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《おばちゃんの恋袋 第五十九話》謎〜男女の愛はシェア可能?〜

  • 2014年12月15日  吉井 綾乃  



    寒い寒い。もう12月も半ば。今年は例年よりも寒さが厳しいように感じるのは次々やって来る寒波のせいなのか、はたまた寄る年波のせいなのか…。インフルエンザも例年より早く到来しているとの由。

    もうすぐ恋人たちの、いや、寂しい独り者にとっても一大イベントのクリスマスがやって来る。

    今、インフルエンザに取りつかれてはせっかくのクリスマスも台無しである。各々方、くれぐれもご自愛召されよ。

     

    さてもさても、時の経つのは早いもの。あと10日もすればクリスマスがやってくるわ。

    おばあちゃんのクリスマスはというと、今ではプレゼントを送りたい人も戴く予定もなくなって、寂しいことね。

    そう言えば、クリスマスで思い出した昔々の恋人たちがいるわ。それは、ゆかりと妹尾ちん、それと三上君というお三人さん。

    今日は、この三人の昔々の恋のお話を思い出してみましょうかしらね。

    ゆかりと妹尾ちんはおばあちゃんの女友達、で、三上君は彼女たち二人の共通で正真正銘なステディな彼。目をこすらないで。大丈夫、見間違いじゃないわ。そうなの三上君は、ゆかりの彼氏で、そして妹尾ちんの彼氏なのよ。でも、ここで大事なのはこの三人の関係が俗に言うところの三角関係とは違うということなの。

     

    「ねぇ、妹尾ちん今年のクリスマスプレゼント考えてる?」

    とゆかりが尋ねる。

    「う〜ん。ほんとはね、ちょっとベタだけどマフラー編みたいのよ。アッ、もちろん、ゆかりが賛成してくれたらだけど」

    と妹尾ちんが答える。

    「そうかぁ、いいわよね。妹尾ちんは手先が器用だから…。もう毛糸とか用意したの?」

    とゆかり。

    「うううん、まだ、ぜんぜんよ。ねぇ、ゆかりも一緒に毛糸選んでよ。ゆかりの方が色彩感覚がすぐれているし」

    と妹尾ちんがゆかりを誘うと、

    「じゃ、これから買いに行く?新宿に出ようか、池袋でもいいけど」

    と、これがゆかり。

    今から40数年前、冬休み間近の大学の教室でのゆかりと妹尾ちんの会話よ。

    おばあちゃんはゆかりの隣で机に突っ伏して惰眠をむさぼり中。でも二人の会話はしっかり聞こえていたわ。授業が終わったころには覚醒しつつあったしね。

    「ほんと、へんてこりん。あほかいな。理解できん、あの三上のどこがいいんじゃ?」

    と、おばあちゃんが悪態をつく。

    だって、会話の中に出てきた二人がプレゼントをあげる相手は同一人物なのよ。それに、選りによってそんなに素敵だとも思えない(おばあちゃんの審美眼の判定だから単に好みの問題いかな)三上君に二人がそろってプレゼントをあげるだなんて、しかも、二人とも三上君を愛していると、のたまう…。

    おばあちゃんが実情をよく知っているから二人は平気でこんな会話ができるけれど、ほかのクラスメートたちが知ったら間違いなくこの三人は変態扱いね。そこまでいかなくても変人としてドン引きされること請け合いよ。そうなることは、ゆかりも妹尾ちんも理解しているらしく、この事実はほんの一握りの人たちだけの秘密だったわ。

     

    ゆかりと妹尾ちんはたしかにタイプは良く似ていたわね。でも、二人が親友同士で、二人が共謀(?)して三上君を彼氏に選んだというわけではないのよ。最初二人は、同じクラスではあったけれど顔見知り程度の付き合いだったわ。寧ろ、おばあちゃんとゆかりが大の仲良しだったかな。だから、ゆかりが三上君に好意を寄せているのは知っていたわよ。

    ワンダーフォーゲル部に籍を置く三上君は好青年ではあることは認めるけれど、顔の前後がわからないほど顔が真っ黒でおチビさん。

    ゆかりと妹尾ちんに言わせると三上君が、はにかんで笑った時の白い歯が素敵なのだそうだが、あれだけ顔が黒ければ歯はいやでも目立つと思うわよ。残念ながら、おばあちゃんは三上君と接触する時間があまりなかったので彼の魅力には気付かないままだったけれど、二人が三上君にメロメロだったのはたしかね。

    妹尾ちんもワンダーフォーゲル部所属だから、正確にいうと付き合っている三上君と妹尾ちんの間にゆかりが割り込む形だったのかしら。その辺のいきさつは聞いたが忘れてしまったか、おばあちゃんが知ったのが三人で付き合い始めた時だったので、あえて聞かなかったのか、定かではないのだけれどもね。

    とにかく、世にも不思議な関係が成立していたの。ゆかりとおばあちゃんが大の仲良しだったから必然的に妹尾ちんとも親しくなれたわけだけど、どうしても、ゆかりと妹尾ちんそして三上君、この三人の関係は理解できなかったわ。三上君がドンファンタイプの男子なら少しは理解できたかもしれないけれど、三上君はごく普通のあまり目立たないタイプの男性だったしね。

    でも、ゆかりと妹尾ちんの仲の良さ本物だったわ。お互いを思いやる親友同士よ。三上君を介して親友同士になったとしか言いようがないのだけれど、それって不思議な現象よね?

     

    おばあちゃんにはどうしても理解できないので、悪態をついたり皮肉を言ったりしていたのだけれどある日、二人に質問したことがあるのよ。

    「ねぇ、正直に答えてよ。絶対だよ。あのさ、やきもち焼いたりしないの?ほら、別々に三上君に会う時だってあるわけじゃん。その時、平気なの?想像したりしないの?」

    「自分でも不思議なんだけど妹尾ちんなら平気なの」

    と、ゆかり。

    「うん、わたしもそうなの」

    と、妹尾ちん。

    「自分だけのものにしたいとか思わない?独占したいって」

    と質問しても

    「今は思っていないなぁ。今の関係がいい」

    と、二人の答え。

     

    ね、不可解でしょう。今思い出しても、まったく謎の乙女心よ。

    でも、その冬に妹尾ちんが編んだ素敵なマフラーと一緒に懐かしい友の顔が思い出されて、ちょっぴり心がほっこりした一日だったわ。