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《ヒモノ図書館員の恋愛強化書》運命の人はどこにいる?『おんなのこ』

  • 2016年01月15日  猫元 わかば  



    今回とりあげる本の主人公は、毎日毎日まだ見ぬ「あなた」をあいたいあいたいと探し続けている「おんなのこ」。ワクワクしたりさびしかったり不安になったりしながら今日も語り掛けます。「あなた」に届くことを願って。
     
     
    今回は小説ではなく、詩集をご紹介したいと思います。
    私の大好きな児童書『ともだちは海のにおい』などで知られる作家・くどうなおこさんによる詩と、エッセイや絵本を手掛ける佐野洋子さんのキュートなイラストがほっこりかわいい『おんなのこ』というタイトルの1冊です。
    あまり詩集を読むタイプの人間ではないのですが、大好きな「くどうなおこ」という作家さんと「おんなのこ」というタイトルの組み合わせに惹かれて手に取ってみました。
     
    あとがきによると、もともと「おんなのこ」は昭和50年に発行された詩集のようです。
    当時はあまり人に読まれる機会に恵まれなかったようですが、くどうなおこさんと佐野洋子さんにとってはお気に入りの1冊だったのだとか。
    佐野さんが亡くなり、あらためて本を読み返してみたくどうさんが、佐野さんのイラストを見て新しく詩を書きおろし、佐野さんの息子さんである広瀬弦さんが色をつけ――2015年に新しい姿でよみがえりました。
     
     
    ■『おんなのこ』あらすじ
     
    主人公はとある「おんなのこ」。
    「おんなのこ」は空のした、地球のうえ、その間にすんでいます。
    「おんなのこ」は好奇心いっぱいのお年頃。
    山や川や動物や花や虫や地球や…いろいろなものと語り合います。
    ときに退屈になったり不安になったり、悲しくなったり夢を見たりしながら、自分のこと・世界のこと、いろいろなことを考えます。
    世界のどこかにきっといる「あなた」に会いたい会いたいと願いながら、「おんなのこ」の朝がはじまり、夜がおとずれ、きょうも1日が終わります。
     
     
    ■「あなた」に恋する「おんなのこ」のお話
     
    上にも書きましたが、私は普段あまり詩を読まないタイプなのです。
    「くどうなおこ」「おんなのこ」2つのキーワードが私の胸キュンポイントをぐっさぐっさと刺激して来たので、完全に趣味として読み始めました。
    ですので、実をいいますと、最初この本を取り上げるつもりはありませんでした。
    ところがどっこい。読んでみると、かわいらしい女の子の恋物語のようではありませんか。
     
    ページをめくると、いちばん初めの詩は主人公の「おんなのこ」が「あなた」に会いたがるものから始まります。
    「あなたは どこにいますか あなたに あいたい」
    「あいたい あいたい あいたい と
     まいにち はなしかける あなたに」
    これは読み手に呼びかけているように見えるのですが、読んでいるうちに私の深読みといいますか、妄想癖が顔を出してしまいました。
    果たしてこれは、本当に読者に対して呼びかけているのかと。
    いや、おそらく読者に対して呼びかけているのだろうけれども、女の子にとっての「あなた」という存在はどんなものなのだろうかと気になり始めたのです。
    読めば読むほど、まだ見ぬ運命の相手を探して恋に恋している夢見る女の子のように思えてしかたがありません。
     
    ちょくちょく本文に登場する「あなた」という存在。
    「おんなのこ」が「あなた」をどういう人間(もしかすると人間ですらなかも)だと想像しているかは描かれていません。
    「おんなのこ」は朝起きてまず「あなた」のことを考えます。
    あいたい、あいたいとどんな姿形をしているか分からない(もっといえば本当に存在しているかも分からない)「あなた」に話しかける。
    さびしさを味わって見たくて、「あなた」を探すことをやめてみたりもします。
    「おんなのこ」にとって「あなた」と自分を切り離すことはさびしいことなわけです。
    さらに「あなたの夢に もぐりこめるとこまでいこう」と「あなた」の夢に入ってみたいと思ってみたり…。
    それって恋じゃない?恋でしょ?もうこれって恋でしょ??と読みながら猫元は大興奮でした。
     
    だって朝おきて「あなた」のことを考えて、何かするたびに「あなた」を思い出して、どこにいるのかな、あいたいなと思って、夜眠る前にも「あなた」のことを考えて、「あなた」の夢に入れたらなあ…と考える。
    もう完全に恋する乙女じゃないですか!
     
    もちろん作者のくどうさんから読者へ言葉を投げかけていると考えるのが一般的ではありますが。
    「おんなのこ」の視点から見てみると、そこにはとっても健気でかわいい恋する「おんなのこ」が見えてくるのでした。
     
     
    ■すべての「おんなのこ」に元気や勇気をくれる詩集
     
    詩はどれも「おんなのこ」の微妙な心理をしっかりとらえています。
    さびしさとか孤独とか、不安やモヤモヤした何とも言えない感じがファンタジーテイストの文章で表現されていて、さすがくどうなおこ!と思ってしまいました。
    ちいさな「おんなのこ」が主人公の詩集ではありますが、20代でも30代でも年齢問わず「おんなのこ」だった人たちの心にぐっとくるはず。
    きっと慰められたり元気がもらえたりする、お気に入りの1節が見つかります。
    私が特に気に入ったのは「したたかに生きろ! おんなのこ」というもの。
    力強くて、一筋縄ではいかない感じと「おんなのこ」という言葉のギャップに思わず笑ってしまいました。
    したたかに生きろ! いいじゃないですか。女はしたたかに。
    手ごわいな、と思わせるぐらいがちょうどいいのかもしれません。
     
     
    ■たまには自分の中の「おんなのこ」を思い出そう
     
    挿絵のカラーイラストがかわいらしく、まるで絵本のような1冊。
    小説のようにがっつり「読むぞ!」と構えるのではなく、コーヒーや紅茶を片手にゆったり眺めるように読んでほしい詩集です。
    絵本のようにさらっと読み流すもよし、言葉の意味を深く考えてみるもよし。
    動物や花や月たちと会話を楽しみながら、たまには童心に帰ってみてはいかがでしょうか。
    男性がいつまでも少年の心を忘れないのと同じく、女子だっていつまでも「おんなのこ」なのですから!