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《ヒモノ図書館員の恋愛強化書》優しい三角関係『流れ星が消えないうちに』

  • 2015年11月06日  猫元 わかば  



    ドロドロの愛憎劇、切ないラブストーリー、男性をめぐってのキャットファイト…様々に描かれる『三角関係』。現実にはゴメンですが創作の世界なら立派なスパイス!今回は胸が温かくなる三角関係のお話をご紹介します。
     
     
    今回ご紹介する1冊は、橋本紡さんの『流れ星が消えないうちに』です。
    実写化が決定した本作。いよいよ2015年11月21日より映画が公開されます。
    主演は女優でもありファッションモデルでもある波瑠さん。
    恋人に先立たれ、上手く前へ進めずにいる主人公・奈緒子を演じます。
    元恋人と、今の恋人と奈緒子の3人がつむぐ、せつなくも美しい恋愛小説です。
     
     
    ●『流れ星が消えないうちに』あらすじ
     
    交通事故により大好きな恋人・加地くんを亡くした奈緒子。
    それからというもの、奈緒子は彼との思い出がつまった自分の部屋で眠れなくなり、家の玄関で寝るようになりました。
    現在の奈緒子の恋人は、元恋人である加地くんの親友・巧くん。
    加地くんは、巧くんにとっても大切な存在。
    彼の喪失と向き合えないまま、目をそらしながら2人は恋人として日々を過ごしていました。
    そんな奈緒子の元に、仕事の関係で母と妹を連れ、佐賀県へ引っ越していた父親がやってきます。
    「家出をしてきた」という父を家に迎え、父娘の2人暮らしが始まります。
     
     
    ●あたたかくて切ない、奇妙な三角関係
     
    「元カレの親友が今カレ」
    という、恋愛小説やマンガでは割とありふれた設定の本作。
    どれだけ泥沼展開なのだろう…。他人の不幸は蜜の味。愛憎劇大好き。ワクワクしながら読んでいると、何だかとても和やなムード。
    どちらかというと慎重で大人しく家で本を読むのが好きそうなタイプの奈緒子と、明るく前向きでサッカー少年だった巧くんは幸せそうなお似合いカップルにしか見えません。
     
    しかし奈緒子の中には亡き恋人・加地くんがどっかりと座りこんでいます。
    加地くんは1人でふらりと旅に出た外国の島で交通事故にあい亡くなりました。
    しかも日本では「女の子と一緒にいた」「死に際に手を握り合っていた」「彼女を守ろうとした!」と恋人同士で旅行に来ていたかのように報道されてしまった。
    まさか加地くんが、と潔白を信じる一方で最後の最期にとなりにいるのが自分ではなかったこと、本当にその女の子とは何にもなかったの?という疑念が奈緒子の中で渦巻いたままです。
     
    あ〜これ気持ちはわかるけど今の彼氏かわいそうだなあ…と同情していると、巧くんは巧くんで、親友であった加地くんのことが忘れられない。
    実は加地くんと奈緒子が付き合うきっかけをくれたのは、加地くんなんですよね。
     
    2人はお互いに加地くんのことに向き合えずにいます。
    奈緒子は加地くんのことが忘れなられないことを申し訳なく思うし、巧くんは奈緒子の心情を察しているし気持ちもよくわかる。
    だから2人の間では不自然に加地くんの話題が出てきません。内心では加地くんのことばかり考えているのに。
     
    とにかく奈緒子と巧くんも、奈緒子と加地くんも、巧くんと加地くんも、どの関係ももどかしくて切ない!
    特に奈緒子視点のお話は「これ男性が書いたの!?」とビックリするぐらい可愛くていじらしいのです。いや逆に男性作家だからこそなのかな…。
    自分の中からも奈緒子の中からも加地が消えないなら、加地と一緒に3人で生きていけばいいじゃん!と開き直れたのは巧くんの前向きさがあってこそ。
    <最愛の人の死>というテーマなのに暗くも重くもならないのがすごい。
     
     
    ●ワキ役の恋愛模様にも注目!
     
    メインは加地くん、奈緒子、巧くんの三角関係なのですが、他にもイロコイ沙汰が発生しております。
    まずは奈緒子の妹の絵里ちゃん。
    彼氏の浮気が発覚し、キッパリふってやったけれど彼氏の泣きながらの電話でほだされてしまいます。
    まだまだ好きなんですよね。許すか許さないか決めかねているようなので、もしかしたら彼氏にワンチャンあるかも?
     
    そしてイチオシが巧くんのお姉さんと巧くんと高校から付き合いのある山崎先輩です。
    同じボクシングジムに通っている先輩は、マッチョで胸毛のあるゴリラ系男子。
    先輩はお姉さんのことが好きなのですが、分かりやすいイケメンがタイプのお姉さんはまったく興味なし。
    言うなればジャニーズvsゴリラですよ。なんていうかもう種族から違う感じですよ。分が悪すぎる。
     
    しかし巧くんと一緒に山崎先輩のプロテストを観戦したところから「おやおや?」という展開に。
    1枚も2枚も上の相手に、山崎先輩はボコボコにされてしまいます。
    ノックダウンしてしまった先輩に、思わず「立て! 山崎君! 立って!」と声援を送るお姉さん。
    その叫びはしっかり届いて、満身創痍ながらも山崎先輩は立ち上がります。
    勝負には負けてしまったけれど、ちゃんと立ち上がったんですよ。フラフラになりながらも!
    テスト後、山崎先輩は「声が聞こえたんですよ」「瑞穂さんが来てくれたから頑張れました」
    と感謝を述べます。これもう告白ですよ告白!
    ストレートに「好きだ」って言われるよりグっときますよ。
    お姉さんもまんざらではないようで…今後の2人が気になります。
    ゴリラ先輩には頑張ってほしい!本当かっこよかったので!
     
     
    ●あえて描かれない結末に希望を感じる
     
    お父さんの家出の件、巧くんのお姉さんと山崎先輩、これからの巧と奈緒子、妹ちゃんの恋愛模様。
    気になる様々な問題の結末は作中で描かれていません。
    でも読み終わったときには「みんな一歩踏み出して、明るい未来へ向かうんだ」「きっとみんな幸せになれるだろうな」という確信が芽生えているはず。心が温かくなれる小説でした。映画を見る前に原作をチェックしてみてはいかがでしょうか。