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《おばあちゃんの恋袋 第二十六話》幸せな彼 〜彼女のお尻は軽い?〜

  • 2014年04月28日  吉井 綾乃  



    「暑さ寒さも彼岸まで」と言うが、そのお彼岸から一カ月余りが経つ。

    たしかに少しずつ少しずつ気温も上がり、外の景色もめっきり春めいて来た。 だが、まだ朝晩は冷え込む時があり冬服のお世話になる事もしばしば・・。 ひと雨ごとに春はゆくが、それでも日がな一日、たっぷりと春を満喫出来る日と言うとそう多くは無い。 なかなかな難しいものだ。

    まさに恋する二人の関係も、然もありなん。 が、お互いを想いやりながら少しずつ少しずつ絆を築いて行けるような二人には、きっと幸せが待っているものだ、と思う。

     

    さてさて今日は、かかぁ殿下で有名な群馬県産まれのキュートで可愛い留美ちゃんのお話。(彼女は二十四話に登場した留美ちゃんと同一人物よ)

     

    昔々、今から50年近く前のこと。日本がまだまだ貧しかった時代。 今の様に高校進学率が100%に近いなど夢のまた夢の頃のお話よ。 でも集団就職や金の卵ともてはやされた年代の方々よりは少し年代が下だった留美ちゃんは当初高校に進学する予定だったのよ。ところが4人兄妹の長女だった留美ちゃん自身が出した答えは就職すること、家の経済状況や妹や弟のことなど、いろいろ考えた結果進学を断念することにしたらしいわ。 親御さんたちがかえって驚いていたそうよ。 そして留美ちゃんは、親御さんが遠い親戚筋のコネを辿り探し出した、東京の小さな会社に就職したの。親御さんにしてみれば、見ず知らずの都会に愛娘を独りで送り出すよりは少しでも繋がりのある所にお願いしたかったのでしょうね。

     

    季節は丁度今頃ね。そして場所は・・、昔はまだまだ下町の情緒がたっぷりと残った落ち着いた街だった様な気がするけれど今やスカイツリーの登場で飛ぶ鳥を落とす勢いの東京都墨田区。 そこに彼女が就職した会社はあったの。だから15歳の彼女の門出のスタート地点はそこ、墨田区。

    東京など修学旅行で一度来ただけ、右も左も皆目見当もつかない。ましてや中学を卒業したばかり、本当に何もかもが手探り状態。 それでも持ち前の勝気さと働き者の血が騒ぎ仕事も私生活も一生懸命前向きに頑張る彼女。

    一番年が若かったせいもあるけれど、同族会社で従業員も20〜30人の小さな会社だから、黒目がちでくりくりと可愛い目を持ち、丸くてちょっと小動物を連想させる身体つきの彼女はアッと言う間に会社の人気者になったわ。 なかには意地悪なパートの小母さんやお局様もいたけれど彼女は臆することも無かったし、概ね上手に対処していた様ね。

     

    さてお相手の彼はと言うと・・。社長の甥ッ子、社長には子供がいなかったので言わば次期社長候補。 実際そのつもりで入社させたらしわ。 彼女が入社した時、彼は入社2年目の先輩社員。その頃彼は社長の運転手から配送の手配果ては梱包作業までとどんな部署からもお声がかかるオールマイティとして活躍中、と言えば聞こえはいいのだけれど実際は便利屋さん的なポジションかしら。

    がっちりとした体躯と、手足そして胸元から覗いてみえる体毛、とても二十歳代には見えない風貌はおっさん熊(失礼)そのもの。 いいえゴリラの方が近いかも・・。ご免なさい、あくまでも個人的見解よ。

    性格はと言うと、そんな外見とは裏腹にとても穏やかで優しい人。だって彼が怒鳴ったりイライラしているところを見た人はいないとはずよ。

     

    彼は、次期社長候補にも拘らず、他の社員たちから一目置かれていると言う様な気配はまるでなく、だからと言って敬遠されているわけではないのよ。 何と言っても力持ちだからパートのおばさんや女子社員達からしょっちゅうお声がかかるし、どんな仕事でも嫌がらずに頑張るから男性社員からも好かれていたと思うわよ。 でも働き者だとは皆が認めていたけれど、一人として彼を次期社長に相応しい扱いをしていなかったわねぇ。 社長は「修司」と呼び社長以外の人達は君やちゃん付けではなく「修司さん」さん付けで呼ぶのがせめてもの敬意の表れ見たいなものだったのかしら? そんなふうだから留美ちゃんも彼が次期社長になる人物だとはだいぶ長い間知らなかったみたいよ。 

     

    彼は15歳で入社して来たまん丸な小リスの様な愛らしい彼女に、最初から好意を抱いていたのでしょうね。 でも彼女は新しい生活や仕事、それに初めてみる世界や経験に大忙しで修司さんなど眼中になかったみたいよ。 実際彼も最初にはっきり留美ちゃんに自分の気持ちを伝えていたわけじゃないから尚更よね。

    東京にも仕事にも慣れると、若い彼女はゴーゴークラブ(死語?)で踊ったりetcと夜の遊びも覚えて青春を謳歌。 彼の好意を知ってか知らずか彼をアッシー君として従わせ始めたのもこの頃ね。 そうこうしているうちにあれよあれよという間に二人は公認のカップルに・・。お世辞にもお似合いのカップルには見えなかったけれど、何時も留美ちゃんに顎で使われながら幸せそうに笑っている彼を見ると微笑ましくて、少し羨ましいとも感じたものよ。

     

    若さではち切れそうな彼女はたびたび暴走して二人の仲にも何度か危機を招いた事もあったみたい。けれど其の都度彼が受け止めて、絆は強くなって行ったのね。 彼女の権限は問題が起きる度、それに比例して増大して行くようだったわ。好きな煙草やゴルフも制限がついて彼女の采配一つ。すっかり上州生まれの彼女のお尻に敷かれてしまった修司さん。 それでも彼は何時もとても幸せそうだったわ。 

    そしてついに彼は留美ちゃんの二十歳の誕生日に、正式に結婚を前提とした交際を申し込んだのよ。きっと彼女のお尻は全然重くなかったに違いないわ。