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《おばあちゃんの恋袋 第四十一話》プレーガールの恋 〜ありのままで〜

  • 2014年08月11日  吉井 綾乃  



    当初の冷夏予報から予報修正、一転して猛暑へ。

    予報が外れたとか予報通りとかの問題など蹴散らしてしまうほどの厳しい暑さが続いている。自然の為せる技は人智を超え、計り知れない。

    また、次々と発生する台風の影響で、甚大な影響を被る結果となった地域も多い。まさに自然の猛威が牙をむいた証の様に見える。

     

    夏に台風、彼らは1セット。夏ともなれば否応なしに台風はやってくる。

    夏と台風、梅に鶯。否でも応でも1セットの関係・・。そんな関係性は男と女の間の結びつきでも良く見られる事。俗に言う、腐れ縁なども否応なしの1セットの関係だろうか。

    どうせ繋がるなら、合縁奇縁。周りから笑顔がこぼれるような様な関係の1セットになりたいものだ、と思う。

     

     

    さてさて今日のお話はというと・・?周囲の人達からはプレーガールと噂されていた素敵な女性の恋物語よ。

     

    世の中の男性諸君が、街で彼女に出会ったとしたなら間違いなく見とれて足を止めるわ。そして、『ワーオ!いい女』「ヒューヒュー」と思わず口笛を鳴らすに違いない。

    かく言うおばあちゃんも映画やテレビの世界にだけいると思っていた、人の目をくぎ付けにする、そんな女性が本当に実在すると知らされたのは彼女との出会いからですもの。

    そんな素敵でカッコいい女性を見つけたのは遡る事、40年ほど昔になるわねぇ。

    彼女の名前はみどりさん。初めて彼女を見たとき、大げさではなく不覚にも口をあんぐりと開いて見惚れてしまったわ。

     

    出会いの場所は、おばあちゃんのアルバイト先、東京のとあるお茶問屋さん。

    彼女の仕事は、お茶の販売促進、新人、ならびにアルバイトの監督官。彼女はおばあちゃんたちのアルバイトの教育係としてもう一人の男性と一緒に颯爽と現れたわ。

    その時の彼女はと言えば、黄金のオーラを纏い自信に満ちてさながらアプロディーテー。

    一緒に現れた佐藤君と彼女から呼ばれていた男性社員は彼女の従順な下僕にみえたもの。

    実際には佐藤君はみどりさんの上司(後々役職などを知る)なのにね。

     

    OLらしからぬ巻き髪のロングヘアー・ツンととがった頤(おとがい)・均整のとれた美しい鎖骨・・。一目で彼女の魅力の虜になった若いおばあちゃんにとっては彼女の一挙手一投足が「カッコいい!」。素敵で成熟した大人の女性の見本だと思えたわ。

    丸2日の研修を終えて、業務につくと案の定みどりさんは話題の人。彼女の同僚や口さがないパートのおば様方の情報によれば彼女はプレーガールと呼ばれているらしい。しかも悪女という意味でプレーガールと呼んでいたみたいね。

    それらの情報とは、「彼女は上司を手玉に取り過去に何人も彼らを左遷させた。彼らは地方に飛ばされたのに彼女は東京勤務。会社上層部にも彼女に操られている男がいるに違いない」「同時進行の交際が彼女の日常でパトロンもいるらしい」「彼女に振られて自殺した男が2人いる」などなど・・。

     

    『ほんとかいな』あれだけ魅力的な女性だから世の中の男性が放っておかないだろうけれど『おばさん達のやっかみじゃないの』と当然おばあちゃんは思っていたわよ。

    それに、みどりさんがおば様方の情報とはほど遠い性格だと気づくのに時間はかからなかったしね。最初から妬みのフィルターがかかったまま見ているおば様方と違ってリスペクトして観察するのとでは大きく差が出るものね。

     

    研修の初日のみどりさん。指導に熱が入り長い髪を一つにたばねた瞬間。なんとも魅惑的な華奢な首筋と遅れ毛、と同時に何か違和感がしたの。『あれ?後ろについている飾りボタン?あのブラウス前と後ろが逆じゃないかしら?』『あれ?イヤリングも左右別のもの?』。お洒落であか抜けている彼女のことわざとかもしれない、その時はそう思っていたわ。

     

    研修2日め。颯爽と云いたいけれど研修が始まる時間が迫っていてあたふたと登場という表現が近いかも・・。でも濃紺のシホンのワンピースが素敵に似合っていたわ。後ろのジッパーが途中までしか閉められていないことを除けばね。

    そして、他の皆が指示された作業に没頭しているさなか、おばあちゃんは見逃さなかったわよ。佐藤君が優しくみどりさんに囁きかけ、その瞬間アッと声にならない叫びと驚きの表情をみせて、首筋がパーッと朱に染まり乙女の様な恥じらいを見せたのを。

    それと、佐藤君がみどりさんの髪に手をやりそっと首筋の毛をどかしワンピースの後ろジッパーをスーと引き上げ襟もとの留め金を付ける。

    その時、かすかに佐藤君の手がみどりさんの首筋に触れたのかもしれないわ。みどりさんの頬が燃える様な赤に変わり、身悶えた様に見えたの。

    それはまさに、恋する乙女そのものよ。だから『もしかたら、みどりさん・・佐藤さんのことが好きのかも』と頭をよぎったわ。

     

    みどりさんの佐藤さんへの恋心が明らかになったのは、それから1〜2週後の会社の懇親会の時よ。その頃には、おばあちゃんは確信していたわ。みどりさんが大変なドジであわて者だってことをね。それに相当目が悪いということもよ。

    ジーッと相手の顔を見つめる癖があるのも目が悪いからよ。見つめられた男性が誤解するのは彼女の責任じゃないわよね。コンタクトレンズもまだ普及してなく、今の様にお洒落なメガネなどない時代。眼鏡をかけた女性は往々にしてダサイと思われていた頃のこと、美意識が高くお洒落な彼女は眼鏡を使用したくなかったのかもしれないわ。

     

    懇親会のお座敷に例によって慌ててやってきたみどりさん。何もない所で思い切りつまずいて佐藤君や若い社員の膝の上に倒れ込む、と「若い子をたぶらかしちゃだめよ」「お前たちには荷が重いだろ」とヤジが飛ぶ。「僕なら平気です」そう言って、みどりさんをお姫様ダッコで立ち上がったのは佐藤君。周りは飲み会の席ということもあり、ヤンヤヤンヤの大盛り上がり。そんな中、おばあちゃんはけして見逃さなかったわよ。またまた、みどりさんが幸せそうに微笑んで頬を染めるのを、ね。

    まったく、人の噂ほど当てにならないもなは無いわね。