TOP > イククルコラム > 《おばあちゃんの恋袋 第四十四話》恋のアドバイス 〜彼と親友と〜

《おばあちゃんの恋袋 第四十四話》恋のアドバイス 〜彼と親友と〜

  • 2014年09月01日  吉井 綾乃  



    夏休みも終わり、日中に子どもたちの歓声が聞こえてくることもめっきり無くなった。暑さも一段落というところだろうか。ぜひともそう願いたいものだ。

    暦の上ではとうに秋。なるほど、たしかに夜も更けてくると虫の声が秋の訪れを知らせている。日本人は虫の声にものの憐れや風情を感じ取るが、お国柄の違いか、外国の方々にとって虫の音はただの騒音にすぎないと聞いたことがある。たしかに、アドバイス・忠告の類も受け手が騒音と受け取れば、何の役に立つこともない。

    げに、世の中は難しいもの・・。

     

    さて、今日はあまり愉快な話ではないので少々気が重いのよ。

    今から30年ほど前になるかしらねぇ?少し前にもお話ししたかもしれないけれど、おばあちゃんがラブホテルで支配人の真似ごとをしていた時のお話よ。

    そのホテルは高速のインターチェンジのすぐ側にあり、お休みの前日ともなれば猫の手も足まで借りたいほどの忙しさだったの。

    夏休みや冬休みともなれば、なおさらよ。夏休みの前頃だったかしら、どうしても人手が足りなくて、変則的にグループ単位での募集をかけたの。その時に応募してきたのが彼女たち、チズちゃん・リカちゃん・ミーちゃん・マユちゃんの4人組。

    ミーちゃんとマユちゃんの二人は家事手伝いということになっていたけれどマユちゃんは高校を中退して、そのままフリーターを続行中。ミーちゃんはつい最近専門学校を中退したばかり。リカちゃんは専門学校に、チズちゃんは地元の大学に通学中だったわ。

     

    彼女たちは中学時代の同級生で仲良し4人組。

    決まった時間と日程を4人がお互いに時間のやりくりをして、出勤するという条件だったから基本的には4人で出勤することはなかったわね。大概2人の時が多かったかしら。

    4人ともそれぞれがとても可愛らしい女の子たちだったわね。

    忙しい時はお茶どころじゃなかったけれど、休憩時間のちょっとした会話やお互いの情報交換で彼女たちの関係性も見えてきてなかなか楽しいものだったわ。

    ボスキャラはおばあちゃんが思っていたマユちゃんではなく一番小柄なチズちゃんだったのには少しびっくりしたけれど、ミーちゃん以外の3人はお付き合いしている男性がいるということや、リカちゃんが3人からの満票獲得で一番の頑張り屋さんで良い子だということも知ったわ。脳梗塞で倒れた父親の介護はお母さんを助けながら頑張り、幼い弟の面倒もとてもよく見ていると、他の3人が口ぐちに褒めていたのよ。

     

    合理的で勝気なチズちゃんの彼は競輪のプロ選手、おばあちゃんがボスキャラと誤解した心優しきマユちゃんの彼はケーキ職人、そして頑張り屋のリカちゃんの彼はというと・・。観光バスの運転手らしい。

    仲良し4人組の暗黙の了解ごととして、お付き合いしているお相手は必ず皆に紹介することになっていたみたいね。その時フリーだったミーちゃんも以前にお付き合いしていた彼は紹介済み、らしかったもの。ところが、初めて男性とお付き合いを始めたリカちゃんの彼とはそろそろ付き合い始めて1年近く経つというのに、3人のうちの誰もリカちゃんの彼に会ったことがない。学生なので、土曜日曜に会いたいし、休みの日に仲良しグループに紹介したいと思っていても土曜日曜が絶対NG、らしい。

    そりゃ、おかしい。どうみてもその男既婚者に違いない、とおばあちゃんはピンと来たけれどリカちゃん以外の3人も同じ疑いを持っていたわ。そしてとても心配もしていたのよ。

     

    そうこうしているうちに、出勤するはずだったパートのおばさんが子どもの急な発熱でお休みし、もう1人が無断欠勤という状態になってしまったことがあったの。あまり忙しい日でもなかったのだけれどおばあちゃんも外出する予定があり、頭数だけでも揃えておかないと心配だったので、急遽、お休みだったチズちゃんとミーちゃんに出勤してもらったのよ。彼女たち4人が揃うのは面接以来初めてだったかしら。

     

    外出の準備をするために、フロントを出て2階に上がると控室から不穏な空気・・。

    「何も知らない癖に」

    「知らないから言ってるんだよ。土日ぜってぃ(絶対)会えないなんておかしいだろう。ぜってぃ(絶対)女房いるだろう。そんなクソ男、止めなって言ってるんだよ」

    ボスキャラのチズちゃんが地金丸出しでまくしたてる。

    「チズ、あんたはいつもそうだ。いつだって自分が正しいんだ」

    泣きながら必死に抗議するリカちゃん。

    「こっちはあんたのこと思って言っているんだ。クソ男なんてリカに似合わない」

    「誰もそんなこと頼んでいない」

    多少、売り言葉に買い言葉の感もあるけれど、間に入って残りの2人は、ハラハラ、オロオロ。マユちゃんに至っては大きな体を縮めて目を泳がせている始末。ミーちゃんはなんとか2人を取り成そうとチズちゃんを見たりリカちゃんを見たり忙しい。

    タイミング良く、客室の退室ランプがつき「○号室。お掃除に入ってね」とおばあちゃんが声をかけて、4人は客室へ。

     

    そのあと、2人は無事仲直りできたようだけれど、4人がお店を止めて何カ月かの後、リカちゃんが薬(睡眠薬?)の飲みすぎで病院に運ばれたと聞いときには、クソ男が原因ではありませんようにと願ったわ。リカちゃんへの親友たちのアドバイスは正しいものだったと、おばあちゃんは今でも思っているのよ。