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《おばあちゃんの恋袋 第十七話》報われない愛の真実 〜尽くす女〜

  • 2014年02月24日  吉井 綾乃  



    窓の外は一面雪景色。 我が家の庭は雪国への旅行中だったかと錯覚してしまうほどの様変わりだ。 今も昔も降る雪に変わりはない。 しかし高度な文明に助けられ便利さに慣れ切った生活が、先般の未曾有の大雪で混乱しきっている。

    同じ様に男と女の愛も、今も昔も変わりはしない。 が、しかし男と女の愛も与えられるのに慣れ切ってしまうと互いの愛も混乱するのかも、などと思う。

     

    皆元気にしているかしら。 先週の大雪で皆の住む街はどんな影響を受けたのかしら? ただただ被害のないことを祈るばかりよ。

    地球の温暖化の影響なのかしら、熱さ寒さそして先週の雪。近頃は自然界の営みがなんだかとても狂暴になっているわね。 だからと云うわけではないけれど [どんな風雨(困難)にも負けない強い愛] そんな愛が男と女の間で成立するのか考えてみたの。

    う〜ん、難問よね。 

    究極の愛と呼んでもいいかしら。それってどんな時でも、お互いが自分のことより相手のことを一番に考えていないといけないわね。 これが一番難しいんじゃないかしら。 

    どんなに愛し合って結ばれた二人でも良い時ばかりじゃないものね。

     

    恋人同士、出逢った当初のときめきの重さは彼も彼女もそんなに違いはないと思うのよ。最初は一番楽しい蜜月ですものね。 ところが不思議なことにいつの間にか力関係と言うかバランスが崩れる恋人たちがいるのよね。

    巡り合い縁あって結ばれた二人。そんな恋人たちでも時間や状況が変わって行けばお互いの関係も変化していくのは当たりまえのこと。 でもこのバランスシートの崩れはそんな変化とは少し趣が違うと思うの。 どんな場合に起こる変化かと言うと、それは一言で言うなら尽くす愛が引き起こす変化ね。酷な言い方をすれば一方的に愛を示したときかしら。

     

    昔々、おばあちゃんの先輩に尽くして、尽くしてそして尽くし倒れた女性がいるのよ。 彼女は高校時代にはバレー部のキャプテンをしていた程の運動神経抜群のしっかり者。

    おばあちゃんが小学校に入学した時のお世話係が6年生だった彼女。

    家も近所だったのでとっても良くしてもらったわ。 彼女は地元の商業高校を卒業すると東京で就職したの。おばあちゃんも上京してそれからはお互いに帰省した際に近況報告するぐらいのお付き合いだったのよ。それでもお互いの住んでいる場所、連絡先は知っていたわ。

     

    そんな或る日、浅草橋のおばあちゃんが住んでいたアパートの大家さんから「三浦さんと言う方からお電話ですよ」。携帯どころか家電(いえでん)も少ない時代よ。電話連絡は大家さん頼みの呼び出し電話だったの。お礼を言って電話に出ると先輩からの電話。三浦は先輩の名字よ。 

    60年代、その頃ボーリングがとっても流行っていて、その時の電話も会社対抗のボーリング大会に助っ人として参加して欲しいというものだったの。なんでも彼女以外にボーリングが上手な女性がいないので「勝つためにどうしても参加して」。言わば至上命令ね。負けず嫌いな彼女らしいと思ったわ。

    大会の為の練習で先輩と頻繁に会うようになって、先輩が同棲していること、そのお相手が1歳年下で司法試験を3回落ちていること、とてもハンサムらしいことそして二人の間で喧嘩が絶えないことなど、全部初めて知ったわ。

    会うたびにお惚気とは違う愚痴ともとれる先輩らしからぬ恋人との関係を聞かされて、ボーリングの練習中の彼女とおばちゃんの前で見せる弱弱しい彼女とのあまりのギャップに戸惑ってしまったわ。 練習中の彼女はボス猿(たとえが悪い)の様なお局様。

    何せ、今では会社の経理を一手に引き受け、社長も一目置くキャリアウ−マン、一緒に練習している男性社員も頭が上がらないほどの統率力、そして華麗なホームでストライクを取る姿はボスそのもの。でも練習の後で彼の話をするときは相手の気持ちを計りかねて何時も不安そうな乙女の顔。 聞けば同棲を始めた5年前から生活費は殆ど彼女が賄っていて、そのうえ残業やこうしたボーリングの練習等で遅くなる日は前もって食事の用意を全部整えてから会社に出社していると言うじゃない。家事も全部彼女がこなしているみたいだし・・。おばあちゃんは思ったわ。彼は何様??? がっちりと健康そうだった先輩が痩せてスマートになったのは頑張りすぎているからなのね。

     

    おばあちゃんも訊ねてみたわよ。「家にいることが多い彼に家のこと少しやってもらえば良いのに・・。彼が厭がるの?」

    「違うわよ! 私がやらせたくないの。それに彼は勉強が大変だもの。毎日図書館に通っているのよ」と誇らしく言い放ったの。なるほど・・。部外者が口をはさむ余地はないわね。

    それに喧嘩の原因の殆どは彼女の一方的な激情が引き金になっているのも判ったわ。

    はたから見れば5年間もお金を貢ぎ続けているのに、そのことで彼女が彼を責める様な事は全くなくて、ただ彼が自分を愛しているかどうか自分を捨てたりしないかどうかそんな不安を、事あるごとに彼にぶつけたのが原因だったみたい。 本人も気づいていながら気持ちを抑えられなかったのね。切ないことだわ。

     

    彼が司法試験に受かったことは風の便りで知ったけれど先輩が彼と結ばれることはなかったわね。 あんなに彼との結婚を望んでいたのに・・。