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《ヒモノ図書館員の恋愛強化書》ニシノユキヒコに見るダメ男の魅力

  • 2015年06月30日  猫元 わかば  



    周りに「何でそんな男と付き合ってるの!?」という女子はいませんか? 少し前に「ダメンズウォーカー」なんて言葉もはやったぐらい、ダメ男は一定の需要がある様子。今回はそんなダメ男の魅力(?)やダメ男に惹かれる女子の気持ちが分かる(かも?)1冊をご紹介します。
     
     
    ダメ男の生態にせまるべく、取りだしたるは川上弘美さんの『ニシノユキヒコの恋と冒険』です。
    すでに竹野内豊さん主演で映画化されております。ご覧になった方もいらっしゃるのではないでしょうか。
    映画のほうは2015年5月9日に授賞式が行われた「第24回日本映画プロフェッショナル大賞」いわゆる<日プロ賞>にて8位を受賞。みごとTOP10入りを果たしました。
     
     
    内容は「ニシノユキヒコ」という1人の男性をめぐるお話です。
    この男がまた罪なヤツというかダメ男というか酷い男なんですよ!
    登場するのは「ニシノユキヒコ」に本気で恋したり愛してしまったり、あるいは好きになるまい・愛すまいと自分を戒めたり、好きになれなかったりする女性たち。
    ニシノユキヒコの毒にあてられた10人の女性、それぞれの視点から「ニシノユキヒコ像」が描かれています。
    ニシノだったり、西野くんだったり、ユキヒコだったり、幸彦だったり。
    中学生、大学生、20代、30代…とさまざまな時代の「ニシノユキヒコ」が登場し、私たちは、そのどうしようもなく魅力的で可哀想な男の生涯を追うことになります。
     
     
    ●ニシノユキヒコとは?
     
    なかなかの男前。清潔感がある。やさしい。礼儀正しい。笑顔のいい。
    そんな評価をされるほどイケメンの条件をしっかり満たしているニシノユキヒコ。
    当然のように常に複数の女性の影がちらついています。
    それを隠しもしない。2人きりでいても他の女性からひっきりなしにケータイに電話がかかってくる。嫌な顔1つせず、電話にでてやる。これだけで結構ひどい。
     
    強烈な印象を残して女性の心をさらっておきながら本気で愛することはなく、最終的には女性に見限られ、離れられてしまう。
    「ぼくが間違っていることは僕がいちばん知っている」とか
    「からだは律儀じゃないけど、心の中はいつでも律儀」とか
    「1億円あったら、知っている女の子をみんなしあわせにしてあげられるかな」とか。
    ムカっ腹が立つセリフを吐きつつ、女性から別れ話をされると子どもみたいな顔で淋しがる。
    とにかく孤独で淋しくて、でも誰かと居続けることができない。望んでもいない。不思議に残酷な男性です。
     
     
    ●ニシノユキヒコと「同類」の女性も
     
    物語の中には「ニシノユキヒコ」を愛せなかった女性もいます。
    例えば20歳になるかならないかという女の子・愛。ちなみにこのとき「西野さん」は50代も半ばになったところ。
     
    ニシノユキヒコはいいます。
    ――愛だけは、ちがうよ。
    ――今まで僕が知っている女のコたちと、何かがちがうんだよな。
     
    愛は「常套句だよね、結婚詐欺師みたい」と冷静に、そんな「西野さん」を眺めます。
    「西野さん」とお付き合いをするようになると、アプローチは勢いを増すばかり。
    会社を抜け出して会いにきたり、夜まで待てないと言ってみたり、声を直接聞きたくてと言ってみたり。
     
    「どうしちゃったんだろう、僕は」なんて本人が言う通り、読みながらこちらも心配になるほど。
    それも50半ばの男性が。ハタチそこそこの女のコ相手に。
    愛が冷静なぶんだけ、異様さが浮かび上がります。
     
    「僕と愛は似てるから」。ニシノユキヒコは言います。
    西野さんに「僕のこと好き?」と聞かれるたび「好き」と即答していた愛。でも結局、最後まで本気で西野さんのことを好きでもなかったし、愛してもいなかった。
    それをかぎ取った上での執着だったとしたら…本当に「ニシノユキヒコ」という男性は悲しい人だな、と思わずにはいられませんでした。
     
     
    ●ハマる人はドツボにハマってしまう魔性の男!?
     
    甘ったれで、愛されたいくせに愛されると逃げるし、そもそも愛されることを望んでないし、でも淋しいとか言うし、「本気で自分のことを好きにならないだろう」という女性にはぐいぐいアプローチするし。
    彼女がいるのに他の女性と関係を持ってしまって「これって、もしかして、ふたまた?」なんてびっくりしたような顔をするし。
    別れ際には「どうして」とか「こんなに●●のこと好きだったなんて知らなかった」とか未練タラタラで、女々しい。
    「ムリ、ムリ!うざいし、腹立つ!」となる方もいると思いますが、私は見事に「ニシノユキヒコ」にハマってしまう側の人間だったようです。
     
     
    なんというか1言1言に純粋さが見えるんですよね。
    その時その時は、本気なんですよ、「ニシノユキヒコ」という男性は。きっと。本気だと思い込んでいる。
    好きだったんだなあ、好きになりたかったんだなあというのが、ヒシヒシと伝わってくる。
    だからこそタチが悪いのですが…。
     
    最高にダメな男だけど同じぐらい可愛いし。本当どうしようもないなあと思いつつも、惹かれずにはいられない。
    彼の行き場のない悩みを「何とかしてあげたい」って思っても、それをニシノユキヒコ自身が本心のところでは望んでいない。
    ああなんて無限ループ。かなしくてかわいそう。
     
    最後までニシノユキヒコを好きになれなかった愛は「もったいないことをしたわね」とある女性に言われます。苦役だけどニシノを愛することは楽しい、とも。
    そんな魔性の男が実在しなくてよかった…と思いつつ、でもやっぱりちょっと、会ってみたいかなあ。ニシノユキヒコっていう人間に。
    まずいなあ、わたし、ダメンズウォーカーのきらいがあるかもしれない。
    本を閉じた後に思わずうな垂れてしまった猫元でした。