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《ヒモノ図書館員の恋愛強化書》恋の相手は銀幕女優とサンドイッチ!

  • 2016年07月01日  猫元 わかば  



    映画やドラマの出てくる俳優さんに、見惚れてしまったことがある女子は少なくないはず。今回は銀幕の女優に5年も片思いをしている男子が主人公。ひょんなことから憧れの君と急接近した主人公の姿は胸きゅん必至です!
     
     
    みなさんは映画館へ出かけることはありますか?
    私はほとんどレンタルで済ませてしまうので、すっかり足を運ばなくなってしまいました。
    でも大きなスクリーンでみるアクションシーンはやっぱり迫力がありますし、何より映画館で食べるポップコーンの味といったら!
    足を踏み入れた瞬間からポップコーンのいい香りがすると、ついつい1つ買ってしまいます。最近はいろいろなフレーバーが出ていて選ぶのもワクワクしますよね。
    「次来た時はあっちの味にしよう」と映画が目的なんだかポップコーンが目的何だか分からなくなったり。
    また暗いスクリーンの中で食べると、いっそう美味しく感じられるから不思議です。
     
    今回はそんな映画館に魅了された青年のお話をご紹介したいと思います。
    吉田篤弘さんの『それからはスープのことばかり考えて暮らした』。
    無職ですることがなく、ふらふらと毎日映画館へ足を運んでいた青年がいろいろな人たちと出会い、絆を深めていくあたたかい小説です。
     
     
    ■『それからはスープのことばかり考えて暮らした』あらすじ
     
    失業中の大里(オオリ)は、路面電車の走る町に引っ越してきたばかり。
    この町に決めたのは学生時代によく通っていた、古い映画を上映する映画館が歩いてゆける距離にあるから。
    引っ越してきて数日、大里は町ゆく人が「3」の印字された紙ぶくろを持ち歩いていることに気が付きます。
    大家さんいわく、それは商店街にあるサンドイッチ店「トロワ」のもの。
    「トロワ」のサンドイッチに魅了された大里は毎日のようにお店に通っていたのですが、親しくなった店主から「うちへ毎日来るんなら、働いた方が良い。お客さんをやめてほしい」と言われてしまいます。
    それもそうだな、と納得した大里は仕事を探すためにしばらく「トロワ」へ行くのをやめることにしました。
    ところが数日後、店に来なくなった大里を心配した店主さんから「誤解している」「お客さんを辞めてほしいと言ったのは、うちで働いてほしいからだ」とメールが。
    毎日食べるほど「トロワ」のサンドイッチが大好きな大里はさっそくお店で働くことにしました。
     
     
    ■銀幕の女優と遠距離恋愛中!?
     
    大里ことオーリィ(オオリ→オーリィと映画俳優のようなあだなをつけられた)いわく、彼は現在<遠距離恋愛>まっさい中。
    デートする場所はきまって映画館。それも古い日本映画を上映しているところでなくてはいけません。
    なぜかというと、そこでしか彼女に会えないから。
    デートのお相手は、昔の日本映画に出演する女優さんなのでした。
    オーリィが25回も見ている映画『豆腐と喇叭(ラッパ)』。
    この映画に登場している松原あおいさんが、彼の思い人であり、デートのお相手です。
    彼女との出会いは5年前。初めて『豆腐と喇叭(ラッパ)』を見たとき、女給役をしている「あおいさん」に一目ぼれ。
    それからというもの、合計2分12秒しかない彼女の出演時間のために足しげく映画館へ通っていたのでした。なんて健気!
     
    仲良くなったサンドイッチ店「トロワ」の息子・リツくん(小学4年生)から「好きな人とかいないんですか?ふつう、いますよね、オーリィさんくらいの歳になったら」と地味に痛い質問をされ、うっかり「遠距離恋愛」と言ってしまったオーリィ。
    自分がいるのは現実世界、相手は映画の中。生きている時代も違う。
    たしかに果てのない遠距離恋愛と言えるかもしれません。
     
     
    ■あこがれの彼女が映画から飛び出した!?
     
    オーリィくんが憧れの「あおいさん」に会いに映画館に足を運ぶと、必ずと言っていいほど見かける初老の女性がいました。
    「おばあちゃん」と呼ぶのをためらわれるぐらいシャンとして、おしゃれで、独特の空気感がある女性が、何故だか気になって仕方がありません。
    しかも、何だか見たことある面影…。
    そうです、その初老の女性はひとめぼれした憧れの君「あおいさん」本人だったのです。
    しかも「あおいさん」の孫とリツくんが友達だということが判明し、共通の話題ができたことですっかり仲良しになることができました。
     
    さらに「あおいさん」と急接近できるチャンスが。
    「トロワ」で新メニューとして出すスープの担当に抜擢されたオーリィ。
    味噌汁は得意料理だけれど、普通のスープを作ったことはなく、あれこれ悩んでいると「あおおいさん」の得意料理がスープだと判明します。
    自宅に招かれ、スープの作り方を教えてもらうことになったのですが…そのときのオーリィの浮かれようがかわいい!
    いつもは白か黒のスニーカーしか履かないのに、「あおいさん」のトレードマークである緑の帽子にあわせて深緑色のスニーカーを買ったり。
    「この際だから」とシャツもジーンズも新調。
    目ざとい大家さんに見抜かれてしまい、「何かあったの?女のひとに関係あること?」なんていじられてしまうほど、オーリィはうっきうき。
     
    何より歳をとった「あおいさん」もちゃんとオーリィの中で「憧れの女性」のままでいるのがとてもうれしかったです。
    若いころの面影を追いかけるのではなく、きちんと目の前の「あおいさん」にドキドキしちゃってるんですね〜。
    恋愛には発展しないだろうけども、憧れに限りなく近い恋心に一喜一憂する男子の姿はきゅんきゅんしてしまいますよ。
     
     
    ■あたたかい<おいしい>がぎゅっと詰まった小説!
     
    「もしかしてこれは恋愛小説かもしれない」という帯が目について手に取った本作。
    青年のあわい恋心、おいしいサンドイッチやスープ、人々のあたたかな交流がゆっくりと流れる時間と共に楽しめます。
    お年寄りと若者の組み合わせが好きな人、食べ物系の小説が好きな人にはぜひともおすすめしたい小説です。
    ハム、たまご、じゃがいものサラダなどなど「トロワ」のサンドイッチがとにかくおいそうでおいしそうで…。
    読み終わるころには頭の中がサンドイッチでいっぱいになってしまうかも!?
    本屋さんで見かけた際にはぜひ手に取ってみてくださいね。読書のお供にサンドイッチのご用意もお忘れなく。