待てよ。

    あんまり昔で忘れていたけど昔だって可愛い女の子の可愛らしいしぐさは、同じようなもの。定番とまではいかないものの似たり寄ったり。

    同じ番組で“貴女が思わず胸キュンした時”と言う街頭インタビューもあったけど、その答えもおばあちゃんが若かりし頃の女性達の反応とそうそう変わらない。確かに大差はないのね。

     

    そうよ。胸キュン時代がはるか昔で忘れていたけど、恋の病に冒されて食事も摂れなかった、なんてこともあったわ。なんて懐かしい!

     

    さてさて、恋は異なもの味なものとは良く云ったものだわ。

    だから今も昔も恋話のネタは尽きない。大人の恋、老いらくの恋、その中でも若い人たちの色恋話は可愛らしく微笑ましいわ。

    浮気の話だってなんだかちょっとチャーミング。思わず背中を押して応援したくなる。

    浮気の応援じゃないわよ。

     

    だけど今どきの女性から見たイイ男ってどんな感じのおの子なのかな?

    おばあちゃんの目から見ると、今どきはこざっぱりして線が細くてキレイな印象のおの子が多いなって感じだわね。これは見ための話。

    只、イイ男と呼べるかって聞かれたら悩むところね。

    今も昔もセクシーなおの子はいるけど、イイ男とセクシーなおの子は別物だとおばあちゃんは思うのよ。

    だから今どきのおの子は、今どき女子の目にはどう映っているのかとっても興味深いわ。

     

    昔昔の恋話にはね、あれはイイ男だった、と思わせる男の話が結構あるけど今どき女子は興味あるかしら。

    時代背景も状況も今と全然違うから、なるほどイイ男だねって思ってもらえる自信はあまり無いけれど恋話としては上等よ。

     

    残念ながらおばあちゃんの思い人じゃないけれど。

     

    今から遡ること20数年前、昭和40年代の後半。東京は目黒の権之助坂のスマートボールと呼ばれていた遊技場でのお話。

     

    今では温泉場の壊れそうな遊技場位でしか見ることのなくなったスマートボールのことを知っている若い人はいないでしょうね。

    どんな風に説明したらいいかしら。パチンコ台の穴を大きくしてバネ仕掛けのキューでボールをはじき台の穴を埋めて景品をゲットするというゲーム、こんなところかな。

     

    スマートボールのことはさておき、おばあちゃんはと言うとまだ学生で、そこで働く友達夫婦に人がいないからと誘われて賃金もいいし、仕事も楽そうだしそんな軽い気持ちでアルバイト中でした。

     

    そこはパチンコ店・昔はトルコ風呂と呼ばれたソープランドなども一緒に経営していて、店々で働く従業員のための寮が夫婦用と独り者用とあり、ずいぶん至れり尽くせり

    なんだなと感心したけどこれには理由があったのよ。

    そこで働く従業員の殆どが訳ありで、着の身着のままその日から働かせて下さいとか、人妻と駆け落ちして名前も変え、いつでも追手から逃げられるように身構えている人とか。寮はそんな人たちの隠れ家の役割をかねていたみたいね。

    身元調べもなし,もちろん履歴書なんて必要なし。

     

    若かったおばあちゃんにとっては見るもの聞くもの刺激的で興味津津。

    自分は通いのアルバイトだったけど寮に住む友達夫婦のところに入り浸って社会勉強に勤しんでいたという次第。

     

    おばちゃんの持ち場のスマートボールは若い女の子が多く、男性は二人。

    一人は27,8歳位かだったのかな。その頃おばあちゃんは19歳ぐらいだから27、8でもおじさんに思えたけど、その店で一番の別嬪さんが彼に恋しているのは一目瞭然。周囲も皆気が付いていたと思う。

    でもおばあちゃんの目から見ると只背が高いだけのおじさんなので美人の彼女には相応しくないと感じていたかな。

    そしておばあちゃんが働き始めて程なく又訳あり女子が登場します。

    さあここからがドラマの始まり。

     

    彼女は20歳。幼いころ小児麻痺を患いそのせいで軽く足を引きずる。急ぎ足の時は杖を使うし体を上下に揺らして歩く。

    その彼女に今度は彼が恋をした。一目ぼれだったらしい。

    彼が毎日毎日彼女の送り迎えをするようになり、自分の非番の日でも彼女の勤務時間に合わせてやってくる。

    三人とも寮住まいで男と女の寮は別々だったけど、さすがにこれじゃ美人さんも気が付いて彼女につらくあたったりしていたある日、とうとう美人さんが彼を呼びだし実力行使に出た。肉弾戦術だったらしいわ。

     

    昔から“据え膳は食わぬは何とやら”と言うわよね。ところが彼は食べなかった。

    それどころか美人さんの思いに答えてあげることは出来ない、傷つける結果になって申し訳ないと土下座までしたそうよ。

     

    そのあともカッコよかった。彼女の訳ありと自分の訳ありを彼女の為に一つずつ解決して結婚までこぎつけたのだから。

    流石に若き日のおばあさんにも格好良く見えましたよ。訳ありも相当のものだったしね。

     

    ずいぶん長くなってしまった。訳ありのお話もしたかったけど時間切れだわ。

     

    今も昔も愛する人を守れるのがイイ男の条件だと思うのだけれど、今どきのおの子は守るより守ってもらうのを待っているように見えるのは、おばあちゃんの視力が落ちたせいかしらね。