TOP > イククルコラム > 《おばあちゃんの恋袋 第二十七話》奔放な彼女 〜嫌いになれない〜

《おばあちゃんの恋袋 第二十七話》奔放な彼女 〜嫌いになれない〜

  • 2014年05月05日  吉井 綾乃  



    お待ちかね、まさにゴールデンウィークまっただ中。 毎年のことながらこの大型連休が近づくとテレビがこの期間の天気予報を逐一知らせてくれる。 そのせいばかりとも思えないが、テレビの天気予報を目にするたび出かける予定などまるでない身にも拘らず、なぜかそわそわとお尻がどうも落ち着かない。 

    ゴールデンウィークなどまるで関係なく仕事をしている方や、いや寧ろいつもより忙しい思いをされている方も多いはず・・。そんな方々には大変申し訳ないことこの上ないが、毎年この期間は日本列島がふわふわと浮かれ気分だ。

    同じように男と女の恋愛模様でも、ふわふわと浮かれ気分の頃が一番幸せで楽しい時間に違いない、と思う。

     

    さて今日は、おばあちゃんの高校時代の友人の不可解な男心のお話よ。

    上京して、故郷の同級生や知り合いにばったり出会うと言う偶然に何度か遭遇したことがあるのだけど、彼・カメに再会したのも全くの偶然だったわ。

    カメこと亀淵君は高校時代の友人。 一緒のクラスになったことは無かったけれどクラブ活動が一緒でとっても気の合う仲間同士よ。 お互いをあだ名で呼び合うほど仲が良かったのだけれどカメが家庭の事情で進学を諦め就職することになった頃かからちょっとギクシャクして疎遠になっていたの。 だから新宿駅の構内でカメとばったり出会った時は高校卒業以来、7・8年ぶりの再会だったかしら。 でも同級生とは不思議なものね。 何年時間が経っていても、会った瞬間に時間が昔に前戻るのよ。タイムスリップね。その時はお互いに時間がとれなかったので又の再会を約束し合って別れたの。程なくしてカメから「一緒にめしでも食いに行こうや」と連絡が来て又交流復活よ。

     

    高校時代のカメは女性が苦手で女の子にはとても奥手だったのよ。(おばあちゃんは女の子のカテゴリーには入ってなかったらしい)。 でもその頃のカメは社会人としてすっかりスーツの着こなしも様になり好青年になっていたから、それなりに女性とのお付き合いもあるのかと思いきや相も変わらず奥手のままだったわ。

    関連会社に憎からず想っている女性がいるにはいるけれど、彼女はカメの同僚の婚約者。要するに片思いね。でもよくよく聞いてみると同僚と彼女がお付き合いするずーっと以前から彼女に好意を寄せていたらしいわ。 で、それなのにグズグズしていて、いつのまにか積極的な同僚に彼女は奪われた、と言うわけよ。 だめねぇ〜まったく。カメ好みの良妻賢母タイプのとっても素敵な女性だったらしいのに・・。

    カメはちょっと猫背なのが気になるけれど背も高く鼻筋が通りノーブルな顔だちで頭も良いし、まったく女性から嫌われるタイプには当てはまらないのに、どうして自分からアプローチしないのかしら? それは今でも理解できないけれど、おの子でもなかなか自分からアプローチ出来ないと言う人は多いのかもしれないわね。

     

    憎からず想っていた人が人の妻になってしまった頃、カメの会社に中途採用で一人の若い女の子が入社して来たのよ。 どうも彼女は会社関係者のコネで入社して来たらしく、それもあってか当初の彼女に対する心証はすこぶる悪かったみたいね。「一体この女は何様のつもりだ。厚化粧でヘビースモーカー、しかも朝からお酒の匂いがするし、遅刻して来た上に仕事中に居眠りしている。なんて女だ!」と言う感じで憤慨していたものよ。 見かけが派手だし、どう贔屓目に見ても遊び好きの性悪女にしか見えなかったみたいね。実際毎晩のように遊び歩いていた様だし・・。最初は本当にその彼女を嫌っているみたいだったわ。

     

    ところが丁度今頃の季節に催された会社の慰安旅行を境にしてどうも様子が変わって来たのよ。 カメがその彼女に段々惹かれて行ったからなのだと思うわ。

    「なんて女だ!と言うこともなくなり、会社の仲間同士で飲みに行った祭の出来事を教えてくれた時も、飲みつぶれた彼女を送る役目にされ、挙句送る家が解からず自宅に連れて帰りベッドを占領されたとぼやく割には全然腹を立てている様子もなく、きっと優しく親身に介抱したに違いないわ、と思ったものよ。

    そのうち飲み会の後はカメが彼女を送るのが当たり前の様になり、会社の仲間と一度別れてから皆に内緒で別の場所で落ち合う事も当たり前になって行った様ね。 そしていつの間にやら二人は恋仲に、メデタシメデタシと、言いたいけれど、何といっても彼女は奔放な女性。カメ一人に夢中と言う訳ではなく二人の間にはだいぶ温度差がある様にみえたわね。

    ある時など、彼女の部屋を尋ねたら部屋に灯りがともり明らかに人のいる気配がするのに応答がない。カメ以外の男性が一緒にいるに違いないと思った途端、「思わず小石を拾いあげて、二階の彼女の部屋をめがけて投げつけたよ」と自嘲気味に話していたわ。 

     

    おばあちゃんは直接彼女に会ったことがないので彼女が本当はどんな人なのか知らないのだけれど、きっと魅力的な女性なのだろうと言うことだけは解ったわ。それに肝心なのはカメの気持ちですもの。 (惚れた弱みと言われようが何と思われようが、好きだから丸ごと全部受け止めよう)そんなふうにカメは覚悟を決めているのだろうなって感じたわ。

    好きなタイプは良妻賢母の女性だとばかり思っていたのに男心も不可解なものよね。