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《おばあちゃんの恋袋 第九話》恋文 〜あなたの愛を伝える方法〜

  • 2013年12月24日  吉井 綾乃  



    いにしえの昔から恋する老若男女が胸の奥の滾る思いをしたためた愛の文言、例えば我が国ならば古くは万葉集の中の相聞歌に始まり そして現代の歌唄いの奏でる愛の歌まで、数えきれないほどの恋の文言。

    また世界に目をやれば名だたる英雄や文豪が書きのこした書簡や作品の中にも きら星の如くに踊る愛の言葉。

    “げに恋こそはまことのいのちである”

    古今東西、老若男女。 げに人間の恋ごころはとどまるところを知らないまるで命の発露だ、と思う。

     

    ところで今どき女子やおの子は恋した彼女や彼を思って歌を詠んだり、詞や物語を書いてみたりするのかしら?

    お恥ずかしい話だけど、おばあちゃんは今でこそ少しばかり歌を詠んだりするけれど 若い頃は専ら実践(?)のみでlove letterさえ書いたことがないのよ。

    おっと訂正。 18歳の時に一度、出来れば消しゴムでゴシゴシと消してしまいたい駄文を書いたことがあったわ。 おばあちゃんとしては、それって内容も気持ちもとてもLove letterとは呼びがたいしろものだから これは言明を避けたい気持ちで一杯。

    あともう一度だけ、オン歳33年の時に恋文と呼べる程度の手紙をしたためたことがあるにはあるわ。 だけどこれはオフレコ。秘密(ひめごと)なの。誰にでも内緒にしておきたいことはあるものですものね。

     

    さて恋ごころ。 どんな人でも恋に堕ちたら、恋している彼女や彼に思いの丈を伝いたいと願うものじゃないかしら。 ちょっと自分に置き換えて考えてみてね。 皆だって相手の殿方や女性に“あなたが好きです、夢中です”って知って欲しいと思うでしょう?

    心に秘めた恋が好きな人も中には居るだろうけれど殆どの人は思いを伝いたいと願うものじゃないかしらね。 そんな時今どき女子やおの子はどんな手段を取るのかしら。 愛の告白は今も昔も恋する者にとっては一番の大事なイベントですもの。

     

    今は おばあちゃんが若かった時とは違って携帯電話と言う文明の利器があるからシタタメルなんて死語かもしれないわね。 でもそんな便利な世の中だからかえって愛の告白を手紙にしたためたり、(うた)に詠ったり出来たら素敵じゃないかしらと思うのよ。

    それって今はシンガーソングライターの専売特許みたいになっているけれど、おばあちゃんが思うに 恋する彼や彼女の気持ちを相手に伝えるのには一番いい方法じゃないかしら。この方法ならきっと相手の心に届くわ。だって知らず知らずに気持ちがこもる筈ですもの。

    今更だけど、おばあちゃんも若かりし頃の自分にお勧めしてあげたいと思う程よ。

     

    昔から英雄色を好むと言われて いの一番に名前が挙がる女好きで有名なナポレオンも実は恋文の名手だったらしいわよ。 婚約者や二人の妻、恋人に送った膨大な書簡が残されているもの。 それと話が少しそれるけど武将の中の武将といわれた武田信玄がのちの武田家の重臣高坂弾正で「甲陽軍鑑」の著者である春日源助にあてた珍しいラブレターも残っているわよ。

     

    おばあちゃんも長じてから色々知ったのだけれど、とっても素敵な恋文や面白い(?)恋文が目白押し。

    これから愛の告白をしようと思っているかもしれない皆に少しだけここで紹介するわね。

     

    先ずは恋文の名手ナポレオンよ。 ナポレオンは4人の女性に恋文を送っているけれど これは恋人マリー・ヴァレフスカ宛ての一つ。

    ※「私の第一の思いは君のこと、私の何よりの願いは君に再び会うことです。君はまた来てくれるだろう? そうだろう? そう君は私に約束した。来ないなら、鷹が君の方に飛んでいくだろう。(中略) この花束を受けてください。この花束は、われわれを囲む人々の中にあって、われわれの秘密の関係を確立する不思議な糸ともなるものです。

    (中略) 私がわが胸を押さえたら、君は花束に触れて下さい。やさしいマリー、私を愛して下さい。そして君の手が花束から決して離れませんように。」

     

    そして最初の妻ジョゼフィーヌに宛てた一つ

    「私は一日たりと、君を愛さないですごしたことはない。私は一夜たりと、きみをわが腕に抱き締めないですごしたことはない。私は一杯のお茶ですら、私の愛しい人から私を遠ざけている栄光や野心をのろわずして飲んだことはない。」

     

    お次ぎはドイツの詩人ゲーテからシャルロッテ宛て。

    さようなら、千回愛した人。

    ああ、前世では君は私の妹か妻であった。

     

    日本の文豪達も負けてはいないわよ。 日本で一番短いLove letterと言われている太宰治が恋人に宛てた たった一枚の便せんにしたためられた4文字。

    こひしい

     

    そして芥川龍之介が妻に宛てたプロポーズ。

    僕は 文ちゃんが好きです。それだけでよければ 来て下さい。

    どうかしら。 おばあちゃんとしては まだまだたくさん素敵な恋文があるから今どき女子やおの子に知らせてあげたい気持ちで一杯だけれど たぶん全然今どきじゃないと思う人が大半かも・・。

    でもね、どんなに時代が変わっても人の心はそんなに変われるものじゃないわ。 ましてや恋ごころは なおさらよ。 いにしえの人達が残した恋文や詩や歌を知れば皆もそう感じるはずよ。 だからちょっと回り道かもしれないけれど自分の正直な気持ちをシタタメテ 愛の告白をしてみたらどうかしら。