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《ヒモノ図書館員の恋愛強化書》キッカケは営業メール?『だれかの木琴』

  • 2016年03月11日  猫元 わかば  



    自分に向けられた男性の笑顔や言葉にドキッとしたことはありませんか?特別な意味はないのに、「もしかして…」と一瞬でも思うと、とたんに相手のことが気になりはじめます。それは「営業メール」も例外ではない!?
     
     
    男性と話をしていて「もしかしてこの人…私に気がある!?」と胸を高鳴らせた経験のある方は、少なからずいるのではないでしょうか。
    実際は恋人がいたり、みんな平等に優しく接するタイプの人だったりするわけですが…。
    「もしかして!?」とドキドキしている間は、恋をしているみたいで楽しいものです。
     
    今回はご紹介するのは、店員さんの<お愛想>がきっかけで、ふつうの主婦が異常な執着に囚われてしまう…というちょっとスリリングなお話。
    2016年9月に公開が予定されている映画の原作本、井上荒野さんの『だれかの木琴』です。
    映画では主人公の小夜子を常盤貴子さん、美容師の海斗役を池松壮亮さんがつとめ、名匠・東陽一監督がメガホンを取ります。
     
     
    ■『だれかの木琴』あらすじ
     
    主婦・小夜子は新しく建てたマンションに家族で引っ越しをしてきたばかり。
    近所にある美容室「ヘアサロンMINT」で髪を切ってもらい家に帰ると、担当だった美容師・海斗から小夜子の携帯にメールが届いていました。
    内容はありがちな営業メール。それにもかかわらず、小夜子は返事を出しました。
    小夜子からのメールに驚きつつも、固定客をつかむチャンスだと考え、海斗もまたメールを返します。
    メールをやり取りするうちに小夜子は海斗のことばかり考えるように。
    次第に海斗に対して執着を見せ始め、だんだん行動がエスカレートしていきます。
     
     
    ■マジメな主婦が恋する少女に!?
     
    小夜子は旦那さんと中学生の1人娘を持つ、いわゆる<普通の主婦>です。
    とても丁寧に家事をこなす奥さんというのが私の第一印象でした。
    娘が学校から帰って来て「おなかがすいた」といえばアルミホイルをまいてクロワッサンを温めて、ウインナーを焼いて、野菜もはさんで…とひと手間かけた軽食を作ってくれる。
    旦那さんが職場の同僚をつれてきても嫌な顔せずに料理に腕を振るう。
    掃除も市販の洗剤ではなく、自分でエッセンシャルオイルをまぜたものを使う。
    家にいるときでも、身だしなみとして起きたらお化粧をする。などなど。
     
    ちょっとマジメ過ぎるかなあ…と思う所もありますが、家族が気持ちよく生活できるように家事をカンペキにこなす理想の奥さん・母親の姿です。
     
    そんな小夜子が、美容室でたまたま髪を切ってもらったのが海斗というオニーチャン。
    お決まりの営業メールをもらってから、海斗を意識するようになります。
    それからというもの、何だか小夜子は毎日そわそわ。
    普段は選ばないデザインのワンピースを買ってみたり、美容室にいくとき気合を入れ過ぎてメイクが濃くなっちゃったりとすっかり「恋する女子」になってしまいます。
    ワンピースを着て旦那さんに「どう?下品すぎない?年に合わない?」と気にする姿が可愛らしくて、印象的でした。
    年齢を重ねても、結婚しても、娘ができても“女らしく”や“女であること”をやめないその心意気!
    見習わなくてはなりませんね…。
     
     
    ■営業スマイルもやりすぎ注意!? 
     
    海斗が小夜子に出したメールは「ご来店ありがとうございました!」から始まり、スタイリングのコツを簡単に記したものでした。
    海斗は今のMINTにやってきたばかり。
    「店が変わっても通うよ」と言っていた常連さんも顔を見せてくれない。
    焦っていたところに小夜子から返信があり、お客さんを逃さないため「チャンスだ!」とちょっと張り切ってしまった。
    「これからはこいつにまかせてください」と自分の手の写真を送ったり、たまたま(?)店の前を通った小夜子と目が合ってにっこり微笑んで見せたり…。
     
    「媚び売った自分がちょっとやになって」ともらしているので、多少やりすぎた自覚はあるようですが…ダメダメですよ、海斗くん。
    いやね、こっちだって営業だと分かってはいるのですよ。頭では。
    でもね、出会いがなく長らく恋愛から遠ざかっている非モテでヒモノの私みたいな女はね、ドキッとしちゃいますよ。
    2通目のメールで男性の手の写メつきとか、微笑みかけられたりしたら!免疫ないんだから!
    男性のみなさん、「この人、慣れてないな」と思ったら、ぜひ愛想は控えめでお願いいたします。心臓がいくつあっても足りません。
     
     
    ■原因は夫婦関係にアリ?
     
    小夜子が海斗に入れ込んでしまった理由は、夫婦関係にあるのではと感じました。
    一見すると、小夜子と夫・光太郎の関係は悪くない。ですが、時間を重ねてきた弊害といいますか、どこか冷めている部分があるのです。
    物語は小夜子視点、光太郎視点、海斗視点ところころ視点が変わります。
    そのせいで噛みあっていない状況がまざまざと分かる。
    光太郎視点では夫婦の会話を楽しんでいるように見えても、小夜子側から見ると「こんな話がしたいわけじゃない」と思っていたり。
    「よい夫」の役割を演じようとすることが小夜子にとって絶望になる、という皮肉なシーンもありました。
    小夜子と光太郎夫婦は意外とギリギリのところで踏みとどまっている夫婦なのかも。
    互いに嫌っている訳でも、愛がない訳でもないのですが…すべてが「義務」になりつつある。夫婦って難しいですね。
     
     
    ■好きな人にはたまらない昼ドラ系小説!
     
    作中には小夜子が海斗に執着しはじめる明確な理由は描かれていません。
    あえて言うなら「魔が差した」でしょうか。逆にそれがリアルっぽく感じられました。
    おそらく小夜子自身も分かっていないのだろうな…。
    分かりやすく「ひとめぼれしちゃった!」とか「海斗さんのこと忘れられないの!」的な不倫の恋に燃え上がる…ではないところがこの話の面白い所であり、怖い所でもあります。
     
    本来は料理も掃除もカンペキな素晴らしい奥さん。
    そんな小夜子が海斗への想いを募らせ、変化していく様を常盤貴子さんがどう演じるのかとても楽しみです。
    昼ドラ系がお好きな方は楽しめるはず。ぜひチェックしてみてくださいね。