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《ヒモノ図書館員の恋愛強化書》男と女を科学する『愛が実を結ぶとき』

  • 2015年11月20日  猫元 わかば  



    恋愛にロマンスはつきもの。小説や音楽など芸術のテーマになるのと同時に生物学や心理学、動物行動学など学術的な分野でもひっぱりダコになる人気者です。今回は「男と女」の関係を自然科学で解き明かす1冊をご紹介します。
     
     
    今回は進化生物学の本をご紹介したいと思います。
    ロバート・マーティン著/森内薫訳『愛が実を結ぶとき 女と男と新たな命の進化生物学』。
    「進化生物学」なんて堅苦しい響きだし、難しそうなイメージを抱くかもしれませんがそんなことありません。
    意外と身近なところに活かせる学問だったりします。
    たとえば「一般的に男性は年下の女性が好き」とか「女性は背の高い男性が好きな傾向にある」…こういったものも進化生物学に含まれます。
    恋愛心理学にも生物学や進化論の考え方がずいぶんと取り入れられるようになりました。
    コラムなどで目にした機会もあるのではないでしょうか。
     
    進化論や生物学を学ぶ人たちにとって、オスメスの違い――「性差」はとても魅力的な話題です。
    「どうして男性の方が女性より背が高いのか」なんて、当たり前すぎて見逃してしまいそうな違いも、立派な研究対象。
    生物学や進化論の観点から説明できてしまいます。
     
    今回ご紹介する本では特にヒトのオスとメス…男性と女性の「性」や妊娠、出産などについて実験データなどを元にしながら科学的に解説しています。
     
     
    ●恋の季節といえば?
     
    「恋の季節」と聞いてどの季節を思い浮かべるでしょうか。
    恋は突然訪れるものに思えますが、ヒトについて研究する人たちは「恋をしやすい季節があるのでは?」と疑問を持ちました。
    ここでいう恋とは、すなわち繁殖行為。
    動物にとっては恋=パートナーを見つける=繁殖行動と直結します。
    「人間は繁殖のために恋するわけじゃない!」と反論したくなると思いますが、これは何というかこの業界での考え方なので、ぐっと堪えてください。
     
    ヒトの「恋しやすい季節」(という名の繁殖期)を探るべく研究者たちが注目したのは妊娠・出産の時期です。
    分かったことは
    ・かつて2〜4月、9〜11月に出産ピークの山があった
    ・北半球と南半球では妊娠・出産のピークがずれている
    ・その地域の気候や文化が関係している
    ・太陽や日長が関わっている
     
    ということ。
    北半球では春、南半球では半年おくれて秋に出産のピークがあるのだそうです。
    また太陽がギラギラと年中あたっている赤道に近い地域では、季節による妊娠・出産のピークといったものがなく、1年を通して平均的なのだとか。
    ほかにも緯度の高低によって出産の季節変動が大きいというデータも載っていました。
     
    1500〜1700年代の調査では2〜4月、9〜11月が妊娠・出産のピーク。
    現在では環境や文化などが変化し、その山はほとんどなくなってしまっているようですが…。
     
    それでも秋は何となく物悲しかったりセンチメンタルな気分になって、人恋しくなるもの。
    「クリスマスも近いし、恋人が欲しいなあ」と思いはじめる時期でもあったりしますよね。
    春は何だか心がうきうきして、「新しい出会いがあるかも!」なんて胸が躍ったりします。
    そう考えると、過去のデータとはいえ、あながち外れてはいないかも?
     
     
    ●ヒトにもある!?<発情期>
     
    ヒトには決まった繁殖期がなく、1年を通じて妊娠・出産ができる生き物です。
    そのため特に人間のメス(女性)には「発情期がない」と考えられていました。
    しかし同時に「いや、きっと何かしらの周期があるはずだ!」と調査を続けている研究者もいるのです。
     
    ホルモンの量が月経などによって左右されることに注目したり、アンケート調査をしてみたり、基礎体温を測ってもらったり、女性がつけた日記の内容から性的欲求が高まっているかどうかを読み取ったり…。
    さまざまな方法でヒトのメスの発情期を探ろうとしましたが、まだ「ヒトのメスの発情期はココだ!」とハッキリ断定できるデータは得られていないようです。
     
    ただ、基礎体温が低めになる卵胞期に性欲がピークになるのではないか?との報告が有力な模様。
    「妊活」している方ならご存知かと思われますが、この「卵胞期」はちょうど妊娠しやすいといわれる時期でもあります。
    これまたよくできたお話。
    筆者のロバート・マーティンも「これは偶然の一致なのだろうか? 私にはそう思えない」と何かしらの関係があるとニラんでいるようです。果たして真実やいかに。
     
     
    ●<恋>や<愛>を冷静に見つめて
     
    専門用語や見慣れない名前の動物なども登場しますが、一般向けに噛み砕いて説明してくれているので生物学や進化論にあまり関心がなかった人でも不安なく読める内容になっています。
     
    妊娠・出産以外にも育児や体外受精、ピルなどにも進化生物学のメスをいれている本著。
    気になる部分を読むだけでも新しい発見がたくさんある1冊です。
    <「男の乳首」の謎>から<育児がうまくいかない理由>まで様々な話題を網羅してくれています。
     
    文明が進み、医療が進み、野生動物とはちがって純粋な「ヒト」の生態を数値化するのは難しくなっています。
    ですがヒトの生活は変わっても、遺伝子は数百年単位で変化するものではありません。
    彼氏や旦那さんの困った言動も進化生物学から見れば「人間も動物だからね、しかたないね」と思えるものがあるかも知れません。
    「なんで男子って○○なの!?」という素朴な疑問を解決するカギが見つかるかもしれません。
     
    男女の営みはおおよそロマンチックに語られるものですが、たまには冷静な<科学の目>で見つめてみてはいかがでしょうか。