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《おばあちゃんの恋袋 第三十六話》恋の始まり 〜鬱陶しい?〜

  • 2014年07月07日  吉井 綾乃  



    沖縄は梅雨明け宣言が出されたと思うが・・。いやはやなんとも毎日が鬱陶(うっとう)しい。北から南へと長〜い日本列島の事、全国的な梅雨明けにはまだ少し時間がかかりそうだ。

    青春の雄叫びの様な熱い夏は、お若い方々にピッタリの季節だ。夏本番を今か今かと待っているお若い方々も多いことだろう。

    けれども、照りつける夏の太陽や蝉の声をこころ待ちにしているのは若い衆ばかりとは限らない。心をふさいでしまう様な鬱陶しい梅雨空は、老いてしぼんだ心には酷なものだ。だから、一日でも早く輝く太陽やうるさいほどの蝉の声で発破をかけてもらいたいと願っている年寄りもいるのだ。夏は年寄りにも活力をもたらしてくれる。

    この梅雨空の様な鬱陶しさは愛や恋にも大きな影響力を持っていることだろう。たぶんに、鬱陶しさが忍び寄ると愛や恋は成立できなくなるのでは、と思う。

     

    今は昔、まだ初々しい学生時代のこと。同じゼミに、A子とB子二人の仲間がおりましたとさ。今日はA子とB子、二人の恋のお話よ。

     

    おばあちゃんの学生時代はアルバイトにばかり精を出していたので、ゼミに顔をだすことはあまりなかったのだけれど、お気に入りの教授のそのゼミへの出席率はとても高いものだったわ。

    もともと少人数のゼミだけれど、女子学生は特に少なかったので自然に親密で仲良しグループが出来上がっていたわ。とくにA子とB子の二人はゼミを取る前からの友達同士らしく、何をするのも一緒の仲良しさん。俗にいう連れション、トイレまで一緒に行く仲よ。そんな二人は似た者同士とは裏腹に、まるで共通点が見当たらないほど容姿も性格も違っていたわね。

    ただし、身長と髪の長さは二人とも同じぐらいよ。中背で髪は肩までのセミロング。

    A子はけして太ってはいないけれど肉感的で柔らかそうな体つき、眠そうなたれ目とむにゅとした唇が妙になまめかしくて色っぽい女の子。かたやB子は中肉中背の美人さん。でもなぜかとても痩せて見える体つきなので色っぽさとは無縁の女史タイプ。

    同じセミロングの髪も、A子は髪の毛の色も肌の色も色素が薄く、染めてもいないのに茶髪でくせ毛。B子は漆黒のストレートヘアーよ。とても堅いの。デッキブラシの様な髪の毛ね。

     

    見かけの違いは性格にも現れていて、キャピキャピと今どきのギャルみたいに元気で積極的で何にでも首を突っ込みたがるのがA子。一方B子は、笑顔は見せても笑い声など滅多に耳にできないほど、もの静かな女の子。静かすぎてあまりに目立たないので、B子が相当な美人さんだと気づくのに殆どの人が、暫く時間がかかったわ。

    傍から見ていると何が二人を結びつけているのかまるで理解できなかったけれど、とにかく大の仲良しさんだったのは確かよ。

     

    そんな二人から前後して相談を持ちかけられたのは些かびっくりさせられたけれど・・。

    当時から偉そうで物知り顔をしていたおばあちゃんは相談役に打って付け、というより、どこのグループにも属さないおばあちゃんに話しても他に話が漏れる心配がない安心感のせいだったのでしょうけれどね。ま、態度も身体も大きいのでその安心感もあったかしら。

     

    二人の話を要約すると、最初にB子がある男性から交際を申し込まれたということ。そして

    当然の様に一番の親友であるA子に報告をした。ところがその頃から二人の関係がギクシャクしてしまった。どうしたらいいのだろうか?かいつまんで話せば、この程度に短く済ますこともできるのだけれど、内容は少しハードなのよ。

     

    B子曰く『男の子から交際を申し込まれたのは初めてではないが、今まで男性とお付き合いしたことは無い。交際を申し込んでくれた彼に魅力は感じているが、いざ付き合うとなると不安でA子に助け船を求めたが彼女がその頃からいつもの彼女らしさがまるでなくなり、自分を避けているように感じる。彼女が快く思っていないのなら、彼に惹かれてはいるけれど交際の申しでは断ろうかと悩んでいる。毎日がつらい』

    A子曰く『私はいけない恋をしてしまった。B子に交際を申し込んだ彼に一目ぼれしてしまった。B子の顔を見る度に恋がたきなのだという遣る瀬ない想いと嫉妬心で胸が張り裂けそうだ。毎日がつらい』

    う〜ん・・。二人に共通しているのは毎日がつらいこと。話を聞いたこちらもつらい、ではなく重い。鬱陶しい事この上ないわ。

     

    二人にそれぞれ尋ねてみたのよ。「胸に手を宛ててじっくり考えてみて。その男性のことを思ってつらいのか、彼が本当に好きなのか」って。二人とも答えは「???」

    B子の答えは最初から判っていたわ。彼女はA子の変化に心を痛めていたのよ。けして恋に苦しんでいるわけじゃないのですものね。

    問題はA子だけれど、おばあちゃんの質問に『彼が好きだ』と即答出来なかったところを見ると彼女の恋心もあやしいわ。あくまでも、これはおばあちゃんの想像だけれど、親友のB子を奪われる事への抵抗や複雑な心境が彼への恋心にすり変わたのじゃないかしら。本当のところはわからないけれどもね。

     

    自分の本当の気持ちを知らなければ恋は始まらないわ。それに恋の始まりが鬱陶しい気持ちになるなんてありえないわ。恋の始まりがつらいなんて問題外だと思うのよ。恋の日々を重ねていけば、つらい思いに悩むことも出てくるだろうけれど、恋の始まりは何時だって幸せで心浮き立つものだわよね。