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《おばあちゃんの恋袋 第十五話》同い年 〜キュートな彼は父親似?〜

  • 2014年02月10日  吉井 綾乃  



    おお寒い! 節分が過ぎ立春も過ぎたけれど今年は本当に寒いわね。 みんなは風邪などひいていないかしら? これだけ寒い日が続くと俵万智氏の短歌、

    「寒いね」と話しかければ「寒いね」と答える人のいるあたたかさ
    (引用:俵万智歌集「サラダ記念日」より)

    これって「ほんとにそうね」と実感する人が大勢い出てきそうよね。

     

    子供の頃だったら風邪や病気で寝込んでいる時などは、母親や父親が額に優しくそっと手を宛ててくれたものだわ。 今じゃ自分で額に手を宛てるだけよ。寂しいお話ね。 

    父親や母親が手をかざしただけで、何故かそれだけで心がほっと安らいだものよ。 みんなもそんな経験あるでしょう。

     

    おばあちゃんは心理学を学んだことはないけれど、恋心には愛され守られていた幼い頃の温かい記憶が深く影響しているのではないかなと思うの。 

    よくマザコンのおの子やファザコンの女子が紙面やテレビで取り沙汰されるけど、でもねぇ、みんなも考えてみて。 マザコンやファザコンの人って本当に特別な人なのかしら。 おばあちゃんはそう思えないのよ。

    おばあちゃんも色々考えてみたけれど鯔(とど)のつまりは「誰でもマザコンでありファザコンなのだ」これが結論よ。 だって誰でも持っている気持ちですもの。その度合いが強いか弱いかの違いだけだと思うわ。

     

    どんなことでも問題の多くは度を越した時に起きるものよね。

    おばあちゃんが若い頃のお話だけど、もしかしたらちょっとファザコンの度を越してしまったのかも?という女性のお話よ。 

     

    おばあちゃんが其のカップルに初めて出会ったのは今から40年前位だったかしら。

    東京は戸越銀座の炉端焼き屋さん。 そこのマスターとおばあちゃんは懇意にしていて、よく無料奉仕と言う名目で顔を出してはタダで食事をして後は皿洗いのお手伝いなんかしていたの。 二人はその店の常連さんよ。

    まず見かけ、容姿のお話。目がクリクリと大きくて可愛い彼、きっと今どきの女子ならキュートね〜って微笑んでしまうぐらい愛らしいの。 で彼女は・・・。プーサンに眼鏡をかけさせたら凄く似ているかも・・・。 大柄でちょっと無愛想、そう見えるのよ。  冷静に容姿の点だけを表現すると美女と野獣をアニメ版にして男と女を逆にした感じ。 あくまでも外見よ。

     

    彼女は確かに口数も少なく大声で笑うことも少なかったけれど、とっても賢くて心の優しい人だったわ。 根なし草の様にフラフラしているおばあちゃんを心配して自分が働いている経理事務所に勤めさせようと画策したり、困っている人をほっとけないタイプの人なの。

    彼は反対に明るくてお話し好き。 其れに大きな声でよく笑うの。 仕事は車の運転手さんだったかしら。

    外見からいってもお似合いのカップルとは言い難い二人だけど仲の良さは天下一品。

    お酒が強いのは彼女の方。彼はお酒好きだけどそんなに強くはないの。 だからいつもお酒のお代わりは彼が彼女にお伺いを立てるのよ。「もう一本飲んでもイイ?」

    子供が母親におねだりする様な感じかしら。 彼女の顔を覗き込みながら今にも口付けしそうな勢い。 おばあちゃんもまだ若かったから見ている方が恥ずかしくなって思わず視線を逸らしたものよ。 今なら幸せのお裾分けだからしっかり見せて頂くのにね。

    彼女は返事の代わりに大きく肯くか大きく首を振るのよ。

     

    この二人は一緒に暮らしてはいたけれど結婚式を挙げていなかったの。 其のこと自体は別に珍しい事じゃないけれど、式を挙げられない事情がちょっと大変。

    彼女はこの彼と一緒になったために家を勘当されたらしいのよ。 その勘当された理由を聞いて唖然としたわ。 だってその理由って歳が違いすぎる、よ。 びっくり!

    お似合いとは言えないけれどそんなに年の差があるカップルだ と思っていなかったからほんとに驚いたわ。 聞けば彼と彼女の父親は同じ年齢。23歳も年が離れていたの。

    可愛らしい彼が50才を超えていたことも彼女が30才前なのも驚いたわ。 もっと驚いたのは彼女の父親の写真が彼にそっくりなことよ。 彼女はきっと母親に似たのね。

    だけど、おばあちゃんやマスターが彼と彼女の父親が良く似ていると言っても、当のご本人たちは気が付いていないみたいだったわ。 きっと彼女は自分でも気づかないうちに、父親によく似た彼に恋したのね。

     

    其の時の二人の願いは早く勘当を解いてもらって彼女のご両親に認めてもらうことだったわ。

    彼女が良く言っていたの。「早く赤ちゃんが欲しい。赤ちゃんを抱いて両親に見せに行きたい。そしたら勘当も解けると思うのよ」って。

     

    本当にそうだわ。 きっとお祖父さんにそっくりの可愛らしい赤ちゃんを授かるはずよ。 そしてお祖父さんにそっくりの赤ちゃんを見せて、そうしたらご両親だって許さない訳にはいかないでしょうもの。