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《おばあちゃんの恋袋 第四話》イイ男・今昔物語 最終章

  • 2013年11月19日  吉井 綾乃  



    今は昔。今は昔と言うけれど、今も昔も変わることなく泡沫の夢のごとく老若男女の心に生まれて消えて、そして幾度となく繰り返される不思議な物語。それが恋。

     

    今この瞬間にも、地球の裏側の果ての果てにある見知らぬ国のおの子と彼女。そして保育園の園児からから老人ホームのおばあちゃんやおじいちゃんまでが恋に目覚めたり恋に破れたりしているのだ。と思うとちょっと楽しい。

     

    悲しい恋、悲恋の代表作といえば若い頃におばあちゃんも読んだり映画を見たりしたシェークスピアロミオとジュリエットかしらね。

    月並みな言い方しかできないのが残念だけれど、本当に切ない哀しく悲しい恋物語よね。本は、悲しみで胸がはりさけそうになりながら読んだわ。

    映画は、ジュリエット役を務めたイギリスの女優オリビア・ハッセーがとても綺麗で可愛らしくて、“世の中にはこんな美少女が居るものなのね。世界は広い、凄い。”とただただ見とれてオリビアにばかり目が行って相手役のロミオの記憶はほとんど残ってないわね。

    あ、でもあと衣装と音楽、これは一級品。とても素晴らしかった。素敵でしたよ。とくにおばあちゃんの印象に残っているのは衣裳の豪華さ。そして豪華さもさることながら、計算されつくしたそれぞれの衣裳の美しさかな。

    今どき女子も一度ご覧あれ。衣装と音楽だけでも結構楽しめるとおばあちゃんは思うけれど、今どき女子の目にはどう映るかしら。

    彼女が原作に近い年齢で15歳だったのも驚きの一つだったわね。だって何を隠そうこのおばあちゃんも同年代16・7歳ぐらいだったから、自分とオリビアのあまりの違いに驚愕です、ってとこかな。

    余談だけれど皆は歌手の布施明さんは知っているかしら?(”恋“と言う曲も歌っている方よ)彼は前述のオリビアと結婚していたことが有り、二人の間には男の子が一人いるはずよ。残念ながら離婚してしまったけれど、結婚するという報道が流れた時は日本男子ここにあり。あんな美人を射止めるなんて日本男子も捨てたものじゃない。と拍手喝采。とても嬉しい気持ちになったのを覚えているわ。

     

    若い頃はロミオトジュリエットのような胸を締め付ける様な切ない恋の物語も楽しみながら読めたけれど今、おばあちゃん位の年齢になると悲しい恋の物語は苦手かな。ハッピーエンドがいいわね。それに今は物語を読むより相聞歌を読むほうが楽しいかも。

    相聞歌・恋の歌。今どき女子にも是非お勧めしたいと思っているのよ。短い中にたくさんの恋と愛が詰まっているから “これ自分と同じ。わかるゝ”と肯ける歌がきっと見つかると思うのよ。

     

    閑話休題。さて大詰めね。夏の終わりに芽ばえたおばあちゃんの恋のお話。

    あんまり遠い昔のことだから、ピアノの弾き語りの曲名も何を飲んだか何を食べたか全部忘れてしまったけれど、お店を照らしていた淡い温かなライトの色と座った絨毯の感触と高揚した気持ちは今でもはっきり思い出せるの。

     

    どのくらいの時間が経ったのかしら。そんなに長い時間ではなかったわ。おばあちゃんはまだまだ帰りたくはなかったのだけれど彼に促されてお店を出たの。朝まで営業している店だからもっとゆっくり出来たはずなのに何故そんなに帰りを急ぐのか其の時は解らなかった。あとで知ってとてもヾ傷ついたけど。

     

    お店を後にして彼の車に乗り込んだのだけれど、其の当時のおばあちゃんには車で都心を走ることなどあまり経験がなかったうえに、深夜だから何処を走っているのか皆目見当もつかなかったけれど、どうも来た道と違う様な気がしたの。案の定、向かっているのは何所か尋ねると答えはラブホテル。

     

    サーッと音が聞こえるかと思うほど血の気が引いて気を失いそうになったけど、そこで断固拒否の態度を示さなければ絶対後悔すると咄嗟に判断して“厭です。“そんな気持ちはありません。”と伝えた途端、彼が豹変したの。顔からは笑顔が消え綺麗な顔が意地悪く歪んで車を止めるとおばあちゃんに向かって車から降りろと宣告したわ。おばあちゃんとしても、もう一緒になんて居たくなかったから急いで車から降りたの。

    急発進した車のテールランプに映しだされた街路樹が綺麗に色づいているのがとても切なかった。

    そこからどうやって家まで帰ったのかまるで記憶にないけれど、大通りを挟んだ石畳みの長い舗道と街路樹は忘れられないの。

     

    それっきり彼には二度と会わなかったし憑き物が落ちたように彼への気持ちはキレイサッパリ消えてしまったけれど、暫くは苦い後悔に悩まされたわ。でも今思えば不幸中の幸いよね。車から降ろされる程度ですんだのですもの。おばあちゃんのお粗末な恋話の一席、終演です。お粗末と言うよりは愚かで浅はかな恋でした。

     

    そう言えば綺麗なおの子にはあれ以来あまりときめかないわね。よほど懲りたのね。それは冗談だけれど、今も昔もイイ男を見分けるのはなかなか大変。

    だから一杯恋してイイ男を見抜く、みる目を磨いて頂戴な。