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《ヒモノ図書館員の恋愛強化書》年齢と向合う『エイジハラスメント』

  • 2015年07月10日  猫元 わかば  



    いつまでも若く、可愛らしくありたい。そう願ってコスメや食事・サプリ、マッサージなど「アンチエイジング」に心血をそそいでいる女子も少なくないはず。しかし確実に迫ってくる「オバサン」の影。あなたは年齢とどう向き合いますか?
     
     
    今回は7月からドラマも始まった、内館牧子さんの『エイジハラスメント』をご紹介します。
    タイトルからお察しの通り、ズバリこの本は「女の年齢」がテーマです。
    愛する夫のため、大好きな彼氏のため。そしてなにより自分のため。
    いつまでも「お若く見えますね」と言われたいと思っている女子は多いはず。
    『エイジハラスメント』はそんな女子の胸にグサグサと切り込んでくるお話です。
    「それは聞きたく(見たく)なかった…!」と思うシーンが多々ありますが、読ませる力が強く、ぐいぐい引っ張られるまま一気に読了してしまいました。
     
     
    ●あらすじ
     
    大沢蜜は「アラフォー」の足音が聞こえ始めた34歳の主婦。
    トンカツ屋でパートをしながら真面目な夫と可愛い娘にかこまれ順風満帆の生活を送ってしました。
    自身の美貌にも気を配り、努力を重ねる蜜でしたが、職場でのできごとや義理の妹・英美里の存在から、自分が「三十路女」「オバサン」であることを突き付けられます。
    さらに夫が若い女と浮気をしていることが発覚。
    少しでも「若さ」に近づくため、蜜は美容外科でアンチエイジングの施術を受ける決意をかためます。
     
     
    ●主人公は年齢が気になるアラフォー目前の女子
     
    人前では「年なんて気にならない」という態度をとりつつも、実は年齢がとても気になっている蜜。
    年を気にするのはカッコ悪いと思うものの、あと1年で35歳。アラフォーの仲間入りです。
    こっそり雑誌の美容法をメモするなどしっかりアンチエイジングの情報にアンテナを張っています。
     
    夫が蜜の年齢に対するこだわりに呆れがちなことから、日ごろ「若く見えるため」の努力をおしんでいない様子。
    そんな努力のかいあって、気合を入れて和装に身を包んだ姿は美容師に「20代半ばでも通ります。本当にきれい」とため息をつかれるほど。
    自分でも「そこらの34とは違うわ」と自信たっぷり。うらやましいです。
     
     
    ●ところが…強力な「若すぎる」ライバルが登場!
     
    そんな蜜の自信をゆらがせ、打ちのめす事件が続けざまに起こります。
    まずはパート先の創業祭。
    社員から直々に要人の接待を頼まれたにもかかわらず、当日になって「若い子がいい」と学生アルバイトと交代するハメに。
     
    次は同じマンションに引っ越してきた夫の妹・英美里の存在です。
    21歳の女子大生である英美里は、肌のはりやスタイルなどすべてに若さが溢れ、蜜は自分の年齢や本物の若さを意識するようになります。
    しかも英美里は品定めするような目を向けたり、蜜が「オバサン」であることを思い知らせるような言動をとってくる。
    この英美里の発言が納得できるだけよけいに腹立たしい。
    「『若い』と『若々しい』は全然違うよ。『若々しい』って言うのは、若くない人を必死こいてほめる言葉よ」とかね。
    蜜も負けじと「若いだけの女は怖くない」と応戦。
    2人の対決はハラハラ・イライラしつつも見どころの満載です。
     
     
    ●英美里が最大のライバルかと思いきや…!?
     
    トドメとばかりに蜜に災難が襲いかかります。
    蜜に美容外科へ行こうと決心させた、いままでマジメ一辺倒だった夫・直哉の浮気です。
    相手は高校時代のバスケットOB会で出会った女性・玲子。
    年齢は直哉より14コ下の22歳。英美里より1つ上の大学4年生です。
     
    玲子は獣医大学に通っていて馬が大好き。馬のことになると夢中になって他のことはどうでもよくなってしまうほどです。
    直哉は、蜜にはない「これだけは譲れない」という信念を持つ所に惹かれたわけで、年齢に惹かれたわけじゃない、と言い訳していますが…。
    いやね、キッカケはそうだったかもしれないけど、若い女の子とイチャイチャできて嬉しいっていう態度が見え見えなんですよ。
    ウキウキしちゃって、ディズニーランド行ってみたりね。
    それまで割と年齢を”重ねた”女性に好意的な意見を持っていただけに、思わずがっかり。
     
    直哉の浮気を知った蜜は、なにより浮気相手が若い女だったことにショックを受けます。
    中身で勝負できる相手ならまだしも、相手は10以上も年下。
    努力だけで埋め合わせるには、「若さ」はあまりに高すぎるハードルです。
     
     
    ●「年齢」「老化」とどう向き合うかを問う
     
    女性が持つ年齢に対する不安や、周囲から勝手におされる「オバサン」の烙印の理不尽さが描かれていて、頷きたくなるシーンがたくさんありました。
    20代、30代、40代、50代の女性が登場し、それぞれの年齢に対する考え方が見えるのも面白い。
    同時に、女性やメディアがこぞって「アンチエイジング」に飛びつく奇妙さや矛盾も感じられました。
     
    蜜の34歳という設定がまた絶妙。年齢や老化に対する焦りやコンプレックスにじりじりと追い立てられている様が本当にリアルです。
    私もそう遠くない間に、蜜の年齢になるからというのもあるのでしょうが…。
    1生涯からみれば30代なんてまだまだ若い。それは誰しも分かっているけれど、世間からオバサンと呼ばれてしまう年代なんですよね。
    もうじき60歳になる蜜の母親は「見た目より中身」だと言います。
    もちろん正論ですが、そこまで割り切れるかというと…まだまだ「若さ」を捨てられない、諦めきれない。そんなお年頃なのです。30代ってやつは。
     
     
    ●3年後には脱「エイハラ」な社会になっているのか?
     
    最終的な蜜の決断を「逃げ」と取るか「英断」と取るかは意見が別れるかもしれません。
     
    私が読んだのは2008年に発行された本だったのですが、
    「日本も外国も10年後には、続編を書けない社会になっている……と考えていいのだろうか」
    という一言で締められてる内館さんによるあとがきも必見です。
    最近になって文庫版も発売されたので、あとがきを読み比べてみると面白いかも。
     
    2018年まであと3年。
    『エイジハラスメント』を笑えるような社会になっているのか…。私はちょっと難しいんじゃないかな、という気がしています。