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《ヒモノ図書館員の恋愛強化書》35年越しの恋!『ふたりの季節』

  • 2016年04月29日  猫元 わかば  



    子どもの頃の初恋相手や昔付き合っていたカレと偶然出会った!そんな時、気軽に声をかけられますか?今回の小説に登場する男女はかつての恋人同士。35年ぶりに再会し、楽しくも辛くもあった時間を思い出し語り合います。
     
     
    学生時代のクラスメイトや一緒の習い事をしていた人などなど、昔なじみの人とバッタリ出くわしたことはありませんか?
    私は小学生のころから住んでいる土地を大きく離れていないので、ちょっと足を伸ばすと「あの人、もしかして…?」と昔の面影を感じる人を見かけることもあります。
    でも私はそういうとき、どうしても上手に声を掛けらずに終わってしまう小心者です。
    みなさんはいかがでしょうか。
     
    例えば見かけた相手が初恋の相手や学生時代のあこがれの人、ましてやかつての恋人だったら?
    今回ご紹介する小説は、そんな偶然から昔の恋が再びはじまる物語です。
    小池真理子さんのできたて最新作。幻冬舎文庫から出版された『ふたりの季節』。
    主人公が高校生時代に付き合いはじめ、結婚まで考えていた交際相手と35年ぶりに再会し思い出話に花を咲かせます。
     
     
    ■『ふたりの季節』あらすじ
     
    夫と離婚し、1人息子を育てるため働きづめの毎日を送っていた由香。
    介護職ということもあり、なかなか休暇を取ろうとしない由香はついに休暇を言い渡され、ずっと気になっていたオープンテラスのカフェを訪れました。
    そこで偶然にも高校時代に付き合っていたかつての恋人・拓と出会います。
    気づいたものの声を掛けられずにいた由香の肩を叩いた拓。
    恋人だったときの思い出、仕事や結婚、子供の話、将来への不安などを語り合いながら、どうしてあの時自分たちは分かれてしまったのだろうと過去の自分たちへ思いを馳せます。
     
     
    ■スマホがない!1970年代の恋愛とは!?
     
    この小説は「あなたに1970年代初頭を舞台にした長編書き下ろし小説を書いてもらいたい」という幻冬舎の社長さん直々のお願いから生まれたものだそうです。
    (小池さんと社長さんは友人なのだとか)
    そのため作中には由香の回想という形で、70年代の風景がたくさん描かれています。
     
    現代との違いを感じるのは、やはり相手との連絡方法。
    まだ携帯電話やスマホがない時代ですから、当然、大好きなカレやカノジョと連絡を取りたい時は電話をかけるわけです。実家に。まだ当時2人は高校生なので実家ぐらしなのです。
     
    80年代生まれの私でも「懐かしい!」と感じたのはやはり公衆電話の存在でしょうか。
    高校を卒業し、1人暮らしをはじめた由香のアパートに拓からの手紙が届いていました。
    中身を読むと居てもたってもいられず、由香は十円玉の有無を確認してから(これも懐かしい行為)アパートを飛び出し公衆電話のボックスに駆け込んでいきます。
     
    電話を掛けたのはもちろん拓の家。
    電話口には母親が出て、苗字を聞き間違えたせいで自分の友人だと勘違いした姉と変わって、その次にようやく声を聴きたかった拓が電話に出ます。
    携帯電話が普及した今となっては珍しいやりとりですよね。
     
    これが今の時代だったら手紙→メール(すぐに届く)、公衆電話→スマホ(かけたい時にかけられる)になるわけです。
    電話をかけるにしても、今では高校生のスマホ持ちも珍しくありませんし、何より家でなく個人に直接かけられる。
    すっかり無駄がなくなり、便利な世の中になりました。
    でも同時に10円玉があるか確認したり、公衆電話のある場所まで走っていったりする間の<じれったさ>は味わえなくなったのかも知れませんね。
    電話やメールを好きな相手にするときのドキドキ感や「相手の声を聴きたい!」と募る思いは変わりませんけれども。
     
     
    ■「すれ違い」は最大の敵!
     
    35年の時を経て偶然に拓と出会い、思い出話に花を咲かせるうちに由香は「どうしてあの時、別れたのだろう」と考え始めます。
    「はっきりした理由なんか、ひとつもなかったみたいな気がするのに」と口にした由香に
    拓も「若気の至り、ってやつだろうな。理由なんか、なかったんだ」
    と同じく明確な理由を見つけることができずにいたようです。
     
    きっかけはおそらく大学受験。
    由香は第1志望ではないものの何とか大学に合格し、拓は失敗してしまいました。
    そのことで2人は不穏な空気になってしまいます。
    落ちたショックからか拓は「きみの合格を素直に喜べない」「きみの幸せを喜べないなんて愛される資格がない」と口にします。
    由香も「じゃあ大学に行かない。どうせ第1志望じゃないし」と売り言葉に買い言葉。
    拓が予備校に通い始めると頻繁に会う時間も取れなくなって、物理的な溝まで生まれてしまいます。
    ちょっとずつすれ違いが重なって、自然消滅のような形で別れてしまった2人。
    最後の方はお互いにもうお終いなんだなと感じていたようです。
     
     
    ■35年前の恋がリスタート!?
     
    拓の浪人時代「僕が来年、大学に受かったら結婚しよう」なんてプロポーズされたり、一緒に喫茶店で勉強したりと楽しそうだっただけに<理由は特にないけど別れることになった>という結末はやるせないなあと感じてしまいました。
    でも偶然の出会いをきっかけに、連絡先もしっかり交換して、また由香と拓の歩く道は重なりそうです。
     
    今度はきっとうまく行くはず!と由香自身も希望を持っているハッピーなエンディングでした。
    ちょっと残念だったのが、現在の由香と拓の描写がカフェで会話をするシーンのみで終わってしまったこと。
    せっかくなら、この先の2人の関係を後日談として、ちょこっとでもいいから読んでみたかったなあ。
     
    もともと映像化を念頭に執筆された小説のようなので、もしかすると映画化やドラマ化されるかもしれません。
    本屋さんで見かけた際には、ぜひチェックしてみてくださいね。