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《ヒモノ図書館員の恋愛強化書》彼氏は54歳!?『お父さんと伊藤さん』

  • 2015年12月18日  猫元 わかば  



    「年上が好き」な女性でも恋愛対象になる年齢の範囲は異なるはず。5歳?10歳?もっと上もOK!な方もいるでしょう。今回ご紹介する小説の主人公は20年上の彼氏と同棲中。しかも54歳というアラフィフの男性なのです。
     
     
    今回ご紹介するのは中澤日菜子さんの『お父さんと伊藤さん』です。
    オレンジ色に黒いフォントで「お父さんと伊藤さん」と書かれただけのものすごくシンプルな表紙が目をひく本作。
    上野樹里さん、リリー・フランキーさん、藤竜也さんが主演する映画が2016年に公開されることになっています。
    親の介護や同居など、ありふれたリアルなネタを織り交ぜつつ、どこか日常離れした印象を受ける、世界観が絶妙なストーリーです。
    主人公は34歳の書店アルバイター女性・彩。同棲中の彼氏である「伊藤さん」はなんと20歳も年上の54歳。
    その伊藤さんがなんとも魅力的な男性なのです!
     
     
    ■『お父さんと伊藤さん』あらすじ
     
    書店でアルバイトをしている彩は20年上の彼氏「伊藤さん」と同棲中。
    ある日、疎遠だった実の兄からの電話を受け、会いに行ってみると「お父さんと一緒に住んでやってくれないか」とお願いをされます。
    兄夫婦は彩の父親を引き取り一緒に暮らしていたものの、子供2人の「お受験」を控え、兄嫁が子供の世話に父親の世話にといっぱいいっぱいになってしまい精神的にまいってしまったのだと言います。
    ただでさえ狭いアパートに伊藤さんと2人で暮らしている彩は、何とかその場を濁して兄と別れました。
    ところが2人で暮らしているアパートに帰ってみると、そこにはまさに先ほどまで話題の中心だった父親の姿が。
    しかも父親は「しばらくここで暮らす」と一方的に同居宣言。
    あれよあれよと奇妙な3人の共同生活が始まってしまいます。
     
     
    ■バツイチの年上カレシ「伊藤さん」 
     
    読んでびっくりしたのは、まず伊藤さんの年齢。
    34歳&54歳という20歳離れた歳の差カップルの設定はもちろんですが、読んでいても伊藤さんが50を過ぎたオジサマだとは思えない。
    若々しいというか、少年っぽいというか。
    ふわふわっとした柔らかい口調もあいまって、いわゆる不思議ちゃんの印象を受けます。
    そしてとっても生活力にあふれた男性。
    「給食のおじさん」の仕事に就いているだけあって料理はできる。煮魚からトンカツまでばっちりおまかせ。食事の支度もしてくれます。
    庭いじりが好きで、アパートにあるちょっとしたスペースを野菜畑にしてナスやオクラを育ててしまう。手先が器用。
    そして年齢を重ねただけあって、的確なアドバイスをくれる。
    ちょっと言葉足らずというか、不思議ちゃん特有の不思議な言動や空気の読め無さはありますが、それすら「わざとやってるのでは?」と思えるぐらい。
    彩のお父さんとの同居をすんなり受け入れたので、押しに弱いのかな?と思えば自分の意見をいうべき場所ではしっかり主張できる。
     
    なにより20歳年上というのが個人的にポイント高いです。
    年上大好きなので、読みながら何度「私と結婚してくれ!伊藤さん!!」と思ったことか。
    またサッパリした性格の彩とお似合いなんですよね。とても良いカップルだと思います。うらやましい。
     
    タイトルに名前があるだけあって、個性的なキャラクターをしている伊藤さん。
    謎の魅力がぎゅっとつまったアラフィフ男性なのです。
     
     
    ■不思議な魅力で周囲を巻き込む「伊藤さん」
     
    そんなハイスペック不思議系アラフィフ男な伊藤さん。
    独特な雰囲気と話術(?)で、次々と周りの人たちをトリコにしていきます。
    最初は「えっ、彩の20歳も年上…?」「彩はだまされているのでは…」と警戒していた彩のお父さんやお兄さんも、気づけば伊藤さんとわきあいあい。
    ギスギスしていた彩の家族も伊藤さんがいるとスムーズに会話がすすむ。
    伊藤さんのどこか浮世離れしたキャラクターが弛緩剤になっているのは言うまでもなく、相手が好きなもの・話しやすいことを見抜くのがうまいのだと思います。
     
    たとえば彩・伊藤さん・お父さんの3人でお出かけをするシーン。
    彩は必死にお父さんに楽しんでもらおうと映画やボーリングにつれて行き、最後に日帰り温泉に誘いますが、お父さんは「2人で行きなさい」「帰る」と乗り気ではない様子。
    そこで伊藤さんが「行きたいところがある」といってホームセンターによることに。
    3人で工具売り場のコーナーへ行くとお父さんが目をキラッキラ輝かせるんですね。そしてネジやドライバーの話に伊藤さんとお父さんは花を咲かせる。
    そのあと植木売り場にいってまた2人ではしゃいでいる。
    お父さんが好きそうなもの、よく知っていることを見抜いたうえでつれて行ったに違いないホームセンター。
    こういうことがさりげなく、嫌みなく、わざとらしくなくできる男性なんですよ伊藤さんは!
    最初はアパートで伊藤さんと2人きりになると逃げるように外出していたお父さんも、最後には「彩をよろしく」と頼むあたり、かなり気に入られたようです。
     
    しかし、こうして見るとすべての人間を牛耳って掌の上で転がしているように見えなくもない…。伊藤さん、おそるべし。
     
     
    ■人と人との距離感が絶妙! 
     
    彩が伊藤さんに対して「年の差を感じない」というだけあって、本当に20歳も離れてるの?と思いたくなるぐらい、2人の目線は同じ。
    彩が背伸びするでもなく、伊藤さんが彩に合わせて腰を折るでもなく、自然体のままなのに空気が似ているのです。
    恋愛に年の差なんて関係ない!と思える理想の年の差カップルでした。
     
    そしてお父さんを迎え入れても、彩と伊藤さんの関係が崩れないのがいい!
    普通なら「お父さんと一緒なんて困る」とケンカになりそうなものですが、そういうシーンは無い。
    むしろ「広い家に引っ越す?」なんて提案してくるぐらい。
    彩と伊藤さんはこの先なにがあっても乗り越えていけるんだろうなーという安心感がありました。結婚も秒読みかな?
     
    絶妙な人間関係はまさに映画向きだと思うので、今から公開が楽しみです。
    ぜひ、映画が始まる前に原作を手に取ってみてくださいね。