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《ヒモノ図書館員の恋愛強化書》『イニシエーション・ラブ』に学ぶ女子力

  • 2015年06月09日  猫元 わかば  



    友人からの結婚やオメデタ報告を眺めつつ、ふと目についた自分の本棚。
    少年漫画、遺伝子、新幹線、廃墟、ムー大陸…。
    あ、モテない。これはモテないわ。
    恋愛小説が1冊もない…思えば避けていた気もする。アラサーを迎え、下がり続ける女子力。このままじゃヤバイ。
    でもすっかり干物な私にいきなり恋愛は…いや、待てよ。本がある。本好きが高じて図書館員になったじゃないか!
    「こうなったら本から女子力や恋愛のアレソレを学んでやる!」
    アラサー図書館員、本日より女子力磨きをスタートします。
     
     
    今回は映画も公開された乾くるみさんの『イニシエーション・ラブ』。
    うたい文句の「必ずもう1度読み返したくなる」や「恋愛小説だけどミステリー」という評判が気になり選びました。
    何でもラスト2行で物語が覆り、恋愛小説からミステリーへと変貌する、らしい。
     
    描かれるのは主人公の「たっくん」とその彼女「マユ」の恋模様。
    本編はA面・B面と大きく2つに分かれていて、A面は大学生の「たっくん」がマユと合コンで出会って恋人になる話。B面は就職し静岡から東京に転勤となった「たっくん」とマユの遠距離恋愛の話です。
     
    どちらも「たっくん」視点で進んで行くのですが、A面の大学生「たっくん」は恋愛に慣れておらず、ちょっと古風というか奥手な感じ。
    合コンで出会った女性と付き合いたくないとか、常に最悪の事態を予測してしまうとか、「外見で判断するような人に認められなくない」と言い訳しながらオシャレに手を抜くとか。
    わ、私だー!私がいる!
    モテない奴にありがちな合コン拒絶症ね。分かる、分かるよ…。内心でこぶしを握りながらページをめくり、気付く。「たっくん」に感情移入している場合じゃない。
    私はこの本から恋愛の何たるかとか、女子力とか、男と女のカケヒキとか、そういうものを学び取らなければいけないのである。
    では登場する女子に注目してみましょう。
     
     
    飾らない、自然体な愛らしさを持つマユ。でも実は…?
     
    マユは美人と言うよりは可愛らしい、少女然としたタイプ。
    髪はショートカットで、ニコニコと愛嬌のある笑顔と自然体な雰囲気が目を引く女性です。
    合コンにあまり乗り気でなかった「たっくん」も、一目でハートを射抜かれてしまいます。
    かわいい子なんだ〜という印象で読み進めていると…意外にも人を操るのが上手い、小悪魔な顔も見えてくるんです!
     
    例えば合コンメンバーで海へ行った際の「たっくん」とマユが2人きりになるシーン。
    そこで「たっくん」はマユが喫煙者であること(友達にも内緒にしている!)を知ります。みんなの元へ戻る際も、時間をずらして来てねと2人でいたことを秘密にしたい様子。
    マユとタバコという意外なギャップと秘密の共有、突然のマユからの接触に翻弄され、ますます「たっくん」はマユに惹かれて行きます。
     
    次に、「たっくん」がマユになかなか電話を掛けられずにいるシーン。ようやく電話をかけると、マユは「ずっと待ってたんですよ」とちょっと責めるような口ぶり。
    相手に罪悪感を植え付けつつ、「待っててくれたんだ!」と喜ばせる王道パターンですね、わかります。じゃあ自分から電話すれば?と思ってしまうんですが、それじゃダメか…。
     
    さらにメガネ男子の「たっくん」にコンタクトを勧めたり、一人称も「僕」より「俺」のほうが男らしい感じがすると言ってみたり、さりげなく自分の好みを伝えるマユ。
    気分を悪くするでもなく、「たっくん」は彼女のために奔走します。これが恋愛パワーか…!
    相手を自分好みに作り変えるなんて…マユ、おそろしい子。
     
     
    顔よし頭よし家柄よし!超ハイスペックのライバル
     
    この話にはもう1人、重要な女性キャラクターが登場します。
    東京に転勤になってしまった「たっくん」と同じ部署にいる石丸美弥子。彼女も新入社員で、しかも向かいの席。なんだか波乱の予感。
     
    美しい声と顔・さらさらの黒髪・抜群のプロポーションと、その描写はマユとは対極。
    「たっくん」も「さすがは東京、まいりました、といった感じ」とベタボメです。
    背筋の伸びた涼しげな女性を思い浮かべると同時に、溢れるような自信を感じました。
    自分がどう他人から見えているのか、自分の魅せ方というものをきちんと理解しているというか…それも大学時代、劇団にいたと知って納得。
    さらに一流大学卒で親もお金持ち。「たっくん」も作中で述べていますが、女性として完璧な存在です。
     
    美弥子は「たっくん」に好意を寄せていることも隠しません。
    マユの存在を知っても、しなやかな肉食獣のように諦めずにチャンスをうかがっています。「ドロボウ猫め!」となりそうなところですが、それが彼女のすごい所で、嫌味な感じがしないんですね。さばさばした雰囲気のせいなのでしょうか。
    相手がノリ気なのかどうかも見抜いているというか。ダメそうな時はスッと引いて、でも爪痕はしっかり残していく、みたいな。
     
    それにしても「もし予定がないなら、ドライブに誘ってくれない?」という誘い方、かっこいいな〜。めちゃめちゃ美人の女性からこんな風に声を掛けられたら私が「たっくん」の立場でも断れる気がしない。
    マユとはまた違ったタイプの小悪魔っぷりでした。
    でも自分に自信がないと、彼女のような振るまいは難しいだろうな…。
     
     
    大事なのは「自分だけの武器」を磨くこと?
     
    読んでいて感じたのは、自分だけの武器を持つことが必要かなということ。
    美弥子のようにスバ抜けたスペックはなくても、「自分」を客観的に見て、理解して、自覚して、どんな小さな石でもいいからを磨いて行くことが重要なのかも。
     
    内容について書きたいことはいっぱいあるのですが、種明かしに繋がってしまう!話したくてもできない!くやしい!
    このトリックをどのように映画で表現しているのか気になるところです。
    小説でも映画でも『イニシエーション・ラブ』を初めて見る時は、ぜひ核心に迫るネタバレ情報一切ナシのまっさらな状態で楽しんでくださいね。