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《おばあちゃんの恋袋 第六十一話》恋の昇格試験〜難関突破〜

  • 2014年12月29日  吉井 綾乃  



    今年も後わずか。あっと言う間だ。

    年の瀬が近くなると、皆、口々に一年の過ぎるのが早いというが、歳を重ねるごとに『まさにその通りだ』とズシンと身に染みる。

    横着を決め込んで、大掃除もまだ済ませていないが、横着を大目に見れるのは年を重ねたればこそ、と、そう考えればおばあちゃんになるのも捨てたものではない。

    あれもこれもと心残りはあるものの、迎える年に幸多かれと願うばかりである。

     

    さて、今日はおばあちゃんの従弟の恋物語よ。身内の恋話は少々気が引けるのだけれどもね。

    徹はおばあちゃんの従弟。家も隣町と近く、冠婚葬祭は言うに及ばず、ことあるごとに顔を付き合わせていたので実の弟のような存在だったのよ。おばあちゃんは妹はいるけれど弟はいないのでこの5歳下の従弟はずいぶん面倒も見たし可愛がってもいたわ。でも、徹の一番のお気に入りはおばあちゃんの妹の由紀乃だったわ。由紀乃はおばあちゃんの3歳下だから徹とは2歳違いだけど、生まれ月の関係で学年だと一学年の差しかなく、この二人は本当に仲が良くて姉弟のようなものだったのよ。小さい頃から女の子はおませさんだから、由紀乃は徹のお姉ちゃん振るし徹は徹で『由記お姉ちゃん』を短くして『ユキネ。ユキネ』と付いて回っていたの。いわゆる、金魚のフン状態ね。

     

    そんな二人は長じて、奇しくも同じ大学に入学して同じクラブに所属することになったのよ。奇しくもじゃないわねぇ、思い出してみれば徹と由紀乃には考え方や好みに共通するところが多かったような気がするわ。だから、同じ学校やクラブを選ぶのはなんの不思議もないのかもしれないわね。

    東京の大学に進学した妹は、頼りがいある姉?(おばあちゃんのことよ)と同居。その頃も、おばあちゃんは自由気ままな暮らしぶり。だから、なかなか学生の妹と時間帯が合わないのでゆっくり話す時間がなかったの。それでも、徹が由紀乃と同じ大学に入学してきて、同じクラブに所属したということは承知していたわよ。

    そんな毎日の中、その日は一日、仕事がなくゆっくり朝寝坊をきめこんでいた遅い朝、

    「ブランチ、一緒に食べようよ。もうすぐ出来るから。コーヒー入ってる」

    と由紀乃。大好きなコーヒーの香りが臭覚を刺激して、あまりベッドから出たくはなかったけれど久し振りの妹孝行のつもりでテーブルに着くと、今まで溜まっていたのか機関銃の様にまくし立てる。

    「ねえ、ネェネェ(紛らわしいけどおばあちゃんのことよ)、聞いて聞いて。徹があんなにバカだと思わなかったわ。不甲斐ないったらありゃしない」

    「ん?何が?」

    コーヒーをすすりながら寝ぼけ眼で尋ねると、

    「徹と同じ学年で豊美って子が一緒のクラブにいるんだけど、そいつが鼻持ちならないぶりっ子で、男どもを手玉に取って逆ハーレム状態をクラブで作り上げてるのよ。百歩譲ってバカ男子が侍るのはまだ許せるけれど、あの徹が豊美の言いなりなのが許せない」

    と、怒り心頭の様子の由紀乃。

    「へぇ〜、徹、その豊美って子好きなんだ?」

    「違うよ。好きとか嫌いじゃなく言いなりなの!」

    と、イラつきながら由紀乃が答えるので

    「由紀乃、あんた、それやきもちじゃないの?」

    「それはない、ないと思う…。自分でも考えてみたもの。だって、昔から徹モテるのよ。結構、いい男だし背は高いし。徹のこと好きだって子多いんだから。ネェネェ(おばあちゃんのこと)は知らないだろうけれど、昔から私の従弟だとわかると急にゴマをする女の子とかもいたぐらいなんだよ。だから、選りにもよってあの子に近づかなくても良いのに」

    と、由紀乃。

    「へぇ〜そりゃ知らなんだ。笑っちゃうね。あのはな垂れ徹がそんなにモテるとは」

    と、小さいころの徹のイメージしかないおばあちゃんは大笑い。ほとんど野次馬気分ね。

    でも、高校も大学も同じ由紀乃には徹は実の弟のようなものよ。多少のやきもちもあるかもしれないけれど、心配する気持ちが強いのでしょうね。

    「ネェネェ(おばあちゃんのこと)、笑いごとじゃないってば。陰でキープ君呼ばわりされているのよ」

    「キープ君?なにそれ?」

    「ネェネェ(おばあちゃんのこと)知らないの?アッシー君に貢君。キープ君はそのままキープしておく男よ。言うなれば一番格下よ。今は役に立たないけれど、取り敢えず置いといてやるみたいな位置かな」

    と、由紀乃がレクチャーしてくれたわ。

    「あは。そうなんだ、おもろ。で、豊美って子はそんなに魅力的なわけ?男どもが挙って傅くってことはイイ女ってことでしょう?」

    「ん〜〜。まぁ、そうね。可愛いし頭も悪くなさそう…。性格はいまいち、良くわからないけど」

    と不承不承、豊美さんと言う彼女自身が魅力ある女性だと認めたわ。彼女が男どもを手玉に取ると言うより男の子たちの方から寄って行くのだろうと、おばあちゃんは判断したわ。だから、

    「徹が豊美って子好きならしょうがないんじゃないの。由紀乃、あんたのは小姑根性だよ。ほっときな。徹より自分のボーイフレンドでも作りな!」

    と、おばあちゃんが言うと

    「それもそうか」

    と一応は納得した様子。

     

    暫くたち、その後の徹の恋の進展模様を聞いてみると

    「徹、車持っていないけど、今はアッシー君に昇格よ。お姫様のナイトのごとく学校の行き帰り、いつも彼女と一緒よ」

    と、多少不満げに由紀乃が教えてくれたわ。

    「えらい出世ね。それって二人が付き合っているってことじゃないの」

    とおばあちゃんが突っ込みを入れると、

    「違うわよ。まだ何人もいるし(彼女の周りの男子かな?)」

    と、どうしても二人の仲を認めたくない様子。どうも、徹にとって一番の難関は由紀乃の『おめがね』のようね。何はともあれ恋の関所は突破するのに時間がかかるものなのかもしれないわね。