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《おばあちゃんの恋袋 第百七話》僕の居場所〜オタクな彼女〜

  • 2015年11月17日  吉井 綾乃  



    11月も半ばを過ぎ、一雨ごとに秋は深まり行く。

    15日は七五三そして、今年は三の酉まであり今日は二の酉と、11月は神社の繁忙期でもある。おおむねは、日々神社仏閣に縁のない生活を送っているものの折りに触れ日本古来の伝統行事を遵守するのは楽しいものだ。

    大事にしている事柄やこだわりは、人それぞれ…。

    而して、恋する心模様は千差万別・千姿万態。いとおかしいものなればなり。

     

    さてさて、唐突ながら恋心って不思議な生き物よね。

    昔々、オタクなどという言葉自体存在していなかった頃のことよ。

    今なら、間違いなく秋葉原、中野の中野ブロードウェーや池袋の乙女ロード界隈を闊歩する若者の一人だったに違いない、腐女子(おばあちゃんのあいまいなオタクの知識だから言葉のチョイスが間違っていたらごめんなさいね)と思しき、かわいい女の子がいたと思召せ。

    今日はそんなオタクな女性に恋した男の子のお話。

     

    当時、19歳の孝子ちゃんは今でいうオタク女子そのもの。見かけは小柄ながら出るところは出、締まるところは締まったいわゆる、ボン・キュウ・ボンのトランジスタグラマー(死語だわねぇ。理解してもらえるかしら?)で、キュートな女の子。

    でも、ご当人にとってはその大きな胸もお尻も大嫌いもちろん、背の低いことも大きなコンプレックスだったのだそうだけれど、その大きな胸やお尻に悩殺される男性は多かったと思うのよ。

    もしかしたら、おばあちゃんのアルバイト仲間だった児島君もその大きな胸に魅せられた一人だったのかもしれないわ。

    「お〜、スゲーな。ボン・キュウ・ボンだ。それに可愛い。誰かさんとはエライ違いだね」

    と、平凡パンチ(今は廃刊ではなく休刊ちゅう?らしい)のグラビア写真の胸の大きい女の子に夢中。

    「私と比べないで、ほっておいてよ。だいたい、胸が大きければ誰でも良いってバカ丸出しだよね」

    と、切り返したものの内心ちょっとショックだったわ。別に、胸が大きくないのはまるで気にしてはいなかったのだけれど『ブルータス、お前もか』の心境よ。だって、児島君は顔良し性格良し、の好男子。その時、おばあちゃんが児島君に『惚れてまうやろ』状態だったのですもの。

     

    でも、哀しいかな児島君がおばあちゃんを女性として見ていないのは明白。なぜって、

    「なぁ、綾。男嫌いな女の子っているものかな?」

    と、ある日唐突に恋の相談役に抜擢されてしまったのですもの。

    少し悲しげな顔で恋する彼女の気持ちを知りたがっている児島君。今でこそ思い出話だけれど、さすがにこの時は、ショックが大きかったわねぇ。だって、告白前に振られてしまったみたいなものですもの。それでも、女友達の筆頭ならいいかと顔で笑って心で泣いての心境かしら。慰めにもならないけれど…。

    思い出したら、お祖母ちゃんにも可愛らしい時代があったのねぇ。ちょっと、嬉しいわ。

     

    あら、脱線してしまったわ。ごめんなさいね。

    「男嫌い?それって、どういう意味でなの?男より女が好きな女の子がいるか、ってこと?」
    「えっ、いや…。そうじゃない、そんな意味じゃなくただ、男が苦手なのかなぁ?たぶん…、だと思う。いや、良くわからないんだ」

    と、これじゃあ何がわからないのかわからない、まるで要領を得ないわ。

    「なに、それじゃぁ。児島君は、俺みたいな良い男に振り向かないということは男嫌いに違いないって、そう言いたいわけ?」

    と、おばあちゃんの行き場のない想いが思わず知らず嫌みな言い方になってしまったわ。

    「違う、違うよ。そんな意味じゃないよ」

    と、大慌てで頭(かぶり)を振る児島君。それを見て、おばあちゃんも我に返り意地悪な言い方をしたことを即、後悔したわ。

     

    その当時、児島君とおばあちゃんは同い年の大学生。でも、通っている大学が違っていたからアルバイト仲間という関係以外の接点はなかったのよ。だから、児島君が恋している女性、児島君と同じ大学に通っている孝子ちゃんには会ったことがなかったのよね。

    今は、好意を持っている女性を撮った写真の一枚や二枚、携帯にあるでしょうから、それを見せれば話は早いわ。でも、昔はスマホなどという便利なものは存在していないから当然、映像は無し。実はね、会ったこともない人のことを説明するのはなかなか難しいことなのよ。

    それでも、孝子ちゃんの容姿は『ボン・キュウ・ボンのトランジスタグラマーで可愛い』と言ってくれれば、殆ど想像ができたわ。ところが、恋する女性をボン・キュウ・ボンと表現するのは嫌だったのかはたまた、女性であるおばあちゃんに遠慮があったのかしらね。終ぞ、ボン・キュウ・ボンでトランジスタグラマーという言葉は聞けないまま孝子ちゃんと会うことに…。

     

    「綾、今度うちの学園祭、来る?」

    季節はちょうど今頃、学園祭の時期だったわ。

    児島君の願いはただ一つ。孝子ちゃんの本心が知りたい。児島君曰く、『彼女(孝子ちゃん)の心の中に僕の居場所があるかどうかが知りたいんだ』そうだけど、それを確かめるべく白羽の矢が立ったのがおばあちゃんというわけよね。

    『なぬっ!僕の居場所だって。くさいセリフだねぇ』と、意地悪の一つも言ってやりたいのをぐっと我慢して出かけた学園祭。

    確かに、孝子ちゃんなる女性、同性でもクラクラするほどの巨乳。それにキュウート。

    女の子受けの良いおばあちゃんは難なく孝子ちゃんの懐へ。というより、おばあちゃんがオタク気質に寛容だったことも影響しているのかもしれないわね。

    当時は、オタクという言葉もなかったしオタク気質を良しとする風潮もまるでなかったかのよ。だから、孝子ちゃんは周りの女の子からは浮いた存在、ちょっと変わり者と敬遠されることが多かったみたい。その証拠に、お友達は少ないと本人も認めていたわ。

    孝子ちゃんはおばあちゃんとこだわりや好きなものが似ていることもあり、あっという間に親しくなれたのは存外なことだったわ。でも、残念ながら児島君の居場所が孝子ちゃんの心にできることはなかったのよね。

    おばあちゃんのアシストもあり一度は、小島君と孝子ちゃんはめでたく交際することになったのはなったのよ。だけれど…。孝子ちゃんの気持ちがどうしても児島君の気持ちまで行きつくことがなく平行線。結果、児島君が振られるかたちで、ジ・エンドよ。

     

    ホントに恋心は摩訶不思議、よね。