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《おばあちゃんの恋袋 第二十五話》恋愛計画 〜玉の輿に乗る方法〜

  • 2014年04月21日  吉井 綾乃  



    四月は学生や新社会人などが新たな生活を始める時期。 その四月も半ばを過ぎた。 

    今まさにスタートダッシュで頑張っている方々も多い事だろう。

    そんな方々には大変申し訳ない事だが、年を重ねて迎えた春の一日を終日のたりのたりかなとばかりにうつらうつらと過ごす。 そうして日がな一日ただぼんやりと雑誌やテレビを見て過ごしていると若き日の活力に満ちた春の日が懐かしく思い出される。

    春は青春と同義語。 若いと言うことはそれだけで素晴らしくそして力漲るものに相違ない。だから若いうちに恋も仕事も目いっぱい愉しんで欲しいものだ、と思う。

     

    学校や職場も新学期・新年度の始まりだわ。 年の初めに一年の計を立てる様に四月も心機一転、気持ちも新たに頑張るぞ! なぜかそんな気持ちになるわよね。でも残念なことには、殆どの人は最初の意気込みや計画が頓挫するのが常ね。

    だから計画倒れとは良く耳にする言葉ですものね。 今日のお話は、その逆。 「私は絶対玉の輿に乗るわ」と宣言して、まさに有言実行した女性のお話よ。

     

    昔々の信州の片田舎にとても頭が良くて働き者の女性がおりましたとさ。

    彼女は一回り年の離れたお兄さんと二人兄妹。とっても優秀だったお兄さんは昔の国立一期校の医学部を卒業して、今では立派な博士様。 一家はサラリーマンの父と専業主婦の母の4人家族。 財産もなく、そんなに経済的に裕福な家庭と言うわけではなかったから私立の医学部程の金額ではなかったにしろ、医学部自体お金がかかる学部だからお兄さんが卒業するまでの6年間、ご両親はとても大変だったことでしょうね。 

    そうこうしてやっとの思いで卒業させたであろう息子さんがインターン(今は無い制度)の頃、とある病院の婿養子の話が持ち込まれて、あれよあれよという間に纏まりお婿さんになってしまった・・。小糠三合あったら婿に行くなと言う諺があるぐらいなのに、明治生まれの彼女たちのご両親はどんなお気持ちだったのかしら。

     

    その時、彼女は高校1年生。多感な年頃よね。名字も変わり他所の人になってしまう兄を、苦労をかけた両親を捨てて行く裏切り者と感じてもおかしくは無いわね。

    実際、お兄さんは養子先に絡めとられた様に実家に顔を見せることも段々と少なくなり盆暮れの挨拶に顔を見せるぐらいになってしまったみたいだし・・。

    その頃からだったかしら? 彼女が事あるごとに母親に告げる様になったのは。

    「私はお医者さんとしか結婚しない。必ずお医者さんのお嫁さんになるわ」

    昔々のその頃は、勝ち組でエリートの医者は一種のステータスシンボル。普通の女の子たちから見れば医者の妻は玉の輿だったのよ。

     

    養子先でお嫁さんの尻に敷かれている兄を頼る気は更々なかった彼女は、すでに定年を迎えている父親や病弱な母親を思い進学は諦めていたのだけれど、しっかり者の彼女のことだから後々何があっても困らない様にと手に職をつけることを考えたのでしょうね。松本市内の洋裁の専門学校を選んで入学したの。勿論学費の殆どは彼女が捻出したのよ。本当に頑張りやさんだわねぇ。

    それと松本市を選んだのには別に大きな理由もあったのよ。だって信州大学の医学部は松本市にあるのですもの。

    それから2年間の彼女はアルバイトを掛け持ちし、学校の膨大な課題をこなし、八面六臂の活躍だったわ。若さねぇ〜。 そして無事に専門学校を卒業すると、二十歳の彼女は松本市内のデパートにデザイナー見習いとして就職も決まったのよ。それでも彼女は忘れていなかったわ。彼女が事あるごとに母親に告げていた「私、絶対お医者さんと結婚するわ」の信念と言うか、誓いかしら・・。

    そうなのよ。だからその頃には信州大の医学生が良く行く場所やお店のリサーチはほぼ完璧という具合よ。

     

    彼女がお婿さん候補の彼らの良く行くお店や居酒屋に通う様になって一年近くが経ちそれなりに人脈も出来て、いろいろなサークル活動や催し物にも顔を出す様になった頃のこと。彼女の仕事柄、半ノルマ的にイージーオーダーの紳士服や婦人服の注文を取らなければならないのだけれど、学生にスーツはまだ必要ではないだろと思いながらも、何人かに声をかけると思いがけず3人ものおの子が手を挙げくれて彼女は喜んで採寸に出かけたわ。

    注文をしてくれたおの子たちにお礼等も済ませて、ひと段落ついてヤレヤレと思っていると、わざわざデパートまで出向いて来て売り場で彼女を指名したおの子がいるの。

    それが彼女の運命の人になるB雄さん、その人だったのよ。

    彼女にとっては初対面なのだけれど、B雄さんは彼女を以前から知っていたらしいわ。

    学校祭や音楽会等で彼女を何度も見かけて憎からず思っていたのだけれど、下戸の彼は居酒屋まではたどり着けず、今回のスーツの一件を人づてに聞きつけて意を決してデパートまでやって来たと言うことの様だったわ。 採寸を済ませると、彼女がお礼を伝える間もなく彼が交際を申し込んだのよ。

    突然のことで彼女には戸惑いもあったし、どちらかと言うと見てくれは良い方ではないB雄さんを最初は好きになれるとは思っていなかったらしいわ。

    でもお友達として何度も彼と接するうちに彼の実直で優しい人柄を知るにつれ大好きで大事な人に変わって行ったのよ。 彼も、頭が良くしっかり者で親思いの頑張り屋さんを深く愛したのね。 彼女の誓いは見事に貫かれたと言うことよ。