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《ヒモノ図書館員の恋愛強化書》遠泳で告白!?『いないも同然だった男』

  • 2016年02月26日  猫元 わかば  



    みなさんの周りに影が薄い人はいますか?その場に居ても気づかない。よくいえば溶け込むのがうまい人。今回の主人公は影が薄くて誰にも気づかれない透明人間。愛しの女性にインパクト大の告白をするため、ある挑戦をします。
     
     
    今回ご紹介するのはフランスの映画監督パトリス・ルコントが手がけた小説『いないも同然だった男』です。
    映画作品では『髪結いの亭主』『リディキュール』などがあります。
    フランスの映画や文学が好きなかたはご存知ではないでしょうか。
     
    『いないも同然だった男』は4作目となる小説です。
    日本語訳されるにあたり、作者自身がまえがきを寄せていますが、パトリスさんいわく「常識はずれで、突拍子もない恋愛物語」。
    まさにこの言葉通り、びっくりする展開がたくさんでてきます。
    普段メガホンを手に取っている人だからこそのユーモアがちりばめられたエンタテイメント小説で、ドラマか映画を見ているように話が進みます。
     
    主人公はとにかく存在感のない男性・ジェラルド。
    そんな影のうすーい彼が、恋した女性にインパクトのある愛の告白をするため「英仏海峡を泳いで渡って見せる!」と決意します。
     
     
    ■『いないも同然だった男』あらすじ
     
    これといった特徴もなく、目立つことのない30歳そこそこの銀行員・ジェラルド。
    学校でも、職場でも、カフェでもレストランでもスポーツ用品店でも彼の存在に気づく者はほとんどおらず、家族にでさえ存在を忘れられるほど影のうすい男性です。
    そんな彼はある日「英仏海峡を泳いで渡る」という大きな計画を立てます。
    同じ職場で出会い、すっかりその魅力にトリコになってしまった女性・ヴィクトワールに「ジェラルド」という存在を印象付け、彼女があっと驚く愛を告白するためです。
    スイミングスクールに通い、道具をそろえ、準備は万全。
    彼女のデスクに「海を見てぼくを待っていてください。行きますから」というメモを残し、いよいよ彼の一世一代をかけた計画がはじまります。
     
     
    ■<透明人間>が普通の人間になるために奮闘!
     
    とにかく存在感が希薄なジェラルド。
    物語の冒頭では、彼がいかに他人に気づかれない存在かという事が語られています。
     
    職場のパーティーに参加して、後片づけまで手伝ったのに、次の日に上司から「あなたも来ればよかったのに」と残念そうな顔をされる。
    レストランやカフェにいってもウェイターが来ない。呼んでも気づかれない。
    買い物をしようとレジにならんでも店員が気付いてくれない。(そのままお金を払わず店を出ることもしばしば!?)
    末っ子だったこともあり、家族もジェラルドには無関心だったようで…悲しいかな、他人に気づかれない人生に慣れきってしまいました。
     
    そんな彼は同じ職場で働く女性・ヴィクトワールに恋をしています。
    美人でスタイルがよくて…絵にかいたような彼女。
    告白しよう!と思ったきっかけは彼が探偵事務所で仕事をしていたときにおこります。
     
    探偵事務所?銀行員でしょ?と思われるかもしれませんが、存在感がなさすぎて職場の人間にも気づかれないジェラルドは「働きに行っても気づかれないなら、行かなくていいじゃん!」と本来の銀行窓口の仕事をさぼり、自分の透明人間っぷりを生かせる探偵事務所のドアを叩きました。
    そして尾行術と自分の存在感のなさを生かして、以前から気になっていたヴィクトワールの後をつけたのです。
    どうせ気づかれないだろうと思っていたのが、なんと、途中でヴィクトワールはジェラルドの存在に気が付きます。
     
    彼女にとって自分は透明人間ではない、ちゃんと存在感のある人間なんだ!と舞い上がったジェラルドは「だったら彼女のことを落とせるかも」と意気込み始めるのでした。
    そして英仏海峡を泳いで渡るという計画にいきつくのです。
     
     
    ■透明人間は恋する乙女(?)な妄想アラサー男子だった!
     
    存在感のなさゆえ女子との出会いも他に比べて圧倒的に少なく、一般な男性に比べるといろいろと遅れ気味だったジェラルド。
    そんな彼は主に文学から恋愛術を学んでいたようです。
    いっぱい本を読んだせいか、彼はちょっと夢見がちというか妄想に走る傾向にあるというか…そう、想像力が豊かなんです。想像力が!
     
    海を泳ぎながらつらくなったとき、すでに自分の事を好きになっているヴィクトワールのことを考えて乗り切ります。
    浜辺で目を凝らし、「恋する銀行員(ジェラルドのこと)」がやってくるのを待っているヴィクトワール。
    たくさんのカモメが頭上を飛んでいるときは「英仏海峡を泳いで渡るだけじゃなくて、鳥と話すこともできるんだわ…すてき!」とうっとりするヴィクトワール。
    泳ぎ終わったら「わたしのためにこんなことした男性はひとりもいなかったわ」と感動に打ち震えるヴィクトワール。
     
    ちょっとこじらせちゃってる感じはありますが、好きな人のことを考えて妄想するのは恋愛中ならではのだいご味でしょう。アラサー男子だって妄想したいお年頃なんです。
     
     
    ■一途な男性の恋路をコミカルに描いたエンタメ小説!
     
    愛する女性のために何かを頑張る男性の姿を面白おかしく、でも真剣に描いた小説です。
    私がヴィクトワールだったら、職場の同僚から「海で待ってて」なんてメモをもらっても困るし、自分のために「英仏海峡を泳いで」渡られてもそんな事してくれって頼んでもいないし、ありがた迷惑な気がしなくもないですが…。
    その場にいたら、ついついほだされたり、彼の真剣さに打たれて胸キュンしちゃうかもしれません。
     
    1つのことを真剣に頑張る男子の姿っていいものですよね。
    逆手にとって「他のコと違う印象を持ってほしい!」と思う男性のために、女子が何かインパクトのあることにチャレンジしても良いかもしれません。遠泳はイヤだけど。
     
    ちなみに影が薄い存在感がないと何度も何度もくり返し書かれているジェラルドですが、ちゃんと女の子との出会いはあったようです。
    何人かとお付き合いして、同棲までしています。むしろそっちの話が気になる…。