TOP > イククルコラム > 《ヒモノ図書館員の恋愛強化書》初恋にひたる「よだかの片想い」

《ヒモノ図書館員の恋愛強化書》初恋にひたる「よだかの片想い」

  • 2015年07月03日  猫元 わかば  



    自分の「初恋」がいつだったか覚えていますか?小学生・中学生…ちょっとおマセに幼稚園?高校や大学という方もいらっしゃるでしょう。今回ご紹介するのは、24歳にして初めて「恋」を体験する女性のお話です。
     
     
    今回取り上げるのは島本理生さんの『よだかの片想い』です。
    主人公は24歳の大学院生。物理専攻。ほうほうリケジョモノかあ…と読み流しそうになった所で目についたのが、「24歳にして初恋」という1文。
    「これは読まねば!」と思い急いで本を探しに行きました。
     
     
    <あらすじ>
     
    生まれつき顔に大きなアザをもつ女性・前田アイコ。
    コンプレックスを抱えるアイコは自分に自信が持てず、なるべく目立たぬよう地味に生きてきました。
    ある日、出版社ではたらく友人から「顔にアザやケガのある人たちのルポルタージュを作るから、参加してほしい」と相談を受けます。
    悩んだ末に取材を受けることにしたアイコは、なんと表紙も飾ることに。
    出版された書籍はまたたくまに評判となり映画化の話が持ち上がります。
    映画化にあたり企画として行われた映画監督・飛坂との対談をきっかけに、アイコは次第に彼に惹かれてゆきます。
     
     
    ●アザが「コンプレックス」になったのは「気遣い」のせいだった
     
    最初、顔のアザはアイコにとってコンプレックスではありませんでした。
    小学生のころは「琵琶湖だ!」なんてクラスの男子にからかわれてちょっと嬉しく思っていたぐらい。
    コンプレックスになったきっかけは、先生がその男子を叱った一言。
    「なんてひどいことを言うんだ!」というものでした。
    そこで初めてアイコは、この顔が、顔にあるアザが、周りから見るとおかしいもの、かわいそうなもの、同情されるものだったのだ、と知ります。
     
    冒頭にこのシーンがあるのですが、とても悲しい。
    先生に悪気はなくて、アイコのことを思って男子を注意してくれたんですよね。
    でもアイコにとっては青天の霹靂で、その気遣いは届くこともなく、先生の傲慢さが浮き彫りになってしまう。
    目立ってしまう顔にある、大きなアザ。
    「女の子だし、きっと気にしているはずだ」と同情する先生が間違っていたわけじゃない。
    でもアイコにとって、先生の言葉は正解ではなかったんですよね。
    本当に胸が痛くなる印象的なエピソードでした。
     
     
    ●初めて好きになったのはまったく別世界の人
     
    アザがコンプレックスとなってしまったアイコは他人と積極的な関係が築けぬまま月日が流れ、今では24歳の大学院生。
    そんなアイコが初めて恋をしたのが、映画監督の飛坂さんです。
    人なつっこい目と犬の散歩にでも出かけそうな気軽な感じが印象的な、魚と日本酒が大好きな30代の男性。
     
    飛坂さんがアイコに興味を持って好意を抱いたのも、映画監督と言う職業柄というか、一般人とは違う感性の持ち主だったからなんでしょう。
    そして恋愛経験のないアイコにカケヒキなどできるはずもなく良くも悪くもストレート。「何が食べたい?」と聞かれて「焼き肉」とためらいもなく答えてしまう。
    おそらく飛坂さんの周りには、女優やアイドルがひしめくキラキラした芸能界には、そんな女の子はいなかった。
    飛坂さんからすれば新鮮で、面白かった。
    それこそ映画のネタを探すのと同じ種類の興味でもってアイコを見ていたのだと思います。最初は。
     
    またこの飛坂さんが!憎たらしいんですよ!
    芸能関係者ということで色々と手馴れているし!
    アイコと出版社のスタッフと飛坂さんで打ち上げをやるシーンがあるのですが、飛坂さんが注文しようとした料理をすでにアイコが注文していて、もう頼みましたというと「え、本当に。気が合うな」と別の料理を注文します。
    この自然と好意的なセリフを混ぜる感じ、ずるい。
    初心者は、そういうのね、過剰反応してしまいますから。
    さらっと「気が合うな」とか言われちゃうと、ドギマギしちゃいますから!
     
     
    ●やっぱり初恋はうまくいかない?
     
    めでたくお付き合いをすることになった2人ですが、住む世界の違いゆえ、すれ違いも少なくありません。
    「幸せにしてあげることはできないと思う」という飛坂の言葉に最初は「なにもいらない」と答えていたアイコも、恋をして、付き合って、愛されることを知ってしまったあとでは、やっぱり物足りなくなってしまう。
    自分は変われない・変われる訳がないと思っていたアイコが成長していく姿と自分を変える気も、変わる気もない、どこか諦めたような飛坂さんの描写が対照的です。
     
    それにしても、この手の話に登場する「イケメンで、女性にモテて、華やかな生活を営んでいるけど本人なりに誠実」な男性キャラクターって通過儀礼にされてしまいがちですね。
    イケメンゆえの不幸なポジション。ちょっと同情してきた。
     
     
    ●初恋を懐かしく思い出したくなる小説!
     
    「初恋はかなわない」というジンクス。それもそのはずだよなあと思うここ数年。
    幼稚園・小学校ならクラスメイトだとしても卒業後に学校が変わったり、引っ越したりと物理的に距離が離れる。
    高校生や大学生ならまだしも、相手が先生ならまず可能性はゼロに近い。
     
    でも成長していくための…うーん、なんだろう。土壌づくり? 種まき? といった感じでしょうか。何かしら自分の中に残るものがあるのは確かです。
    初恋気分にひたりたい方におすすめしたい1冊です。
    私も『よだかの片想い』を読んで、久しぶりに初恋に思いを巡らせたりしました。
     
    ちなみにみなさんは、初恋は何歳の頃で、相手は誰だったか覚えているのでしょうか。
    私は、小学1年生の入学式が初恋です。
    忘れもしない、幼稚園から続けていた習いごとで一緒だった男の子が、隣の席に座っていたんですよ!
    あれは衝撃でした…小学1年生ながらに運命を感じました。
    思えば1度に3人の男の子を好きになったりと、小学生の時が1番恋多きシーズンでした。
     
    しかし、母親にいわせると「初恋は幼稚園に上がる前」とのこと。
    なんでも近くに住んでいる3つ年上の男の子が大好きだったらしく「結婚して!」とチューしたらしい。
    何だその積極性は。まったく覚えていない。我ながら同一人物だと思えない。
    私の婚活は、齢3〜5歳にして終了していました。
    この時に一生分の積極性と恋愛成分を使い果たしたんだな…くっそー!ばかばか!