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《ヒモノ図書館員の恋愛強化書》愛で国境を超える『あなたという国』

  • 2016年04月15日  猫元 わかば  



    街を歩いていると外国の方とすれ違う機会が増えました。1度ぐらい国際結婚にあこがれた女子も少なくないのでは?今回は国籍の違う男女が外国の地で出会い、結ばれるお話。2人の間には文化などの違いが立ちはだかります。
     
     
    みなさんの周りには、外国の方とお付き合いをしている人はいるでしょうか。
    『ダーリンは外国人』をはじめ、国際結婚をしたカップルの日常生活をつづるコミックエッセイは大人気。読んだことある方もいらっしゃるのでは。
    女子なら1度は外国の男性とお付き合いしてみたいな〜なんて夢を見たこともあるはず!
    なかなか出会いのチャンスが訪れませんが…。
     
    今回ご紹介する小説『あなたという国 ニューヨーク・サン・ソウル』も、そんな生まれた国が違う男女の出会いや恋愛、友情などが描かれています。
    作者は映画化もされ、大人気となった作品『あん』の著者・ドリアン助川さんです。
    今年に入ってから発売されたばかりの新刊は、アメリカが舞台。
    実際に渡米し9.11も体験した作者が手がけた、悲しくも美しいラブストーリーです。
     
     
    ■『あなたという国 ニューヨーク・サン・ソウル』あらすじ
     
    母親の死をきっかけに1人ニューヨークへ渡った拓人。
    日本でバンドを組み、CDも出し、それなりに活躍をしていましたがバンドブームの衰退と共に人気も低迷。ついにはバンドも解散してしまいました。
    そして心機一転、一発逆転を夢見て、渡米を決意。
    語学学校に通いながらバンド活動に精を出す日々を送っています。
    ある日、メンバーが連れてきたサウンド・エンジニアの提案で単独ライブを開催することになりました。
    その話を聞きつけた同じ語学学校に通うコリアンの女性・ユナはチラシを作ったり、お客さんを集めたりと拓人をサポートしてくれます。
    拓人はそんなユナに次第に惹かれていきます。
     
     
    ■これぞ現代版ロミオ&ジュリエット!?
     
    作中では、語学学校や街中でさまざまな国籍の人と出会い、文化の違いに触れ、悩まされるシーンが何度も登場します。
    とくにコリアンの生徒とはぶつかることもしばしば。
     
    もちろん恋愛に関しても同じです。
    私がこの本に興味を引かれたきっかけは、説明文にあった<日韓のロミジュリ>という一言。
    読み進めてみると、なるほど、確かにロミジュリ的な要素がありました。
    『あなたという国』の場合は身分の違いではなく国や文化の違いが2人を引き裂くわけですが。
    拓人は歴史や領土問題に対してかなり楽観的な思想の持ち主なので、ユナがコリアンであることを良い意味でも悪い意味でも気にはしていません。
    (むしろ楽観的過ぎて、コリアンの人たちをイラつかせたり、他の国の人たちから呆れられたりすることがあるぐらい)
    ところが韓国で教育を受けていたユナは、どうしても日本人に対する抵抗感を捨てきれない。
    深い関係になりかけたとき、ユナはとっさに拓人の手を払ってしまいます。
    そしてユナ自身も拓人自身を嫌いなわけでもないのに「自分でもびっくりするぐらい、大きな壁がある」と胸を痛めるのです。
     
    自らを「コリアンの女だから」と言っていたユナが自分の中にある壁を壊すにはとても大きな勇気が必要だったはず。
    それでもあきらめない拓人に、ユナも勇気を出してその手を取ります。
    苦しくも愛を選んだ2人の姿が「THE・純愛」という感じでとても印象的でした。
     
     
    ■拓人はすでに1回フられていた!?
     
    拓人はユナと男女の関係になる前に、実は気になっていた女性がいました。
    それはウクライナの女性・ナディアです。彼女も同じ語学学校に通っていました。
    ナディアはクラス中から一目置かれる存在。
    その美貌もさることながら、言動も人を惹きつけてやまない魅力的な女性です。
    学校にいくとクラス中の男子が1、2を争って、手にキスをしにいくぐらい!
    想像するとすごい光景ですが…海外では割と普通なのかな…?ちょっと羨ましいぞ。
     
    特にナディアと親しかったわけではない拓人は、ある日「甥っ子の誕生日プレゼントを一緒に選んでほしい」と誘われます。
    クラス中の嫉妬を買い、自身もとまどいながらナディアと誕生日プレゼント選びに出かけた拓人は次第にナディアを女性として意識しはじめる。
    しかーし!小説とはいえ、そんな簡単に美女をゲットできるわけもなく…。ナディアは人には言いにくい大きなヒミツを抱えていたのでした。
     
    でもね、別次元の存在だと思っていた美女から「買い物に付き合って?」なんて言われたり、目が合うたびに微笑まれたり、指を握られたり…そんなアプローチされたら「もしかして…?」って期待したくもなりますよね。
    逆に言えば、意識してほしい相手にこういったアプローチをすれば、相手の男性に「おや?この子もしかして俺の事…」と思わせることができるかも!?
    ボディタッチはレベル高すぎるけれど、「目が合ったら微笑む」なら日本人でも実践できそうです。
     
     
    ■しがらみを断ち切って貫く純愛にきゅん!
     
    言葉や文化、歴史の隔たりを感じながら、人々と距離を縮めていく描写や、アメリカの街中の様子がとても生き生きと描かれてしました。
     
    コリアンの友人で画家・ジンとは言葉の使い方などで誤解させてしまうことも。
    ジンは「日本は嫌いでも日本人1人1人は嫌いではない」という考えの持ち主ですが、それでも拓人にヤキモキすることが何度かありました。
    韓国では「ありがとう、ありがとう」と何度も繰り返すのは相手を軽く見ていることになるのだそうです。
    日本では意味を強めたい時に言葉を重ねるので思わず使ってしまいがちですよね。
    本作では拓人とユナ、ジンが一緒にいるシーンが多いので韓国の文化など勉強になる部分がたくさんありました。
     
    読み終わる頃には、実際にアメリカで生活してきたような満足感を得られる本作。
    『あん』に続いて映画化の可能性もあるかも…!?
    ぜひ<日韓のロミジュリ>の切なさを味わってみてくださいね。