TOP > イククルコラム > 《おばあちゃんの恋袋 第二十話》怖い女 〜笑顔の裏の顔?〜

《おばあちゃんの恋袋 第二十話》怖い女 〜笑顔の裏の顔?〜

  • 2014年03月17日  吉井 綾乃  



    やっと例年通りの気温。 だいぶ前に吹いた春一番の便りは何かの間違いだったのかもと思う様な寒い日が続いたが、ようよう春めいて来たようだ。 

    春夏秋冬、それぞれの季節にはいったいどんな女性が似合うのだろうか。

    夏は情熱的で行動力のある人。秋は思慮深く物静かな人。冬は忍耐強く包容力のある人。そして春はさしずめ優しく母性の強い人か・・。 いやいや女性をカテゴライズすること自体が間違のもと。 女性とは優しくて、恐ろしい・可愛らしくて、逞しいそんな生き物なのだから、と思う。

     

    今どき女子の皆も自分の周りの女性たち、お友達・同僚・先輩、後輩、それにご母堂やお祖母ちゃんも、好き嫌いは別にして彼女たちを一言でどんな女性たちか説明するのは難しいでしょう?  「人間を一言で言い表すのは無理よ」と言われてしまえばそれまでなのだけれどもね。

     

    さてさて何時ものように昔々のお話。 おばあちゃんには、今でもその彼女が怖い女(ひと)だったのか優しい人(ひと)だったのかが良くわからないのよ。

    その彼女とはおばあちゃんのコラムに何度か登場しているスナックのママ。そして16話に登場した憎いパワハラ男の奥様でもあるわ。 

    始めてママに会った時はまだおばあちゃんは二十歳前だったわ。 その時ママは何歳ぐらいだったのかと言うと・・。知っていたはずなのに思い出せないわね。 でも自力でお店を経営しているママがとっても年上の人に感じていたわ。 たぶん30歳は過ぎていたような気がするわ。 何故って、独特のアイラインの描き方と一緒に、目じりの笑い皺が脳裏にくっきり浮かんでくるのですもの。

     

    ママは決して美人ではないのに、雇っている若くて魅力的な女の子たちに負けず劣らず、お客さん達に人気があったわ。 でも正直な話、未だ若くて男心のおの字も知らなかったおばあちゃんには、大変失礼なことだけれどママの魅力が何処にあるのかさっぱり見当がつかったの。 色っぽいとか艶っぽいと言う感じの女性ではなかったし・・。でもね、今思い返してみると人と会話をする時の仕草が「うふふふふ」と含み笑いをしながら、上目使いで見つめるの。それにいつも微笑んでいたわ。 相手が男か女かは関係なくよ。 これが計算づくか自然なのかは判らないけれど、可愛らしいと言えば可愛いかしらねぇ。 論より証拠。ママを目当てに毎日通って、最後に結婚にまで漕ぎつけた熱烈なフアンもいたしね。 あっ。いけない結末を先に言ってしまったわ。 

     

    憎きパワハラ男の妻でもありその男との間にできた赤ちゃんの母親でもあったのだけれど、このパワハラ男がやっぱりどうしようもないダメ男で、以前から定職にもつかず紐同然、その上ママのお金を内緒で持ち出してはギャンブルにつぎ込んでいたらしく、其れがママの知るところとなりそれやこれやで、ママが家から追い出したらしいのよ。噂では下着の入った小さなバック1つが持ち物だったらしいけど、最低男の末路ですもの、自業自得よ。下着も余分なぐらいだわ。 

    ママは自分の力だけで手に入れたお店をとっても大事にしていたしお店に立つことも大好きだったから、乳飲み子をパワハラ男に任せて産後、退院してすぐお店に出ていたの。 それがある日突然、子守がお店の常連さんでママの大フアンの三島さんにかわったのよ。 三島さんは静岡の三島出身。本名は覚えていないわ。でも素封家の跡取り息子と言うこととママにぞっこんだと言うことは皆が知っていた事実なの。

    どんな経緯で其処までたどり着いたのかは、ママから詳しく説明があったわけでは無いので想像するしかないのだけれど、どうみても電光石化。 側で見ていたおばあちゃんからすると追い出したのも乗り換えたのもまるで迷いが感じられなくてちょっと恐ろしかったわ。 心の奥底までは見えないし、若い小娘たちに弱みを見せるのは厭だったのかもしれないから、それだけで怖い女性だと思い込むのは早計よね。 

     

    でも後一つ、怖い女性なのかもと思った出来ごとがあるの。未だママが最低男を追いだす前のことよ。

    パワハラ男の犠牲者の哀れな乙女のA子ちゃん。そのことをママに直訴することも考えたけれどA子ちゃんがどうしても首を縦に振らなかったので結局二人だけの秘密として、おばあちゃんも誰にも洩らしたりしなかったわ。

    A子ちゃんは性格も器量もよく真面目だから常勤の女の子としてママからも大事にしてもらっていると思っていたの。 事実、風呂なしの部屋に住むA子ちゃんはママと一緒にお店に出る前にお店の近くのサウナに行くのが日課のようになっていたし、化粧気もなく、アクセサリーなど何も持っていない彼女にママは自分のプラチナのネックレスを付けさせたりしていたのよ。

    でもそのネックレスを彼女がサウナのロッカーに置いていて、盗難にあったのかなぜか紛失してしまったの。するとママがやんわりと微笑みながらA子ちゃんに弁償することを求めたらしいわ。デパートまで同行して「悪いわねぇ。本当に良いの?やっぱり自分で選ばないとわからないものね」といつもの上目づかいで微笑みながら、彼女のお給料の大半が飛ぶほどの高いネックレスを選んだらしいの。あくまでも優しく控えめな態度でね。

    そのことを彼女から聞かされた時、もしかしたらパワハラ男が彼女にしている悪行をママは知っていて、其のうえで自分の男を奪った女としてA子ちゃんを罰しているのかも、と感じたの。 何の根拠もないおばちゃんの思い込みなのだけど・・。

    そうだとすれば本当に怖い女でしょう?