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《ヒモノ図書館員の恋愛強化書》ヒモノ女、恋に奔走!『オレンジシルク』

  • 2016年06月24日  猫元 わかば  



    今回の小説の主人公は30歳、恋愛経験なし、現在進行形で彼氏ナシの猫元に負けず劣らずのヒモノ女子。同じくヒモノな友人に彼氏ができ焦っていると偶然見かけたマジシャンに一目ぼれ!初めての恋に右往左往してしまいます。
     
     
    引いたカードの模様を当てたり、何もない所からハトを取り出したり…魔法のようなトリックで楽しませてくれるマジシャン。
    私はテレビでしか見たことがないのですが、タネを見破ろうとしても1度も成功したことはありません。
    マジック自体の腕はもちろんですが話術や人の注意を向けさせる技術も目を見張るものがあります。
    今回は、そんな<マジシャン>にまつわる小説をご紹介します。
    神田茜さんの『オレンジシルク』です。
     
    この小説を手にしたきっかけは、主人公が私と同じヒモノだったから。
    30歳を過ぎて恋愛経験なし。そんな主人公がイケメンのマジシャンに恋してしまいます。
     
    ちなみにタイトルにある「シルク」はいわゆるスカーフのこと。
    マジシャンたちはスカーフではなくシルクと呼ぶのだとか。
    本作では女子の友情や遅咲きの恋、人との出会いや成長が描かれています。
     
     
    ■『オレンジシルク』あらすじ
     
    30歳になっても恋愛経験がなく、実家と職場を行き来するだけの生活を送っている印子(インコ)。
    ある日、同じ境遇の友人・キヨミに呼び出され、彼氏ができたことを告げられます。
    ちょうど大道芸フェスに合わせて行われているフリーマーケットに出店中だという彼氏。
    キヨミに連れられ会いに行ってみると、可も不可もない、キヨミには不釣り合いなぐらいの「普通の男性」がいました。
    何でも彼の本業は「ヨネ太郎」という名前で活動している手品師だといいます。
     
    2人でフリーマーケットやお祭りをひやかしていると、大通りに人垣が。
    そこには女性客に囲まれながらマジックを披露する男性マジシャンがいました。
    芸を見せてくれたお礼にと印子が投げ銭を渡しに行くと「お金は受け取ってない」と返され、代わりにマジックバーの割引券をもらいました。
    それからというもの、印子はその男性マジシャンとマジックのことが頭から離れなくなってしまいます。
     
     
    ■恋愛以上に複雑かも!?女の友情
     
    30歳・恋愛経験なし、印子いわく「負の引力で引き合った」15年来の付き合いの友人・キヨミ。
    同類だと思っていたキヨミに彼氏ができたと知り、印子は大きなショックを受けます。
    彼氏の話をするキヨミが勝ち誇っているように見えてしまい、(思い込み半分、正解半分なんじゃないかな)
    「彼氏と会って欲しい」と言われても、会いたいような会いたくないような微妙な心境。
    売っている草木染の商品について「これ何で染めたの?」と聞く印子によどみなく「紅茶」「たんぽぽ」「ヨモギ」と答えるキヨミに彼と過ごした時間を見せつけられてしまいます。
     
    「負けた」と思いながらも、キヨミのことを自分以上に知っている存在が現れたことにもショックを受けたり、「キヨミに彼氏ができたのなら、私にも恋愛ができるのでは?」とポジティブな気持ちになったり。
    浮いたり沈んだりする印子の気持ち、身に覚えのある女子もいるのでは!?
    私も友人に彼氏ができたり結婚したりしたとき祝福したい思いと同時にちょっとした寂しさを感じたものです。
     
    キヨミが話す内容も彼氏の話題ばかりで、すっかり別人のよう。
    置いて行かれた気分になっている印子の肩を叩いて、慰めたくなりました。
     
     
    ■初恋の相手はイケメンマジシャン!
     
    そんな印子が初めて恋したのが、年下のマジシャン・タカミユウトです。
    もらったチケットでマジックバーに行くとお手伝い役として指名され、ステージに上がることになります。
    急接近したことでますますユウトを好きになってしまった印子はすぐさま行動にでます。
    なんとそのマジックバーで働くことにしたのです。といっても、本職である銀行は副業を認めていないので、給料はナシの<お手伝い>として。
    不機嫌な顔やヒゲのそり残しなどステージ裏のユウトを見る度、よろこびで胸がいっぱいな印子はそれまでのヒモノっぷりはどこへやら。すっかり恋する女の子です。
     
    お付き合いが始まってからも、ユウト好き好き!な姿勢はくずれません。
    生活力のないユウトの代わりに部屋の掃除をして、食事の用意をする。
    最初は満足していた印子でしたが、だんだんと手もつないでくれない、恋人として誰かに紹介することも好きだと言ってくれることもないユウトに不安を抱き始めます。
    印子が別れ話を切り出すと「家事ばっかりやらされるのがイヤになったんだろ」って…分かってるし、こいつ!
    マンションのエントランスで言い合いをしていると、様子を見に来た管理人に「ただの痴話喧嘩です。恋人です」っていままで1度も使わなかった「恋人」という言葉を口にするし!
    ここでかい!ここで言うのかい、タカミユウト!
    印子は「聞きたくなかった」「嬉しいじゃないか」と悲しいと嬉しいに板挟み状態。
    恋愛経験のないアラサー女を、それも別れを決意した段階で一喜一憂させるなんて、なんたる仕打ち!
    もちろん、ユウトにも言い分はたくさんあったのでしょうけれども。
    すっかり印子に感情移入をしていた私は「こいつアラサーの敵だ…!」と立腹してしまいました。
     
     
    ■これを読めばあなたもチャレンジ女子に!?
     
    印子の恋はもちろんですが、もっと印象的なのは彼女の成長していく姿です。
    「タカミユウト」を通してマジックに興味を持った印子が、さまざまな人たちと出会い、世界を広げていく。
    勤め先の上司がマジックをやっていたり、お客さんのおばあちゃまが名の知れた奇術師だったり。意外と狭いぞ、マジック業界。
    ユウトへの恋心がきっかけで「マジックをやってみたい!」と思いはじめた印子は、ついにはプロのマジシャンに弟子入りするまでになります。
     
    生活にハリのなかったアラサー女子が目標を見つけて新しいことを始める。
    その姿はとてもイキイキ、キラキラしています。
    マジックバーの手伝いをすることしかり、プロに弟子入りするもしかり、印子の決断力はなかなかのものです。見習いたいなあ。
     
    新しいことにチャレンジしたいけど…と尻込みしている女子に特におすすめしたい1冊。
    きっと印子が背中を押してくれますよ。私もやってみたかった習い事、始めてみようかな…。