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《ヒモノ図書館員の恋愛強化書》恋の花咲く50代『小松とうさちゃん』

  • 2016年03月18日  猫元 わかば  



    人が恋をしている姿はキラキラしていてとても魅力的。おせっかいだと分かりつつ、応援できることがあったら手を貸してあげたい…と思ってしまいます。今回は40代のオジサンが、50代のオジサンの恋を応援するお話です。
     
     
    みなさんはテレビゲームで遊んだ経験はありますか?
    スマホが普及して、アプリゲームを始める人が増えたこともありゲームに対する垣根…というかゲーム=オタク的な考えはずいぶん薄れてきたと感じる今日このごろ。
    私のスマホにもいくつかゲームアプリが入っていて、ヒマつぶしに遊んでいます。
    短い時間でさくっと遊べるパズルゲーム、キャラクターやアイテムなど収集魂が刺激されるRPG。ゆるーく遊べる放置系育成ゲームなどなど。
    ヒマつぶしのつもりが、気づけば何時間も経っていた…なんてことも。
     
    今回はゲームの中でも中毒性の高いネットゲーム、いわゆるMMOにどっぷりはまった40代のオジサンが、ひょんなことから飲み友達(これまたオジサン)の恋を応援するべくキューピッド役をつとめるお話。
    絲山秋子さんの『小松とうさちゃん』をご紹介します。
     
     
    ■『小松とうさちゃん』 あらすじ
     
    宇佐美朋之は40歳を過ぎたサラリーマン。すっかりネットゲームにハマってしまい、プライベートはおろそか。空いた時間をオンラインゲームに費やす日々を送っています。
    ある日、足しげく通っていた居酒屋で知り合った小松尚から、気になる女性・長崎みどりのことで相談を持ち掛けられます。
    出張先で偶然出会ったみどりに忘れ物を届けたところ、お礼と年賀状が届き、どう対応すればいいのか悩んでいるというのです。
    独身のまま50歳を迎えた小松が女性との距離に悩んでいる。
    「彼にしては珍しい!」と興味をそそられた宇佐美。
    女性の気持ちに疎い小松にやきもきしながらも「プレゼントを贈ってはどうか」と提案します。
     
     
    ■ちょっと天然な大学教授に胸キュン!?
     
    今回の物語の実質的な主役は、大学教授の小松さん(52)です。
    これまた例にもれず、学問に明け暮れていたためちょっとズレていて天然っぽい学者肌の男性。
    女性との出会いを積極的に求めてこなかったため、50を過ぎたいまでも独身を貫いている。
    そしてペットの犬と猫と文鳥の世話をするため実家暮らしをしています。
     
    52歳、独身、実家暮らし。一見マイナスイメージを持たれそうですが、いやいやどうしてこの小松さん、かわいらしい男性です。
    おっさん。ちょっと天然。そして何と言っても大学教授と私の好みドストレート!
    50を過ぎているとは思えないぐらい女性に慣れていない感じもギャップがあってグッド。
    お礼を買いに宇佐美と訪れたデパ地下で、本来の目的を忘れてお総菜屋さんの前で「中華もいいね」なんてニコニコしている姿もかわいい。
    大事そうに女性に贈るための焼き菓子を抱える姿も想像すると胸キュンしてしまいます。
    ウキウキソワソワしている姿は宇佐美から見ても「これじゃ雪も降るわ」と思うぐらいの豹変っぷり。
    年嵩の大学教授も、恋の前にはただの男子に返ってしまうみたい!?
    すべてオジサンだからこその可愛さ。
    年を重ねた男性だからこそ生み出せる愛らしさをぎゅっと詰め込んだような男性、それが小松さんなのです!
     
     
    ■齢50過ぎにして春が来るも…!?
     
    そんな小松さんが恋をしたのが同い年の長崎みどりさん。
    2人の出会いは新幹線の中。小松さんは講演する大学へ向かうため、みどりさんは家に帰るため。たまたま乗り込んだ新幹線の席が隣同士でした。
    みどりさんが新幹線の中に忘れたスマホを小松さんが拾ったことがきっかけで、2人は意図して再会することになります。
     
    同じ年だということ、さらに「文鳥を飼っていた」という共通点が見つかり、お互いに何となく気になる存在に。
    しかし長らく恋愛とごぶさただった小松さん、なかなか前に進めません。
    そもそも結婚しない理由が、なんとも胸に痛い。
    非常勤講師なので収入が低く、家族を持つ自信がない。自分に結婚できるだけの魅力があるとも思えない。などなど。
    私ですか!?と思うぐらい、共通点があってビックリ。
    「プレゼント送ったら?」という宇佐美のアドバイスにも、「ぶしつけだと思われる」「物を贈るなんて気味悪がられる」と最初はネガティブな反応を示していました。
    うんうん、わかるわかる。自分に自信がないから自分の行動にも自信が持てず、相手に嫌がられるのでは…と引いてしまうのですよね。
    この思考回路に思わずうなずいてしまう独身女子、意外と多いのではないでしょうか。
     
     
    ■恋は若者だけのものじゃない!?
     
    恋愛事情に疎く、気のきかない小松さんの尻をたたいた甲斐あって、52歳カップルのお付き合いは順調なようです。
    いい飲み友達をもったね、小松さん…。
    ストーリーの終盤では宇佐美とみどりさんの意外な接点が見つかるなど、最後まで目の離せない展開でした。
    同時に収録されている「ネクトンについて考えても意味がない」もおすすめです。
    こちらは海の中で出会った雄クラゲと女性が心を通わせるちょっと不思議なお話。
     
    この本を読んでから、40歳でも50歳でも出会いはあるし、恋もできるし、いま焦らなくてもいいかな?なんて勇気をもらいました。
    「ダメじゃん!ちょっとは焦りなよ!」と急かしてくるもう1人の自分もいますけれども…。