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《おばあちゃんの恋袋 第二話》イイ男・今昔物語 Part U

  • 2013年11月05日  吉井 綾乃  



    今は昔。今は昔と言うけれど、今も昔も恋心の仕組みを解き明かした人はいない。

    “げに恋こそはまことのいのちである”

    と賢人は言うけれど全くもって恋って不可解。今も昔も変わらない謎。

     

    昔昔の英雄、豪傑・哲学者。

    そう、ナポレオンや伊達正宗・プラトンにも、寝ても覚めても、昼も夜も恋焦がれて愛しく思う人がきっといたはずだ、と思う。

    だからもしかしたら知っているかもしれない。

     

    そんな偉い人たちに訊ねてみたいことってたくさんあるけど、解明できれば、処方箋も出来て恋の病に苦しむ人を助けることが出来るかも、と言う人助けの為の質問其の一。

    “恋と言う摩訶不思議な代物についての質問ですけど、貴方がたはその仕組みをご存じでしょうか?知っていたら教えて下さいませ。”

    でも誰も教えて呉れそうもないわね。

    だって知っていれば後世に生きるこのおばあちゃんにも伝わっているはずだもの。

     

    何故身も知らぬ赤の他人に心惹かれ、何故に愛しく思えるのか、ほんとに不可思議。

     

    おばあちゃんの考えでは、恋には薬が必要な時があるけど愛に薬が必要になる事は先ずないだろうなと思っているの。

    恋と愛、両方ともとても素敵なものだけど二つは似て異なるもの。

    だけどこのおばあちゃんぐらい歳を重ねてくると愛より恋がイトシイと思ってしまう。若さへのノスタルジーかな。

     

    第一話でおばあちゃんが思うイイ男の条件は自分が大事に思う人を全力で守るおの子って話したけど、それは恋じゃなくて愛のお話。

    だからイイ男はなかなか恋物語には登場できない、とおばあちゃんは考えているの。

    なぜかと言うと恋は切なく愛しいものだけれど反面愚かで浅はかなもの。

    だから真直ぐで賢いイイ男には恋は似合わないと思っているのよ。

    でも世間一般的にはイイ男って姿かたちが綺麗で魅力的なおの子のことを指している訳よね。

    今どき女子はどうなのかな。今どき女子の思うイイ男像はやっぱり綺麗なおの子?

    女子が望んでいるから、それに呼応して今どきおの子は概ね綺麗で線が細いのかしらね。

     

    ゎ!綺麗で線が細いで思い出した。決して思い出したくはなかった昔昔の恋話一つ。

    あれはやっぱり第一話で話したおばあちゃんの学生時代。遡ること40数年前。東京でのお話。

     

    田舎から大学進学の為に上京して2年目ぐらいの頃だったかしら。

    東京での暮らしにもずいぶんと慣れて、学校に通うより色々と訳ありの大人たちに囲まれたアルバイトや、見たり聞いたりの新しい世界が楽しくて、学校に行かせてくれている親のことなど顧みることもなく遊び呆けていた愚かな時代のことです。

    其の時の自分をちょっとだけ庇ってあげると、青春を謳歌していた時代とも言えるけれど・・。

     

    丁度今ぐらいの時期だったかしら。冬の足音が近づき街路樹が綺麗に色づいてなぜか人恋しく切なくなるそんな季節。だからとい言うわけではないけど18か19歳だったおばあちゃんもとても切ない悲しい思いをしたことがあるの。

     

    今では喫茶店と言う言葉さえ死語になりつつあるけど当時は歌声喫茶、ジャズ喫茶、名曲喫茶、喫茶店が全盛期。

    おばあちゃんがアルバイトしていたお店のあった権之助坂にも喫茶店は何軒もあっ

    て、大学の夏休みも終わりに近づいたある日昔からコーヒーが大好きだったおばあちゃんはアルバイトの休憩時間にコーヒーを飲みに、たまたまその中の一軒に入ったのよ。そしてそこに、その彼がいたと言う出会いだったわけだけど、今でも当時でさえも何に惹かれたのかが、解らないの、たぶん一目惚れに近かったのかしら。

     

    その彼は黒のベストとお洒落な細いダブル裾のズボンをはきこなして黒の制服が良く似合うアルバイトの従業員。おばあちゃんより2・3歳年上の大学生。

    その彼は確かに線が細く綺麗な人だったわ。身長も高い人だったから若かった当時のおばあちゃんから見ると、セクシーだとは感じていなかったけど格好がいい良い男だと思っていたかも知れないわね。

    そして、彼を見つけた次の日から一緒に働いていた友達に訝しがられながらも一日に二回のペースでその店に通い詰めたの。

    若いということは恐ろしいことね。今じゃ考えられないし恥ずかしくてそんな真似はとても出来ない。

    だけどその頃のおばあちゃんもただただコーヒーを飲みに行くだけの体を装い、自分から話しかけたりはまったく出来なかったのだけれど、“色に出にけり我が恋は”の言葉通り彼が気づいてくれたわ。半月も通いつめれば否でも気づかれるわね。やれやれ本当にそんな行動力がどこにあったのやら。

     

    あら、また時間が来てしまったわ。じゃぁ、この続きは来週に持ち越し。

    おばちゃんとしてはあまり触れたくない恋話だけど興味があれば待っていて頂戴な。