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《ヒモノ図書館員の恋愛強化書》10年も寝顔を盗撮!?『女が眠る時』

  • 2016年05月13日  猫元 わかば  



    街中でたまに見かける歳の離れた男女の2人組。親子?歳の離れた兄妹?もしかして…とついついヨコシマな妄想をしてしまいます。今回ご紹介する小説にも歳の差カップルが登場。美少女と初老の男の関係は意外なもので…?
     
     
    私の友人に「人間観察が好き!」という子がいます。
    電車やカフェなどで、ぼーっと待ちゆく人を見ているのが面白いらしいのです。
    猫元自身はそこまで人間観察に興味はないのですが、スタイルのいい人やおしゃれな人、歩き方がかっこいい人などを見かけると、思わず目で追ってしまう…なんてことはあります。
    ワケアリっぽいカップルもその対象の1つ。
    今回ご紹介する小説は、主人公がとあるカップルを見かけたことから物語が展開します。
     
    その小説は、ハビエル・マリアスさん原作の『女が眠る時』。
    2016年の2月から公開された映画のノベライズになります。
    メガホンを握ったのは世界的巨匠ウェイン・ワン監督。主演はビートたけしさん、西島秀俊さん、忽那汐里さん、小山田サユリさんと味のある俳優さんがずらり。
    1度読んだだけでは世界観を掴み切れない、ミステリー要素満載のお話です。
     
     
    ■『女が眠る時』あらすじ
     
    デビュー作以来、筆がふるわない小説家の健二は妻の綾と連れ添ってリゾートホテルを訪れていました。
    ホテルに着いたその日、プールサイドでバカンス気分にひたっていたところ2人は若い女性と年配の男性のカップルを見かけます。
    ハっとするほど完璧な美しさをもつ女性・美樹に健二は目を奪われてしまいました。
    「親子じゃないよね、どういう関係なんだろう?」という綾の言葉の通り、どうしたってそのカップルは親子には見えません。
    それ以来、美樹のことが頭から離れず、彼女や相手の男性を見かける度についつい目で追いかけてしまう健二。
    2人のデートにこっそり付いて行ったり部屋を覗き見たりと、次第にその行動はエスカレートしていきます。
     
     
    ■これぞ天然の<魔性の女>!?
     
    健二がプールサイドで出会い、その後の行動を狂わせる原因になったカップル。
    それは60代ぐらいの裕福そうな恰幅の良い男性・佐原と、白い小さなビキニを身にまとった男の娘ぐらいの――もしくはもっと若いかも?――年齢の女の子・美樹の2人組です。
    佐原に日焼け止めを塗ってもらったり、佐原が美樹の耳元で囁いていたり…あからさまに「親子じゃありません!」な雰囲気をまき散らしています。
    思わず目で追ってしまうのも仕方がない。
     
    美樹の美しさにすっかり釘付けになり、それ以来というもの美樹のことが気になって気になって仕方がない健二。
    ホテルで見かけると目で追いかけるし、2人が遊園地へ向かうと知ると同じバスに乗り込んでストーキングするし、2人が宿泊している部屋を外から覗き見するし、さらには部屋の中にまで侵入しちゃう…異常なまでの執着を見せるようになります。
     
    「うわあ、健二ヤバイ…」なんて思いながら読み進めていると、もう1人アブない男性がいました。そうです、佐原です。
    彼と美樹の出会いは10年以上前のことで、出会ってから美樹という存在に取りつかれています。
    美樹曰く「一心同体になろうとしている」らしく、美樹の好きな音楽を聴いたり映画を見たり美樹と同じような生活を送っている。
    お父さん代わりなのかな…?と思いきや、美樹の寝ている姿を動画に収めるという何ともいえない趣味の持ち主。
    佐原と美樹の関係はこれだけで、体の関係はまったく無し。
    健全なのだか不健全なのだかよくわからない奇妙な関係です。
     
    佐原しかり、健二しかり。健二なんて出会った初日から存在を忘れられなくなるぐらい、年上の男性を惑わせてしまう魅力を持っている美樹。
    彼女は天然ものの<魔性の女>なのかも? 
     
     
    ■やっぱり若いほうがイイ?愛が足りない健二にイライラ!
     
    健二が美樹にのめり込んでいく様子を印象づけたいためか、美樹と妻の綾さんを比較するするシーンが何度か登場します。
    健二の綾に対する態度もぞんざいで、それがまた佐原・美樹のカップルとの違いを引き立てています。
     
    佐原が美樹に日焼け止めを塗ってあげている出会いのシーンでも、佐原は大事な物に触れるような丁寧な手つきなのに対し、健二は美樹に気を取られているので手つきはなげやり。しかも頼まれたから仕方なくやってやる、といった態度。そして綾に「うらやましいんでしょ?」と言わせる始末。2回も。
    そこで冗談ぽく「そうなんだよ〜」とか言ってくれれば、軽いノリで返せるのに、黙っちゃうからね。一番ダメなパターンですよ。
     
    他にも、ひょんなことから一緒に食事をすることになったシーン。
    綾は朝食バイキングの料理をほとんど取らずに席に着きます。それが健二は気に入らない。
    美樹は和洋とわず山盛りトレイにのせて席に着き、もりもり食べる。そんな彼女を「綾さんの前でそんな機嫌がいい描写なかったよね!?」とツッコミを入れたくなるぐらいの笑みで見つめている。
    そして「私も昔はそれぐらい食べられたけれど」とさりげなく主張する綾さん。
     
    何でこんな男(健二)と結婚してしまったのか、と嘆きつつ読んでいると「つき合い始めるのに2年、結婚まで8年」それも「綾が決めてくれたおかげ」らしく…。
    何だか切なくなってしまいました。
     
     
    ■頭がこんがらがっちゃう!ミステリーな小説
     
    話の進み方が独特で、1度読んだだけでは混乱してしまうかもしれません。
    私は読み終わったあと「え…?つまりどういうこと…?」と頭を抱えてしまいました。
    1回読んでから自分なりの推理や解釈をもって、もう1度読み直す。
    そのたびに新しい発見ができる、噛めば噛むほどおいしいタイプの小説です。
     
    私が手にしたのは2月に出たばかりのPARCO出版のもので、ご紹介したのはあくまで「映画のノベライズ」になります。
    同書には映画の元となったハビエルさんの原作も収録。
    こちらも併せて読むと2度も3度も楽しめます。
    ミステリー好きなかた、ぜひこの独特な世界の謎解きにチャレンジしてみては。