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《ヒモノ図書館員の恋愛強化書》“顔で選ぶ”はアリ?『その愛の程度』

  • 2015年08月21日  猫元 わかば  



    人を好きになるキッカケはいろいろ。たとえば外見――「顔が好き」も立派な理由の1つ。そこで「やっぱり美男美女しか…」と凹むのはもったいない!今回は「顔」にちょっとポジティブになれそうな1冊をご紹介します。
     
     
    今回の1冊は小野寺史宣さんの『その愛の程度』。選んだ理由は、ずばり<タイトル>です。
    タイトルを見たときから気になりつつも、恋愛小説への苦手意識から読まずにいたのですが「せっかく恋愛小説を読む機会ができたんだし!」と本屋へ直行した次第でございます。
     
    読んでみると、結婚した女性の連れ子との関係に悩む初婚のアラフォー男性目線という割とダウナーなスタート。
    勝手に「しっとりめの恋愛小説かな?」と思っていたので面喰いつつも、こういう驚きがジャケ買いならぬ本のタイトル買いの醍醐味だったり。
    おっさん目線で語られる年上の妻や血のつながらない娘、年下の同僚の姿が面白く、読みやすい文体だったのでさくっと読み終えてしまいました。
     
     
    ●あらすじ
     
    豊永守彦は日用品メーカーで働く35歳のサラリーマン。7歳年上の妻・成恵と結婚し、連れ子の菜月と一緒に暮らし始めて2年目を迎えました。
    ある日、守彦は成恵の仕事先の親睦会を兼ねた川遊びに運転手役として駆り出されます。
    そして少し目を離したすきに菜月と一緒に遊んでいた女の子・留衣の2人が川におぼれてしまいます。あわてて助けに向かい、娘の手を掴んだと思いきや、その手は菜月ではなく留衣のもの。
    義理とはいえ自分の娘を見分けることができなかった事実に守彦は打ちのめされます。
    菜月は自分を助けてくれなかった守彦にショックを受け、避けるようになり、ついには成恵から別居を持ち掛けられます。
     
     
    義理の娘と父親の微妙な関係に注目したくなりますが、今回はほかの部分に目を向けてみたいと思います。
    作中では守彦&成恵の夫婦、守彦&結衣(川で助けた女の子の母親)、守彦の後輩である小池くん&その彼女・品田くるみの関係が描かれています。
    印象的なのは、相手の「顔」が好きだという描写がくり返されること。
    美男美女ぞろいなのかと思えば、そうでもない。というのがまた面白いのです。
     
     
    ●守彦=カッコよくはないけど、無難な顔
     
    そう守彦を称したのは、7歳年上の姉さん女房・成恵です。
    守彦との出会いは、さかのぼること12年前。ウェイターのアルバイトをしていた喫茶店「ルフラン」の店長が成恵でした。
     
    2年におよぶ結婚生活は、川遊びでの一件を期に幕を閉じることになります。
    娘の菜月にとっては守彦が「自分のことを助けてくれなかった」事実がたいへんショックだったようで、まったく口をきいてくれなくなり、菜月のためにもと始めた別居はついには離婚へ。
     
    離婚を決めた際に、守彦は成恵に「おれのどこが好きだった?」と尋ねます。
    成恵の答えは「顔かな」「カッコいいとまではいかないけど、無難にまとまってる」。
    守彦の顔だったら毎日見ていられると思ったらしいのです。
    あけすけだなと思いつつ、妙に納得。
    確かに、夫婦になれば毎日顔を突き合わせるわけですから、相手が自分好みの顔というのは大事なポイントかも。
    好きなものはずっと見ていたいし、いくら見ても飽きないし、一緒にいたくなりますからね。
     
     
    ●品田くるみ=すごくきれい。顔が好き。笑顔がいい。
     
    カノジョをそう評する小池くんは、守彦と同じ職場のちょっと変わった青年。
    昼食のたびに品田くるみの話を聞かされ、守彦はうんざりを通り越してちょっと楽しみになっているレベル。
    しかし小池くんの話を聞いていると「きみ、だまされてない?」と思うものばかり。
     
    たとえば小池くんの親友と2人きりでのみに行ったり、友達の弟と旅行をしたり。
    それでも品田くるみが「浮気じゃない」といえば素直に心の底からその言い分を信じてあげるのです。
    懐が広いのか、男前なのか、頭がお花畑というのか。私は守彦と同様に「大丈夫なの?」と心配になってしまいました。
     
    「カノジョのどこが好きなの?」と聞くと、小池くんは「顔ですよ」とスッパリ。
    出会いは合コン。くるみの顔を一目見て「あ、好きだな」と感じたそう。
    とくに笑顔が好きで、「それさえ見られればオッケーと思わされちゃう」とベタボレ状態です。
     
    浮気されて終わりかな…と思えば、最終的に2人はゴールイン。招待された結婚式で、はじめて守彦は品田くるみの顔を目にします。
    とびきりの「美人」をイメージしていた守彦はびっくり。
    彼女は「惹かれる人は惹かれる」という顔立ち、つまり口をそろえて「美人だ」といわれるほどきれいな女性ではなかったのです。
    また守彦は「100人のうちの1人を、1人のみを熱烈にひきつける顔かもしれない」ともいっています。その1人が小池くんだった。それならもう運命ですよ。ちょっとうらやましい。
     
     
    ●「人間顔じゃない」はやっぱりウソ?
     
    読み終えたあと、相手を“顔で選ぶ”ことを一概に非難はできないなあ…という気持ちになりました。
    ポイントは、この小説での「顔」はイケメンや美人と必ずしもイコールではないこと。
     
    イケメンといわれている芸能人を見て「かっこいいけどタイプじゃないな〜」と思った経験はあるはず。
    私もジャニーズや若い俳優さんを「イケメンだな〜かわいいな〜」と思いますが、じゃあ全員が好みのタイプかといわれると、やっぱり何か違う。
    ちなみに個人的に好きな顔は野村萬斎さん。
    キツネ顔とか言われてますが、あの涼しげな眼がとても良い。着物も似合うし。
     
    そうなると「ただしイケメンに限る」。
    ネットで目にするフレーズですが、ちょっと違うぞと。
    <※ただし自分好みの顔(あわよくばイケメン)に限る>が正解かな。
    うーん…私の顔を好きっていってくれる人、1万人、いや1千万人に1人ぐらい居ないかな〜!?