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《おばあちゃんの恋袋 第六話》略奪愛 〜恋の仲立ち〜

  • 2013年12月03日  吉井 綾乃  



    今は昔。今は昔と言うけれど、人間が宇宙の彼方へ飛び立てる今でもそして天照大神が天岩戸にお隠れになった神話の神代も、男と女が愛し愛され、求め与えて大団円を迎える恋は希有。さてさて何故に?

    季節が移ろい往くが如く、恋心と言うものもまた移ろい易いものなればこそ、と思う。

     

    昔からの諺の中に“人の口に戸は立てられない”と云うのがあるけれども、今どき女子やおの子はこの諺を耳にしたことがあるかしら。

    世間の評判やうわさは止めることが出来ないと言う意味だけれど“人の心に戸は立てられない“もまた真理だとおばあちゃんは思っているのよ。

    だって人の心は自由に羽ばたき、誰もそれを止めることは出来ないでしょう。

     

    略奪愛。響きがセンセーショナルよね。語感だけでもこのおばあちゃんでさえ妄想の世界に飛んでいきたい気持になるもの。

    だからついつい第五話では大好きな藤竜也様との妄想を恥ずかしげもなくお披露目してしまったという訳なのだけれど。赤面ものだわ。お恥ずかしい限りよ。

    実際、おばあちゃんには、語感だけで心がときめくような略奪愛の経験は皆無なの。

    だからせめて妄想の世界だけでも心をときめかせてみたいと思うのは自然の摂理では、と思って下さいませ。とても恥ずかしいのでちょっと言い訳させて頂戴ね。

     

    この年まで略奪愛経験皆無の身のおばあちゃんは、当事者にはなれなかったけれど略奪愛の事例は身近なところで何度も見たり聞いたりしているわ。

    若い皆より、門松をくぐった数は相当多いからまぁ当然と言えば当然なのだけれど・・。

    昔々若かりし頃のおばあちゃんは略奪愛の当事者ではないけれども、略奪劇の重要な役回りを担ったことがあるのよ。

    でもただ、おばあちゃんにとっては、その事実は“若気の至り“の一言ではではすまされないとても悩ましく忘れられない出来事の一つになっていて、その出来事を皆にお話するのは少なからず抵抗があるのよ。

    実は、その略奪劇のヒロインがおばちゃんの大親友だということが胸に重くのしかかって躊躇する気持ちと、形容しがたいある種の贖罪の気持ちとがない交ぜになって、なんとも複雑な心境なの。

     

    今を去ること60年ほど前、おばあちゃんとおばあちゃんの親友であるこの物語の主人公の彼女はおばあちゃんと同じ田舎で産声を上げ、そして小・中・高と共に学び後に二人とも大学進学を期に上京。

    正確には上京したのはおばあちゃんだけで、(現在は変わっているかもしれないけれど、40数年前の彼女の進学した大学は教養課程の二年間は埼玉にあるキャンパスで履修しなくてはいけなかった)彼女は埼玉県にある大学の寮に移り住んだのだから上京とは言えないものね。

    そして、その二年間の短い間に彼女は恋に落ちその結果学生結婚をすることとなるの。

     

    おばあちゃんの親友の彼女は引っ込み思案な性格と云うわけではないものの、物静かで

    周りから目立つような性格ではないの。どちらかと云うと目立たない性格じゃないかと思うわ。

    でも目がくっきりと大きく鼻筋が通り、どこか淋しげな風情を漂わせる小柄な少女は長じると美少女として名を馳せるようになり、高校生時代には男子生徒から“ジャスミンの君”と冠され 多くの男子生徒の心を虜にするほどになっていったのよ。

    おばあちゃんは女性なので男性目線で彼女を評することは無理なのだけれども、高校時代の彼女に対するおの子達の評は専ら“色っぽい・色気がある“今で云うところのセクシーさだったような記憶があるわ。

    確かに高校生にしては大人びていたかもしれないわね。

    どこか淋しげだと感じるのはおばあちゃんが彼女のそうなっても仕方がないと思える生い立ちを知っているからなのかもと思っていたけれど、おばあちゃん以外の人達から見ても彼女には何所か影がありそれが高校生ぐらいのおの子には大人びて魅力的に映ったのかもしれないわ。

    高校に入学したばかりの頃、まだ彼女は15・6歳の若さなのに高校三年生のおの子達が大挙して彼女を見学(?)に来ていたのも覚えているもの。

     

    物静かな彼女と、幼いころから活発で学業の中で一番好きな科目が体育と云うおばあちゃんとは何から何まで正反対。それなのに妙に馬が合う。

    小学校から高校までの10数年間、毎日顔を見ない日は無いという関係の二人だったのに、彼女が埼玉で寮生活をする事になり、おばあちゃんは馴れない東京暮らし。

    今と違って携帯などと云う便利なアイテムなどない時代だから、なかなかお互いの近況など知る由もなくて、我が親友はとても遠いところに行ってしまったのだととても寂しく感じていたものよ。

    だから彼女の大学の大学祭に招待されて遠路遥々彼女の住む街を訪ねた時は本当に久々の再会だったの。でも再会を喜ぶ前に彼女の口から衝撃の事実を知らされることになってしまったのよ。

     

    それは・・。あら、今日もまた時間切れみたいね。これまでのお話は親友の彼女が主人公の略奪愛のほんの序章にすぎないの。だから続きは次の機会にお話することにしましょうかしらね。